21教育やセラピーや芸術活動にも活用する
ソフィアは表情が和らぎ遠い目をして何かを思い出しているようだ。
お父様は遠征で得た珍しい食材の中から、不思議な香りを放つものや口にした時に懐かしい感覚を呼び起こすようなものを探し出してくれた。素材は記憶を呼び起こす魔法のスイーツに深みと複雑な香りを加える。
見た目は夢見るスイーツのように美しく、一口食べると過去へタイムスリップしたかのように、幸せな記憶が鮮明に蘇る追憶の菓子を完成させた。食べる人の人生を彩る甘い記憶の旅を約束するスイーツだ。
期待と感動に満ちた空気に包まれていた。テーブルに並べられた色とりどりの追憶の菓子が優しく輝き始め、飲食者は一口食べるごとに、様々な反応を見せる。ある貴族は一口食べてから涙を流し始めた目には幼い頃に亡くした母親の優しい笑顔が浮かんでいた。
老婦人は一口食べると少女に戻ったかのように、朗らかな笑い声を上げた脳裏には初恋の甘酸っぱい思い出が蘇る。
国王陛下は一口食べるたびに、国の繁栄のために尽力してきた若き日の自分を思い出す表情を見せた。
追憶の菓子は瞬く間に世界中に広まると、スイーツを自分にとって大切な人との思い出を分かち合ったり、失われた絆を取り戻したりするための、特別な手段として愛するようになる。
心の傷を癒し希望を見出すためのセラピーとしても活用され、心はより豊かで温かいものになった。
「今度、みんなで追憶の菓子を食べながら昔の面白い話をもっと聞かせてほしいな」
ミーチェが言う。
「ええ、いいですわ。きっと素敵な思い出がたくさん蘇ってくるでしょう」
ユミスが優雅に微笑んだ。
「お姉ちゃん、今度はどんな不思議なものを作ってくれるの?」
ソフィアがバラのジャムを塗ったパンを大事そうに抱えながら見上げた。
「みんながもっともっと幸せになれるような新しいものを作るね。記憶の技術を応用して夢を記録し、共有できる魔法の道具を開発してみて。そうすればみんなで同じ夢を見たり夢の中で新しい冒険できるし」
夢という不思議な世界は新たな探求の対象だった。
「夢ってすごく個人的なものだけどもしそれをみんなで見られたらもっと色々な発見があるから。それに悪夢に苦しむ人を助けたり、夢の中で新しいアイデアを思いつけるかも」
複雑でデリケートな挑戦となる。脳の活動や意識、記憶の深層に作用する魔法は細心の注意を払う必要があるのだ。
「夢は人の意識の最深部に触れる。無闇に介入することは精神に予測不能な影響を与える可能性があり。細心の注意と、倫理的な配慮が不可欠よ」
母は精神魔術や人の心に関する魔法にも深い知識を持っていた。
「誰にでも安全で、幸せな夢だけを記録して共有する」
脳波測定やバーチャルリアリティのVRといった技術を思い出した。魔法で再現し、さらに安全性を高めることを目指す。睡眠中の脳波を読み取り、夢の内容を魔力として記録する魔導具夢見の枕の設計に取り掛かる。
枕は寝ている人の頭の下に置くだけで、夢の内容を微細な魔力の波として記録することができ記録された夢の魔力波を他の人の脳へと送ることで同じ夢を共有できる仕組み。
安全のために不快な夢やネガティブな感情を含む夢は自動でフィルターにかかるように設計。
魔力結晶や脳波を測定するための特殊な魔力センサーの夢の内容を視覚化するための幻影魔法陣などがあるが、記録された夢がぼんやりとしていたり、夢の共有がうまくいかなかったりする。
「みんながどんな夢を見ているか、アンケートを取ってみたよ!美味しいお菓子を食べる夢とか、空を飛ぶ夢とか色々な夢があるみたい!」
ミーチェは領民や使用人たちの夢について、熱心に聞き取り調査を行ってきた。どんな夢に幸せを感じるのか細かく観察してくれる。
「もっと楽しい夢を見られるように、工夫してみる」
他にもたくさん公爵家の所有する古文書の中から古代の夢見術や精神統一に関する魔法の儀式について調べてくれた。
「香りや音楽が夢の内容に影響を与えるようですわ。夢見の枕にそれらを組み込むことで鮮明な夢を体験できるかもしれません」
ユミスにリラックス効果のある香りや心地よい音楽を夢見の枕に組み込むことを閃いた。
ソフィアは 毎晩のように実験台になってくれ、見た夢の内容を絵を描いたり、身振り手振りで表現したりして楽しそうに夢の話をする。
お父様は遠征で得た珍しい魔石の中から、精神安定効果のあるものや夢見の力を持つと言われるものを探し出してくれて夢見の枕に、安全性と安定性をもたらした。
雲のように柔らかく優しい光を放つ夢見の枕と記録された夢を再生し、他の人と共有するための魔法の装置夢の図書館を完成させる。
夢の図書館は大きな水晶の球体のような形をしており、中に記録された夢が映像のように映し出される。
部屋の中央に置かれた夢の図書館の水晶球がゆっくりと光り始めると枕に記録された夢を再生すると、水晶球の中に現実かのような鮮明な夢の映像が映し出された。
満開の花畑を妖精が飛び回る夢。目を凝らし、映像に引き込まれて用意された夢見の枕を使い、同じ夢を共有する体験をすると驚きと感動の声が上がる。
国王も楽しそうでなにより。
「これは……!本当に同じ夢を見ている!」
「夢の中にいるようだ!」
「こんなに鮮明な夢を見たのは初めてだ!」
夢見の枕と夢の図書館は瞬く間に世界中に広まった。
「すごい!すごいぞお!」
魔導具を娯楽として楽しむだけでなく教育やセラピーや芸術活動にも活用するようになった。夢の中で新しいことを学び、創造性を刺激し、心の傷を癒すことが可能になった意識はより豊かで無限の可能性を秘めたものへと変化していく。
「ねぇ、キャロルお姉ちゃん!今度みんなで同じ夢を見て、夢の中でピクニックに行かない?お弁当はミーチェが作るね!」
「ええ、いいですわね。きっと、素敵な夢のピクニックになるでしょう」
ユミスが、優雅に座る。
「キャロルお姉ちゃん、今度はどんな不思議な世界を見せてくれるの?」
ソフィアが見上げた。
「もっともっと幸せになれるような、新しいものを作る」
妖精王からの恩返しも、人生に彩りを添えてくれた。
「よし!次は夢の技術を応用して、現実世界と夢の世界を繋ぐ魔法の扉を開発してみよう。そうすれば夢の中で学んだことを現実に活かしたり、夢の中で出会ったものや場所を現実に再現したりできるはず」
キャロルの言葉に家族みんなは驚きの声を上げた後、満面の笑顔で大喜び。公爵家のお屋敷のリビングで次の発明について話す。




