復活
「ユーリ、本当はジェームスとどういう関係なんだ?」
「本当は、と言われましてもトキ様もご存知の通り、友達ですよ。」
予想通りの答えだけど、ここでひるむわけにはいかない。
ユーリが何かを隠しているのは間違いないんだから。
「ただの心惹かれている友達にしては、ユーリの言動はおかしすぎる。ただの友達のジェームスに惹かれたから僕から離れたはずなのに、さっきはなぜ一時とはいえ僕を受け入れたんだ?」
「それは・・・」
「それに、ジェームスに知られたら困るってどういうこと?本当はなにか隠してるんじゃないの?!」
「・・・。」
答えに詰まるユーリの反応に、疑惑が確信へと変わる。
ユーリの一連の行動には裏がある。
心変わりしたなんて、単純な理由ではなくもっと複雑な事情がきっとある。
「ねぇ、ユーリ、本当のことを教えて?ユーリが僕に触れるなって言うなら今後一切君に触れたりしないよ。だけどその前に本当のことを教えて?そうじゃないと僕はまた、ジェームスたちの前でもユーリにベタベタしてしまうよ。ジェームスに知られたら困るんでしょう?」
半ば脅すように囁きかけるとユーリは観念したように、これまでの事情を説明し始めた。
まさかとは思っていたけれど、ユーリが脅されていただなんて。
しかもその理由が、僕の同性愛疑惑。
なんていうか、情けない。結局、僕が油断していたからこんな目にあうことになったんだ。
それに、ジェームスはジェームスで結婚したい相手が他にいるから、僕をなんとしてでもウェストファリア嬢と結婚させたいだなんて、そんな純粋というか可愛らしい理由で僕の恋路が邪魔されていただなんて、信じられない。
ところが、そんな一人自己嫌悪に陥る僕の耳に聞こえてきたのは、ユーリの謝罪の言葉だった。
「トキ様、今まで申し訳ありませんでした。」
「どうして、ユーリが謝るの?今回のことはすべて僕の油断が招いたことだし、僕の名誉を守るためにユーリは苦しんできたんでしょう?」
優しいユーリのことだから、きっと悩んで悩んでいかに僕の傷を最小限に抑えて別れるか考え苦しんでくれたに違いない。僕のそんな噂程度の名誉なんて無視してしまうこともできたのに。
「違うんです。本当はトキ様の心も名誉も傷つけることなく終われる方法があったのに、結局我が身可愛さにトキ様を傷つけてしまったんです。
だって、私が本当は女の子なのだと教えれば、それでトキ様の疑惑は完全に晴れたんですよ?
それなのに、ばれてこの環境を手放すのが嫌で、トキ様を傷つけることとなってしまったんです。
本当に申し訳ありませんでした。」
「そうだね。確かにそうすれば僕の疑惑は晴れたかもしれない。だけど、その場合ユーリは学園にもいられなくなって、夢を諦めなければならなくなるんだろう?そんなのと引換えて欲しいなんて全然思わないよ。それに、ユーリが学園から追い出されてしまえばもう僕とは一緒にいられないだろう?そうなるよりは、たとえ傷つけられたとしても、一緒にいてくれる方がずっといい。」
きっとユーリだってそこまで考えていたはず。ユーリの真実を告げても告げなくても結局別れることには変わらない。それなら、男装までして追い求めてきた夢を諦めることをユーリが選ぶはずがないし、選んで欲しくない。
「トキ様、ありがとうございます。本当にこのような素敵な主人にめぐり合えて私は本当に幸せです。これからも、このままよろしくお願いします。」
「うん、よろしく・・・ちょっと待って。もうジェームスは僕たちはただの友達に戻ったって思っているんだよね?」
「はい、あの日以後のトキ様と私の様子から本当に別れたのだと確信したようです。」
「それなら、もう無理してただの友達でいなくてもいいよね?」
そう、今まではユーリの心はもうジェームスのものだと思って諦めてきたけど、もうそんな必要はないはず。ジェームスは安心しきっているだろうし、僕らが隙さえ見せなければもう元に戻ったとしても何の問題はないだろう。
「ですが、先程も言ったように、ジェームスと約束してしまっています。
それに、私は自分の夢のためにトキ様を裏切ったんですよ?」
「ジェームスに関してはバレなければいい。ようするに、ユーリに対する態度をこれからも変えることなく、ウェストファリア嬢にもそれなりに優しくしておけばいいってことだろう?
それに、僕はユーリが裏切っただなんて思ってない。僕がそう言っても自分が許せないって言うなら、僕を癒して償ってよ、ユーリ。」
本当は、ユーリに償って欲しいだなんて思ってない。だけど、責任感の強いユーリを説得するのに、一番有効なのはそこに付込むことだっていうのは、今までの付き合いでもう分かっていた。
案の定、しばらく悩んでいたかに見えたユーリが出した答えは僕が求めていたものだった。
「分かりました。トキ様にもう一度与えていただいたチャンスを決して無駄にせず、御側で償わせていただきます。改めて、またよろしくお願いします、トキ様。」
「よろしくね、ユーリ。本当に戻ってきてくれてありがとう。」
ようやく、ようやく、ユーリの心が再び手に入った。
「それでは、トキ様今夜は失礼させていただきます」
「うん、おやすみ、ユーリ。」
そのまま、真っ直ぐに部屋を出て行きかけたユーリが、不意に、あの僕の大好きな笑顔で振り返った。
「トキ様、言い忘れていたのですが。」
「なに?」
「ずっと、大好きです。
では、おやすみなさい。」
その嬉しすぎる言葉に何も言えずにいるうちに、扉は締まり、ユーリは本当に出て行ってしまった。
父さんのことといい、ユーリのことといい、もう、今日は最高だ!




