スローライフにあるハードライフ
数日後、中央から数名の兵士が来て、捕らえていた盗賊団の副団長の身柄を引き取ることになった。
「ひとまず大丈夫そうか?」カズトはアヤカに聞いてみる。
「副団長らを尋問したところ、いろいろ情報は知っているみたいだから、まぁ問題ないでしょう。」アヤカもあっけらかんと答える。
団長はやむを得ない事情で始末したが、副団長らは捕虜にしていた。副団長も有益な情報を知っているみたいであったので当初の目標は果たしたといってよい。
「いやぁ助かったよ。団長は思いのほか強かったからね。あのままだったら私がやられていたかもしれない。」
「お役に立てて何より。」
団長らを倒した後、盗賊団は混乱状態となりアヤカやカズトたちは浮足立っている彼らを順次手にかけていった。結果として村側は犠牲者を出すことがなかったのに対して盗賊団は壊滅的な被害を与えることができた。
「そういえば結構な野盗を始末したけど、あとで墓でも建ててやるのか?」
「村に無縁墓があるからそこに“首”を埋めて供養するよ。まぁ体のほうは有効活用するけどね。」
「何をする気だ?」
「実は火薬を開発していてね。彼らにはその材料になってもらう。」
「火薬・・・以前言っていた黒色火薬か?」
「そう。木炭と硫黄はあるけど、硝石だけがなくてね。でも今回の盗賊団の体を使えば硝石が取れるかも。」
アヤカの言っているのは硝石丘法を指す。この世界にはまだ銃火器や大砲はないため、火薬が量産できれば軍事的にも優位に立つ。
「まさに異世界転生物の冥利だな。」
「その通り、この村から世界を牛耳ってやるのだー!なんてね。」
「おーお、ガンバレヨー。」
「その時は君を戦力としてスカウトに行くから安心したまえ。というかうちに移住しない?腕いいし歓迎するよ。」
「まだいいわ。あっちの生活も悪くないからな。でも仕事無くなって追い出されたらその時は頼む」
「了解。」
改めてカズトは周囲を見る。数日前にあれだけ大きな戦闘があったにも関わらず、村人たちはいつものように農作業や牧畜業にいそしんでいる。その様子は普通の村人のようであり、あの日見たような冷徹な暗殺者のようには見えない。
「・・・場所が場所だから、厄介事が来るのは仕方ないのか?」
「そうだね。でも自然の中でのんびり農作業をするスローライフも、闇夜に紛れて敵を始末するハードライフも、村を作っていく醍醐味だよ。」
カズトらがいる異世界は大砲や銃器は存在せず、火薬もまだありません。




