23 周囲の反応が、少し違う
「すごいわね、時雨くん。たった一人で魔界から生還するなんて」
肩を抱くようにしてしがみついてきたのは葉月だった。
至近距離から話しかけられ、吐息で耳をくすぐられてドキッとする。
「苦労したけどな……はは」
俺は苦笑しながら答えた。
ただ、手放しで喜べる状況じゃないのも確かだ。
最終決戦が魔界で行われる場合、俺は戦力になれない可能性があるのだから――。
俺が本当に魔界に行けなくなったのか、早急に確かめる必要があるな。
もし行けないとしたら、その制限を解くための方法を探さなきゃいけないし。
あるいは、制限が解けないとしたら、その状態で魔王軍に勝利するための戦術を考えなきゃいけない。
対魔王軍の戦力の要は、俺なんだから――。
「なあ、お前……本当に時雨なんだよな?」
そう言ったのは、豪羅だった。
鋭い目で、まるで俺を疑うような視線を向けている。
いや、『まるで』じゃないな。
あからさまに疑っている。
「例えば、魔族がお前に化けてる……なんてことも考えられるぜ?」
「そ、そんな!」
那由香が叫んだ。
「だってよ、こいつは魔界から来たんだ。人間がたった一人で魔族の世界に行って、また戻って来られるのか? いくらこいつが強くても、生き延びるのは無理だろ」
豪羅が顔をしかめる。
「もし偽物が時雨のふりをして来たんなら、城に留まらせるのは危険だ。俺たち全員、寝首をかかれるかもしれない」
「――それは問題なんじゃないかな。確か魔族を見つけるための魔法、っていうのがこの世界にあるはずよ。王国の高位神官ならその魔法を使えるって聞いたわ」
と、葉月。
「じゃあ、そいつを受けろよ。身の潔白を証明しろよ、時雨」
「ああ、望むところだ」
挑発的な豪羅に、俺は平然とうなずいた。
こんな奴とケンカしても仕方がない。
それに豪羅の言うことにも一理はあるからな。
俺としても自分が魔族じゃないことを明かし、みんなの心配を取り除いておきたいところだ――。
その日の夜。
城の自室で休んでいると、数名の騎士が俺の元を音売れた。
「お休みのところを申し訳ありません、時雨様」
「なんでしょう?」
「国王陛下からの命により、あなたを拘束します」
……は?
「夜天宮時雨は魔族と通じている疑いがある――と。これは王命です」
言うなり、騎士たちがいっせいに剣を抜いた。
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