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【WEB版】異世界カード無双 魔神殺しのFランク冒険者  作者: 桑野和明(久乃川あずき)


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森の中の戦い

 ナグチ将軍はすぐに動いた。

 第七師団を中心に部隊を編成し、迫ってくる銀狼騎士団に奇襲を掛ける。

 カルミーラ師団長が召喚した氷塊のドラゴンが銀狼騎士団の列を崩す。

 混乱した銀狼騎士団にザンゲル千人長の部隊が突っ込んだ。


 銀狼騎士団は下がりながら森の中で陣形を整え、攻撃に転じた。

 ウル団長の直属部隊が南から回り込み、ナグチ将軍のいる本陣を狙う。

 ナグチ将軍は盾兵の部隊で防御しながら、百人単位の部隊を次々と投入する。


「ウル団長だけを狙えっ!」


 カルミーラ師団長が叫ぶと、サダル国の兵士たちがウル団長に殺到する。


「舐めるなっ!」


 ウル団長は近づいてくる兵士たちを大剣で薙ぎ払う。

 それでもサダル国の兵士たちは臆することなく、攻撃を続ける。


 獣人ハーフの女騎士――クリル千人長がウル団長に駆け寄る。


「ウル団長っ! 一度引いてください!」

「ああっ!? 冗談言うなっ!」


 ウル団長はギリギリと歯を鳴らす。


「この包囲を抜ければ、ナグチ将軍を倒せる。この好機を逃せるものか!」

「敵の部隊が後方を遮断しつつあります。ナグチ将軍の狙いはあなたです!」


 クリル千人長は迫ってきたサダル国の兵士を斬り倒し、言葉を続ける。


「あなたを倒して、銀狼騎士団の動きを止め、ゴルバ千人長の部隊との連携を防ぐ狙いがあるのでしょう」

「遮断を狙ってる部隊の数は?」

「約千二百です」

「ちっ! 最初から近くに潜伏させてたか」


 ウル団長は声を荒げて、周囲を見回す。


 ――この位置に俺を誘い込むのが目的だったか。さすが、万の策を考える男だな。


「…………わかった。周囲の兵をまとめろ! 不本意だが撤退するぞ」


 ウル団長はクリル千人長の猫のような耳に触れ、東に向かって走り出した。


 ◇


 ナグチ将軍は、伝令兵からウル団長が包囲を突破して逃げたことを伝えられた。


「ならば、第二の策に変更します。待機させている魔道師部隊に連絡を」


 すぐに次の指示を出し、控えていた別の兵士を手招きで呼ぶ。


「カルミーラ師団長に作戦変更を伝えてください。ここからは時間の勝負ですから」 


 そう言って、ナグチ将軍はメガネの奥の目を細めた。

 

 ◇


 ナグチ将軍の指示を受けた魔道師部隊は呪文で火を放った。南北に線を引いたかのような炎が壁の役割を果たし、銀狼騎士団はさらに後退することになった。


 その時間を利用して、ナグチ将軍は全軍を前線から撤退させた。

 工兵部隊に作らせた五つの階段を使って、マインの作った壁を越える。


 その動きに銀狼騎士団は対応することができなかった。


「急げ! 急げ!」


 カルミーラ師団長が西に移動する兵士たちに向かって叫んだ。


「休むのは補給部隊と合流してからだ。その後は腹一杯、飯も食わせてやる! だから、今は足を動かせ!」


 兵士たちは巨大な月が照らす低地を歩き続ける。


「どうやら、逃げ切れそうですね」


 カルミーラ師団長が隣にいるナグチ将軍に声をかける。


「ええ。食糧さえなんとかできれば、じっくりと戦うことができます。状況によっては、リシウス城まで戻ってもいいですし」


 ナグチ将軍は東に視線を向ける。


 ――ウル団長を殺せなかったことは残念だが、補給部隊と合流できるのなら問題はない。


 ――気になるのは白龍騎士団のゴルバ千人長の動きか。数的には八千とこちらの三分の一以下だが、すぐに連戦となれば兵士を休ませることができない。それに。


「氷室彼方…………」


 側にいるカルミーラ師団長にも聞こえないような声がナグチ将軍の口から漏れる。


 ――次に奴が狙ってるのは補給部隊だろう。だが、部隊は三つに分け、万全の状態で移動している。護衛の兵士たちも弱くはないからな。


「ナグチ将軍っ!」


 少年の伝令兵がナグチ将軍に駆け寄った。


「ほっ、報告です! 峡谷にかけた橋が落とされました!」


 その報告にナグチ将軍の顔から表情が消えた。


「…………橋が落とされた?」

「はい。斥候が四枚の翼を持つ白いドラゴンを確認しており、それが橋を落としたのではないかと」

「キルハ城で氷室彼方が召喚したドラゴンかっ!」


 ナグチ将軍の声が荒くなる。


「食糧は問題ないんだな?」

「はっ、はい。現在、新たな橋をかける作業をしております。簡易なものであれば二日でなんとかなるかと」

「無理です。完成直前に氷室彼方が、また橋を落とすでしょう」


 ナグチ将軍が首を左右に動かす。


「それよりも転移の魔法陣の準備を。こちらも峡谷の手前で魔法陣を描きます。距離が近いから、秘薬はなんとかなるでしょう。それとワイバーンを召喚できる者に食糧の輸送をさせてください。少量の食糧でも今は金貨より貴重ですから」

「わかりました!」


 少年の伝令兵は慌てて走り去っていく。


 カルミーラ師団長が口を開く。


「また、氷室彼方か…………」

「徹底的に食糧を狙ってきますね。なかなか、いい性格をしてます」


 ナグチ将軍はメガネのつるに触れる。


「ですが、食糧断ちの策は失敗すれば、何の意味もありません。こちらの戦力を減らしたわけではありませんから。それに氷室彼方も能力の制限に苦しんでいるようです」

「そうなのですか?」

「ええ。食糧断ちを狙い、直接的な戦闘を避けようとしているようです。強力な呪文を使う秘薬が少なくなってるんでしょう」


 ナグチ将軍の口角が吊り上がる。


「やっと、氷室彼方を殺すチャンスが生まれたようです」

「見つける方法があるのですか?」

「いいえ。隠れてる場所はわかりませんが、氷室彼方が来る場所はわかります」

「…………峡谷ですね?」

「その通りです。氷室彼方は食糧断ちの策を続けようとするでしょう。峡谷の近くに潜伏して、私たちのところに食糧が届かないようにするつもりです」

「ならば、パルビス百人長の部隊を先行させましょう!」


 カルミーラ師団長が、ぐっとこぶしを握る。


「位置さえわかれば、パルビス百人長が氷室彼方を殺してくれるはずです」

「絶対に油断しないようにと、パルビス百人長に伝えてください。それと…………」


 ナグチ将軍はカルミーラ師団長の耳元で、これからの作戦を話した。

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― 新着の感想 ―
4時間で橋や台座を組み壁を乗り越える ← わかる そのまま撤退する ← ??? 壁の上から降りるためには、資材を上に運ぶ・降りる側の足場が無い状態で20m以上下の地面まで届く梯子をかけるとか登る数倍の…
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