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落ち着く飲み物

信長様は変わらず静かに待っていた。


「お待たせしました。外寒かったでしょうからこちらのお飲み物をどうぞ。」


「ん?温めた牛の乳か…。」


「はい、信長様から頂いた牛の乳です。その牛の乳にー」


私がホットミルクの説明をしようとした時、信長様が先に飲んでしまった。


「牛の乳に何か混ぜたか?この味は…生姜か?」


「はい、生姜が入っています。」


信長様は不味いとまで言わないが少し眉をひそめた。

あ~あ、そりゃそうだよ。


そのままだと生姜風味のホットミルクだ。

私もその状態で飲んだことはあるがあまり好きではなかった。

そして不味くもない、微妙なのだ。


「これは?」


信長様は小さな器に入った蜂蜜に気が付いた。

正確には気が付いてはいたけど牛乳に入れるものだと思わなかったのだろう。


「蜂蜜です。好きな量を牛の乳の中に入れてよくかき混ぜてお飲みください。」


私がそう言うと匙で蜂蜜をすくい何度も牛乳に入れる。

それじゃあ流石に甘すぎるのでは…。

信長様が一口味見をする。


「もう二、三杯か…?」


ボソリとそうつぶやいたのが聞こえた。

えっ、今何て?

信長様は先程つぶやいた量よりも多めに入れる。

まさかの五杯。

小さな器の中は何も残っていない。


「ふう。これは旨いが気が抜ける飲み物だな。戦にはあまり向かん。」


「そうなんですか?でも口に合ったみたいで良かったです。」


戦に向くかどうかはわからないけど確かに気は抜けるかもしれない。

私はよく眠れない時や仕事で疲れた日などに飲んでいた。

ホットミルクはとても心が落ち着くのだ。


信長様は何口か飲んで私を見る。

何故そんなに私を見ているのだろうと不思議に思っていると、信長様が急に私の手に触れた。


「えっと…何でしょうか?」


振り払うわけにもいかず体が固まる。

行動ではなくて出来れば言葉で言って欲しいんだけど。


「今夜は冷えるな…。」


「そうですね?」


信長様が親指で私の指先をひとなでする。

うっ、何かわからなけど異様に恥ずかしくなった。

私の顔が赤くなる前に手を離す。


「お前もここで飲め。料理をする前に体を温めろ。」


「あ…りがとうございます。」


料理しながら飲む予定だったんだけどな。

本当はこの人とあんまり関わりたくない。

でも座って飲めるのは今の私にはとてもありがたい話である。


料理場に行くと大分落ち着いた二人がホットミルクを飲んでいた。

二人にも飲んで貰って正解だったかな。


「私お客さんと一緒に飲んできますね。ついでにどんなもの食べたいかも聞いて来ます。」


「大丈夫かい?」


「はい、大丈夫だと思います。」


言い方とか立ち居振る舞いは偉そうだけど中身はとても優しいのかもと思い始めた。

そして店の中に戻って気付く。

ここで飲めとは言われたけど店の何処に座れば?


信長様の隣だと馴れ馴れしすぎるような気もするし、遠すぎても失礼のような。

ええいっ、ここは思い切って!!


「お隣失礼しても宜しいでしょうか」


意を決して私は隣に座った。

信長様はこっちに興味を示さず、前をただ見ている。


「あの良かったら蜂蜜どうぞ。」


料理場に行って思い出したのだが教科書に信長が金平糖が好きだったと書いてあるのを思い出した。

もしかして足りなかったのではと思い、私の分も含め多めに蜂蜜を器に入れ持って来た。

信長様は無言で蜂蜜を飲みかけのホットミルクに加えた。

この人相当な甘党だ。


そしてまた一口飲んでつぶやく。


「やはり戦には向かんなぁ。」


私も一口飲んで納得する。


「そうですねぇ。」


ミルクのまろやかさと蜂蜜の優しい甘さが胸の中に染みわたる。

鼻から生姜の風味を感じながらほう~っと息をするのが心地いい。

確かにこれは戦に向かないかもっと思ってしまった。

ホットミルク美味しいですよね~。

私もよく飲みますよ!!

次回もお楽しみに!

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