29 追跡者たち(豪羅視点)
「お前たちがこの世界に来て、数か月――そろそろ呪法も効果を発揮することだろう」
「呪法……!?」
嫌な予感が背筋を走る。
まさか、自分たちの体は……。
豪羅は顔をこわばらせて後ずさった。
「くくく……今、発動させてやろう」
王が悪意に満ちた笑みを浮かべた。
ヴ……ンッ!
「――っ!?」
黒い紋様が豪羅の全身に浮かび上がり、急速に広がっていく。
まるで、体の中から黒い何かが這い出してくるようだ。
「な、なんだよ、こりゃあっ!?」
絶叫する豪羅。
同時に、激痛が全身を貫いた。
「があああああ……っ……!」
体を内側から刃で貫かれるような鋭い痛みと、焼けるような痛み。
二種類の痛みは、どちらも耐え難いほど強烈だった。
「ぐああああ……あが……ち、ちくしょ……おおおおお……」
豪羅は床に倒れ、身をよじりながらうめいた。
「この呪法は我が意志に応じて、お前たちに無限の苦痛を与える。やがては死に至るほどの、な」
王が冷酷に言った。
苦痛にのたうち回る豪羅を、まるで虫けらでも見るかのように見下ろしている。
「そら、解除してやろう」
その言葉とともに、痛みが嘘のように消え去った。
「はあ、はあ、はあ……」
豪羅は汗びっしょりで、床に這いつくばったまま荒い息を繰り返す。
「今の痛みはすぐに消したが……40日後には実際に死に至る。ゆえに豪羅よ。お前に命じる――」
王が厳かに命じた。
「時雨の首を取ってまいれ。40日を過ぎ、お前の命が尽きる前に――」
「っ……!」
豪羅は呆然とした表情で、冷酷な王を見上げていた。
40日以内に、時雨を殺せ……?
殺さなければ、俺が死ぬ……?
なんだよ、それ……。
謁見を終えてしばらくして――、
「あなたも追跡者に命じられたのね、豪羅くん」
話しかけてきたのはクラスメイトの月白葉月だった。
長い黒髪に白い肌、学内トップクラスの清楚系美少女だ。
「あなたも、ってまさかお前も……」
「……やられたわ」
葉月の表情は暗い。
「時雨くんを40日以内に殺さなければ、私は死ぬ。君もでしょ、豪羅くん」
「ちっ、胸糞わりぃ」
豪羅は吐き捨てた。
勇者としてさんざん自分たちを崇めておいて、裏ではこんな仕掛けをしていたとは――。
「たぶん、時雨君にはその呪いは十分じゃないか、あるいは闇の勇者とやらには呪いが効かないのか……そんなところよね」
葉月が言った。
「あ?」
「だって、呪法で相手を殺せるなら、時雨くんもそれで殺せばいいわけだし。彼だって呪法の石を混ぜた食事をとっているはずよ」
「あいつは魔界に行っていたから、俺たちほどその食事をとってないってことじゃないか?」
「かもしれない。あるいは違うかもしれない」
葉月がうつむいた。
「もしかしたら――彼は呪法を解くカギを持っているかもしれない」
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