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【WEB版】異世界カード無双 魔神殺しのFランク冒険者  作者: 桑野和明(久乃川あずき)


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彼方と仲間たち

 その日の夜、彼方たちは飛行船の側で夕食を取っていた。


 枯れ木を燃やした焚き火を囲み、狩ったチャモ鳥の肉を頬張る。


「この島のチャモ鳥は、なかなか美味しいにゃ」


 ミケが満足げにうなずく。


「いい香草と木の実を食べてるせいだにゃ。これならお肉屋さんに銀貨二枚以上で売れるはずにゃ」

「当分は王都に戻れないけどね」


 彼方は笑いながら答える。


「まあ、食べ物はこの島の中でなんとかなりそうだね」

「うむにゃ。ポク芋の畑も作るから、安心するといいにゃ」

「うん。食べ物大臣の仕事、よろしく頼むよ」


「そんなことよりさぁー」


 ミュリックが口を挟んだ。


「これからどうするの? キルハ城も奪われちゃったしさ」

「それは気にしなくていいよ。領民がいるわけでもないし」


 彼方は木のコップに入った紅茶を手に取る。


「ある意味、奪われたほうがいいかもしれないし」

「んっ? 何それ?」


 ミュリックは首をかしげる。


「意味がわかんない。どうして領地を奪われることがいいことなの?」

「今は気にしなくていいよ。大事なのは領地より、君たちの命だから」

「そっ、それは…………嬉しいけど」


 微かにミュリックの頬が赤くなる。


「…………やっぱり、あなた変わってるわ」

「で、君に渡したウルツ魔石の短剣の使い勝手はどう?」

「名品ね。軽いし、石だって斬れたわ。これなら、鎧をつけた相手でも簡単に殺せそう」


「ニーアの腕輪もすごいの」


 ニーアが立ち上がって、闇月の腕輪に触れる。


 ふっと、ニーアの姿が消えた。


「いいね。これなら、見つかりにくいはずだよ。ニーアは空も飛べるし」


「うんっ! ニーア…………いっぱい偵察する」


 ニーアの声だけが聞こえてきた。


「エルメアの魔風の弓はどう?」


「使える武器だ」


 エルメアは淡々とした口調で彼方の質問に答えた。


「連射もできるし、集中すれば、二百メートル先の敵も殺せるだろう」

「遠距離攻撃ができる仲間がいるのは助かるよ」

「ああ。お前程ではないが、私も戦いで役に立ってみせる。期待しててくれ」


「期待ねぇ…………」


 ミュリックが紫色の瞳で彼方を見つめる。


「あなたが本気出せば、ひとりで何でもできるんじゃないの? あのヴァルネーデって邪神を召喚しちゃえばいいんだし」

「使わない理由があるんだよ」


 彼方は湯気の立つ紅茶に口をつける。


「僕の手に入れた力は強力だ。でも、それだけで生き抜くのは難しいよ。信頼できる仲間がいないとね」


「その通りにゃ」


 ミケが胸元で腕を組み、大きくうなずく。


「生きるためには、戦うだけじゃなくてご飯も必要なのにゃ。彼方だって、ご飯を食べないと死んじゃうのにゃ」

「うん。そうだね」


 ミケらしい言葉に、彼方の顔がほころぶ。


「食料の調達も大事だし、情報収集も大事だよ。見張りも回復役もね」


「その言い方だと、また、私に情報収集やらせるつもり?」


 ミュリックが彼方に質問した。


「君なら飛行船を使わなくても、地上に行けるからね。近くにサダル国の兵士たちがいるかどうかを確認して欲しいんだ」

「それが生き残るために大事なことなのよね?」

「うん。正しい情報を知ってれば、有利に戦えるからね」

「わかった、わかった。でも、明日でいいでしょ。さすがに疲れちゃったし、湯浴みもしたいしさ」

「湯浴みって?」

「あの異界人が住んでた木の近くに、湯浴み用の泉があったの。紅熱石を使って温度を調整しててさ。温泉みたいにしてあるの」

「あぁ。竜太郎さんは日本人だからね。きっと、温泉好きなんだよ」


 彼方は穿いている灰色のズボンに視線を落とす。


 ――そういや、キルハ城に来てから、水浴びか体をタオルで拭くだけで、お風呂に入ってなかったな。


「それなら、みんなもお風呂に行ってくるといいよ。僕は後で入るから」

「んっ? いっしょに入ればいいじゃない? 広いから十人以上は余裕よ」

「いやいや、何言ってるの? 僕は男で君たちは女だろ?」

「私は構わないわよ。むしろ、私の全てを見てもらいたいし」

「君は、そうなのかもしれないけど、他は違うんだよ」


「ミケも平気にゃ」


 ミケが元気よく右手をあげた。


「彼方にはしっぽも触られてるのにゃ。だから、いっしょにお風呂も大丈夫にゃ」


「私も問題ないぞ」


 エルメアが真剣な表情でうなずく。


「彼方には身も心も捧げるつもりだからな」


「ニーアも彼方とお風呂入る」


 ニーアが姿を戻して、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。


「ほらっ、みんなもいいって言ってるじゃない」


 ミュリックが彼方の腕を人差し指で突いた。


「これで、いっしょに入っても問題ないわね」

「問題あるよっ!」


 彼方は顔を赤くして、大きな声を出した。


「第一、みんなじゃないから! 七原さんも困ってるだろ」


「あ…………」


 突然、名前を出されて、香鈴は口元に両手を寄せる。


「とにかく、七原さんがダメなんだから、君たちだけで…………」

「わっ…………私もいいけど」

「…………えっ?」


 彼方の目と口が大きく開く。


「今、何て?」

「私も…………彼方くんとなら平気だから」


 香鈴は頬を赤く染めて、両手を胸元に寄せる。


「な、七原さん…………」


「これで問題ないわね」


 ミュリックが意味深長な笑みを浮かべて、彼方の腕に手を回した。


「じゃあ、みんなで彼方の体を洗いましょうか。隅々まで、丁寧に……ね」

「…………ぼ、僕は見張りをするからっ!」


 彼方はミュリックの手を振りほどいて、走り出した。ふわふわと浮かぶ森クラゲを避けながら、林の中で深く息を吐き出した。


「七原さんまで、あんなこと言うなんて…………」


 熱くなった頬に手を寄せて、唇を強く結ぶ。


「僕だって、男なのにな。あんなこと言って、本気になったら、どうするんだろ?」


 熱気を払うかのように、彼方はぶるぶると首を左右に振った。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 恋愛だけ鈍感とか意味わからん 性病が、とか妊娠可能性から、の方が説得力ある
[一言] いや……本気になったらも何もあなた…… 七原さん……頑張れ……
[気になる点] 人の動きや考えを読むのが得意なくせに、鈍感体質とは....
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