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転生皇女はフライパンで生き延びる  作者: 渡里あずま


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覚悟の決まった発言

 クララベル達の乗った馬車は、最低限の休息時以外は夜も昼も走り続けていた。

 元々、逃げる予定だったのでオルランド帝国を出る前の宿場で、替えの馬と食料を用意しておいた。おかげで、こうしてずっと走っていられる。


(ウィラードの言う通り、許すも何もないけど……多分、この後、帝国から独立を撤回する為の兵が来るわよね)


 オルランド帝国には、ウィラード以外の騎士もいるし軍もある。

 あるが、単に帝国にゴーダ族との戦以外の脅威がなく、訓練こそしていたが皇国の騎士達には戦経験がなく、訓練こそしていたが帝国の騎士達には戦経験などほとんどなかった。

 そう、皇帝・ルチアーノはずっと、ゴーダ族の戦いを辺境伯に『のみ』対応させ、それ以外の帝国の騎士達を一人たりとも、僅かな間だけでも派遣しなかった。

 だからこそ戦が終わった後、クララベルの父・ルチアーノはウィラードを恐れ、彼を服従させる為にあれこれと企ててきたのだが。


(放置していたくせに今更、手も口も出してきたから、こうなったのよね)


 馬車の中で、声に出さずにクララベルは呟いた。

 ……先程、昼を過ぎた頃にクララベル達は辺境伯領に入った。

 数日でいくつかの村を通過し、領主の城がある首都に到着するのだが──今、通り過ぎている村には誰もいない。


「帝国からの、独立を考えている」


 話は、少し前に遡る。

 そうすると決めた時、ウィラードはまだ雪深い季節に城下町の役職者達を城へと呼んだ。そして玉座の間の、クララベルの傍らで己の考えを告げた後、領民達に話の先を続けた。


「帝国の春の宴で宣言するが、それまでに帝国との境に壁を作る。その後はかつてのゴーダ族との戦場だった土地があるので新たに農業を行ったり店や宿を建てたりして、帝国ではなくゴーダ族や他国と交易する予定だが……帝国に残りたいのなら、勿論、止めはしな」

「すみません。村人達に聞いてはみますが、わし個人としては残りたいはないですな。そもそも、今までも帝都や領地以外の村や町との接点などなかったですし」


 ウィラードの話を遮り、手を挙げてそう言ってきたのは帝国にもっとも近い村の村長だった。言われて、クララベルは「そう言えば」と思う。


(村人達から納められた農作物は、首都で現金化されて……村人達にと、一部が税金として皇帝に納められるし。帝都から来る商人も、村は素通りして城下町に来ていたから……確かに、接点はないわよね)


 そんな風に、村を眼中に入れない商人と村人でやり取りなど発生しないだろう。だから村人達が何かを買うとしたら、帝都ではなく辺境伯領の城下町でだ。

 それは他の村長もそうだったようで、頷きながら別の村長も手を挙げる。


「わしもです。村人達に、聞いてはみますが……あの、わしらとしては領主様……今度からは、王様になるんですかね? あなたに守って貰えるんなら、村を明け渡してもいいんですよ」

「「えっ?」」

「冬だと、新しく家を建てるのは難しいでしょうが……祖父や父から土地を得る為にここに来て、村は最初は掘っ立て小屋から始まったと聞いてます。まあ、雪があるんで大変そうではありますが」


 そうしたら、国境の壁を城下町近くに出来て戦支度を整えやすいんじゃないですか?

 村長の、覚悟の決まった発言にクララベルは目を瞠った。

 だが、覚悟が決まっていたのは一人だけではなかったようで──最初に発言した村長や、他の村長達も手を挙げて口々に言った。


「幸いと言ったら何ですが、今は冬なんで畑仕事はないですし」

「そうそう。移動するにはもってこいなんですわ」

「他の村人達に、聞いてはみますが……帝国から騎士達が来たら畑が荒らされたり、食料などを奪われる可能性が高いので。それなら、手放した方がいいと思うんですよ」

「本当、問題は家なんですよね」

「将来はともかく、最初は掘っ立て小屋でもいいのか? それなら、我らゴーダ族が手を貸せるぞ?」

「「「本当ですか!?」」」


 それらの言葉を聞いて、口を挟んできたのはシグネだった。飛び付く村長達を見ながら、クララベルはゴーダ族が普段から移動などを想定して、簡易的な小屋で暮らしていることを思い出した。


(あれかな? 前世のアイヌ民族みたいな?)


 そして同様に、シグネ達のやり取りを見ていたウィラードが話を締め括った。


「他の村人達に聞いて、移動で話がまとまったら……その人数に合わせて、小屋を用意しよう。シグネ、我らもその小屋の作り方を覚えて建てたいから、我が領の大工達に教えてくれないか?」

「解ったぞ、主」

「小屋が建つまでは、城下町の宿や城を使えばいいのでは?」

「「「助かる!」」」

「あと、国の大きさ的に……王国と言うよりは、公国かな。だからラス公国で、俺はラス大公だな」


 こうして城下町の面々からの提案もあり、村長達が村に話を持ち帰ったところ、村人達も村の明け渡しに賛成して城下町へと移動してきた。

 そんな訳で、ウィラードは城下町の周りに壁を建てて、帝国から来るだろう襲撃に備えた。

 ……クララベルの知る物語とは、すっかり未来が変わっていた。

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