包囲
寧寧を乗せた船は航路をそれ龍が住まうという島へと進路を取った。そのことに対し船内から数多くの反発もあったが鳴魚の鶴のひと事で収まった。ただ、問題があった。龍が住まう島がある海域は危険でいっぱいだったから。
「とりあえず陽が沈んだら島に近づくぞ。あの島は本当になにもないところだがな、本当にあいつらは貪欲なまでに主張するからな」
鳴魚がいうあいつらとは、島を領土のひとつだと主張している聆と幵の水軍だ。本当は両方とも海の民にとってお得意さんであるが、その島に関しては別だった。
「寧寧、これから行く島は鬱蒼とした樹木に覆われているが、龍が住まう場所は中央にそびえる岩山の中にある。そこに行く事が出来るのは龍が認めた者のみだ。お前はその証を持っているから大丈夫だろうが、問題はこれから近づいてくる船だな」
鳴魚はそういって日が暮れるのを待っていたが、水平線の向こうから鉄板に覆われた船が現われた。それは聆の武装艦だった。このあたりの海域を巡回している奴だ。とりあえず寧寧は伝馬船の中に隠された。
「お前らは海の民だな? どうしてこの辺りをウロウロしている? 返答の如何によっては本部へ連行するぞ」
聆の役人が乗り込んできて尋問し始めた。鳴魚はいつものこととばかり、お茶を入れてから応じていた。
「へいへい、嵐にあって舵が効かなくなったんですわ。いま修理していたところで直りましたから、この海域を出ますわ」
「そうか、ぐれぐれもあの龍の島に近づくでないぞ。お前らは漁船ではないようだからいいが、もし魚でも釣っていたら本当に本部へ連行するところだった」
そういって聆の役人は指でわっかを作った。それは暗に金銭を要求するものだった。それに対し鳴魚は皮袋から金貨を数枚手渡した。
その時、聆の武装艦から大声が聞こえてきた。敵が来襲というものだった。水平線から二隻よりも大きな装甲武装艦が複数現われた。幵水軍が保有しているなかでも最大級の奴だった。
「やれやれ奴さんたちがお出ましというわけか? こんな貨客船一隻に目くじらを立てるとはね。おいらの船は魚の群れに落とされたエサというわけか?」
鳴魚は呆れたような声で言った。海の民の貨客船は聆の武装艦とともに多数の装甲武装艦に囲まれてしまった。そいつらは聆への侵略に向かう途中であったようだ。




