表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/15

第九話 老魔導士と顛末

 話もまとまり、体もいくぶん動くようになってきた。できるだけ早く移動を再開したいところだ。


テンダーとウェルスの様子も見に行きたいところだが、どうしたものか。


「まさか移動できるとか思ってねえだろうなジジイ」

「なに、もう頭もスッキリしておるぞ」

「吐血ジジイが来るまで寝てろ!」


 キュリシカの怒鳴り声と同時に扉が開く……と、すぐに閉まった。

なにをしておる。頼むテンダー、早く入って来い。


「時間を改めるとするか!」

「改めるな、話があるなら今済ませんか!」


 笑い声を上げながら病室に入るテンダーの後ろには、どこか不安げなウェルスの姿もある。

あまりいい方に話は進まなかったと言う事だろうか。


「無茶をさせたな、ジコン」

「謝るな、それで?商会とはどうなった」

「簡単に言えば私が当主代理を担う事にした」

「当主代理?」


 代理となれば、ウェルスが一時的に当主から降りるということになる。

完全にその席から外れる訳ではないのなら、ひとまずは安心だ。


 懸念をするならば、商人や街の者たちからのウェルスの評価か。


「そもそも倅を殺した商人が、あの傭兵たちに雇われていた。……というのには気付いているだろう?」

「うむ、しかしそれでは」

「代々私の家系は商会との関係性を大切にしてきた、商人の斡旋を任せる位にはな」


 なるほど、人を見抜く目が無ければ商会としての信頼は無いにも等しい。

考えられる事は一つ、商会にも傭兵の手先が紛れ込んでいた可能性がある。ということか。


「消えたのは傭兵だけではなかった、商会からも一人……」

「なんと」

「運がいい事に、関わっていたらしい商人の一人が生き残り、私に助けを求めてきた」


 あの夜の混乱に紛れて逃れたか、それとも仕組まれていたのか。

だが、その証言が決め手となったのは確かという事か。


 商会が強く出られぬと言うなら、テンダーの腕が鈍っていなければ再興も早いだろう。


「しかし領民や他の商人に被害が出たのも事実」

「着服されていた分と過税分は残った僕の私財と、商会から補填されます」


 黙っていたウェルスが口を開くが、声は震えておる。


 洗脳が解けた今、しでかしたことに気づいたのだろう。自分を責めるには十分すぎる現実だ。


「それでなジコン、この子をお前の旅に役立てて欲しい」

「ん?」

「社会勉強と言った所だな!ようやく医者にもかかれるのだから街の再生くらい私一人でも可能ということだ!」

「待て待て、ウェルスの意思は……」


 テンダーの口元がぐにゃりと歪む。老獪な企みを隠しきれぬ、意地の悪い笑みだ。

 こやつ、まさか教育と称して孫をワシに預ける訳ではあるまいな。


 ウェルスもお主を凝視しておるぞ。


「死と隣り合わせになるのだぞ!」

「お前が子供を守れないなんて事があるのか?ウェルスは優秀だぞ、金の勘定も儲けも叩き込んである!」

「あ、あの!ジコンさん!」


 ワシが言い返す言葉を探そうというところで、ウェルスの声が響く。

 何かを覚悟した瞳、テンダーに泣き落としを支持されたのか。


「僕がジコンさんと一緒に旅をしたいんです、スキルも魔法も使えます!」

「……ウェルス」

「だから僕を――」

「オレは嫌だぞジジイ!」


 今まで口を閉ざしていたキュリシカが突然叫ぶ。


 そういえば館ではあまり仲のいい様子が見えなかったが、そろそろワシ以外との人付き合いを覚えてもらわねば。


「貴女に許可は求めていませんよ盗賊」

「ブンなぐるぞ、嫉妬拗らせお坊ちゃん」

「はあ……テンダー、これでよいならば連れて行くが?」


 なぜ親指を立てるのだお主、まさか楽しんでおるなこの状況を。

 いがみ合うにしても、どうにかお互いに譲る部分を見つけて貰わねばなるまい。


「このまま喧嘩を続けると言うならば、今までの話は無しにする」

「仲良くしましょう、盗賊――キュリシカ」

「仲良くしようぜ、上から目線のお坊ちゃ――ウェルス」


 作られた笑顔は明らかだが、今はこれで良しとするか。


 そろそろ街を出る準備も進めたい。ベッドから立ちあがろうとした。

が、騒ぎを聞きつけた医師が扉を叩きつける様に開く。


 これは、相当怒っておるのう。


「病院ではお静かに願えますか?テンダー様もこれから診察ですよねえ?」

「はっはっは、いや私はこの辺で」

「逃しませんよ!はい!君たちも出て行きなさい!」


 笑ったとてどうにもならん事もあるぞ。

部屋から一気に追い出されたからか、随分と静かになってしまった。


 荷の整理でもするかともう一度ベッドから降りようとすると、再び恐ろしい、仮面のような張り付いた笑みを浮かべた医師がちらりと顔を覗かせる。


「ジコンさん、あなたも今日は絶対安静ですからね」

「わ、分かっておるよ」


 もう一度再会できた時、クロードに教える言葉が増えてしもうた。

医者には絶対に逆らうな――と。

というわけで第一章トラド編終了となります。

このあとすぐに幕間を上げさせていただきますので読んでいただけると嬉しいです!

それではまた第二章でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ