1,アイテムボックスの継承
アイテムボックスは夢と希望と危険物が詰まってます。
【条件を充たしました。黎明の魔女レイラの知識及びアイテムボックスを継承しますか? YES or No】
「は?」
ミオはキョロキョロと周囲を見回し、その音声の発信源を探した。
「何してんだ?」
兄のケンが変なモノを見るような視線をよこす。
「ゲーム音声みたいなのが聞こえたんだけど、兄さん携帯ゲームでもしてるの?」
「あ?ケータイは二階だよ」
一階にあるダイニングキッチンで、自分と兄、両親の4人で夕食を囲んでいる。ミオの15歳の誕生日のため、テーブルにはところ狭しと料理が並ぶ。
メインは母の手料理!と言えば親孝行なのだろうが、ミオにとってメインはホールケーキである。
「なんて聞こえたんだい?」
ニコニコと温厚そうな見た目と違わず、優しい声で問いかける父トシヤ。
「んー。アイテムボックスのケーショーがどうとか!」
「あらあら、素敵!アイテムボックス欲しいわね~」
若かりし頃はRPGゲームをこよなく愛した母アイコがウキウキとノリのいい事を言う。
「継承ってなんだよ。そんなん俺も欲しいし」
「ウヒヒ。私も知らないけど、欲しい!イエスだ!」
てっきり誕生日のサプライズイベントを企画してくれたのかと、ミオは先程の音声に対して短絡的に返答した。
【肯定の意志を確認―――】
再び先程と同一の音声がしたとたん、ミオは脳髄の痺れるような感覚と目眩を感じた。
(あっ。これガチでヤバいヤツ!ケーキまだ食べてないのに・・・)
無念を抱いたまま、ミオの意識はここで途絶えた。
―――ミオは永い永い記憶の中を旅していた。
それは、海底火山が噴火し、溶岩が山や島となり、緑豊かに生い茂るような・・・あるいは、産まれたてのドラゴンが孫子を成しコミュニティを形成するほどの永い時である。
何百年、何千年分の景色を観ていた。
〈見る〉ではなく〈観る〉なのは、そこに自分の感情はなく、客観的な視点でもって眺めている感覚があるからだ。
だがおそらくは、過去の・・・いや、前世の自分の人生なのだろう。
その世界の情報であったり、自身の能力について、唐突に理解した。
例えば魔法の行使は、呪文を唱えるまでもなく、引き起こせるという確信。
過去の自分はとても力の強い魔女であり、時として天災の様な認識をされる事態に陥ったりもした。ただ本人は、自身の信じる感性にのっとり、それを行っていたに過ぎず、その後に起こるであろう問題は気にもかけてはいなかった。
少しばかり魔力の多い人間。
最初はその程度だったと思う。
だが真面目な性格によって、繰り返しの鍛練を苦に思わず継続し、本人の資質の向上を加速。そして貪欲なまでの未知への探求心が、真理と呼べる迄の知識の修得を可能とした。
それに伴い、人としての枠も飛び越えてしまったようだ。魔力や寿命はすでに人間の域にはなく、エルフよりもドラゴンよりも永く世に存在し、亜神のような扱いをされた。
【黎明の魔女レイラ】
神話やお伽噺、吟遊詩人の語りなどにも登場した。
実在の人物であることは各国の上層部以外はあまり知られていない。
・・・それもそうだろう。
まさか一万年に近い時を生きた人間がいたなどと、普通は信じられないに違いない。
―――悠久の時を生きた魔女も不死ではなかった。徐々に衰えを実感する。
だが唯静かに眠るには、知識も溜め込んだアイテムの数々も、他者からしてみれば魅力的過ぎた。
何しろたった1つのマジックアイテムを手に入れただけで、国同士の争いの不利な戦況を覆す、とさえ言われているのだ。
人や獣人、エルフやドワーフ、ドラゴンなど、魔女の存在を知っている各国の代表らは、挙って魔女を探し、秘宝を追い求めた。
魔女は憂い、人の踏み込まぬ秘境に外からは判らないように細工したダンジョンを創った。そして地下百層を超える階層の深部に部屋を造り、そこを終の棲家とした。
生涯を通して収集した多数のアイテムは、空間収納魔法・・・通称【アイテムボックス】へと収納した。
本人にしか取り出せず、死去した場合は無かった事になる。
強力な品々は、取り扱いが難しく、遺して逝くには心残りなのだ。
―――そして現代の地球。日本国。
本人にしか取り出せず、知識も無くては扱えない秘宝級の品々は、魔女の生まれ代わりに継承されたのである。
まだ実感が湧かない意識下で、ミオは思った。
(ヤバい知識もアイテムも困るって!!!)
継承した知識とアイテムの大半を封印し、死蔵する事が決定したのであった。
頑張って書き続けます。




