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囮と疑念

 商館の3階は、

 ヤンのギャグが使者には通じず

 相変わらず重たい空気に包まれている。


 私は最近、ヤンがこだわっている。

 高級な紅茶に手を伸ばす。


 しかし、高貴で芳醇な香りは既に霧散し、

 指先に触れたカップは冷え、

 ただの赤い泥水になっていた。

 

 ヤンは頭をポリポリ掻きながら考え込んでいる。


切羽詰まって悩んでいるときの、いつもの癖を繰り返しながら語り始めた。

「う〜む……俺は戦闘があまり好きじゃないから逃げてたけど、

 いよいよヤキが回ったなぁ ww」


 そう苦笑いしながら呟くと、

 急に真顔になる。


 そして囮を使い、

 マラッカから南東のリンガ諸島まで誘導して、

 我々とアチェ、日本人コミュニティの連合艦隊でアンドレを叩く作戦を提案した。


 ちょっと無理を感じ異議を唱える。

「ヤン? マラッカからリンガまではちょっと航路が長くないか?」


 ヤンはうなずきながら答える。

「ふむ 、西のアチェ方面に誘導だと奴ら警戒してほぼ失敗すると思う。

 うちの高速運搬船なら満載で低速しか出せない演出しながら、

 リンガ諸島まで引き込めると思うぜ w」


 それでも人材不足で無謀に感じた。

「なあ? ヤン! それでも、うち(パタニ)の新米船長たちに囮は務まらないと思うぜ?」


 彼はまた頭をポリポリ掻き、

 ため息をつきながら言う。

「俺とコルネリスが囮船団を率いるよ。

奴もパタニに来る予定だしな!」


 忘れていた......。

 彼がいた!

「コル兄か! そうだった。アユタヤ商館設立のために合流して、

 そのまま次は日本商館設立だったよな……」


 決行は3か月後。


 私はリアウ・リンガ諸島で水道の出口を塞ぐ役のアチェの巨艦と合流し、

 シモンとナガマサたちと訓練を重ねた。


 日本人部隊とはバッチリ息が合う。


 なのにバンテン組だけが、どうにも連携が取れない。


 アチェでさえ上手く連携しているというのに……。


 私は時間も迫り、焦っている......。


 そしてコル兄の後釜のバンテン総督、

 ハンスに会ったとき——


 その理由がわかった。


 私は農奴だった頃から抑圧的な環境で育ったせいか、

 人一倍感受性が高い。


 いや w こんな前置きなんて最早関係ないか……


 ぎこちない丁寧すぎる言葉。


 目が笑っていない笑顔。


 いちいち否定文を入れてくる返事。


 こちらの質問に頻繁に組み替える足。


 真っ直ぐに目を合わせず、視線を逸らす仕草。


 噂では、元ゴート艦隊の生き残りは企業内で最も幅を利かせていて、

 組織が大きくなるにつれ内部抗争の的になっていると聞いたことがある。


 これは……嫌な予感がした。


 農奴時代のあの嫌な予感だ。


 陰鬱(いんうつ)な空気がいつも漂い、

 いつ敵に攻め込まれてもおかしくない状況と同じ匂い......。


 作戦は中止するべきか?

 ......

 いや、しかし......

 もう既に作戦は動き始めている。


 友好関係を保ちながらも、

 注意は怠らない方向で対処する事にした。


 私はシモンとナガマサにだけ極秘で相談し、

 私の艦隊を水路から出てくる敵を迎え撃つ奇襲部隊の位置から、

 遊撃部隊に変更する。


 しかもハンスには極秘で直前に発動。


 できる限りのことはする。


 そして本番を迎えた。


 前方から、ヤン達の高速運搬船が逃げてくるのを捉える。


 そして——

 番犬アンドレのガレオン船団が次々と現れるのだった。


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