お題【転ばせ屋】
昨年、柳田國男の未発表のメモが見つかったと民俗学学会で話題になった。
肝心の地域については火で炙られたのか焼け落ちて判別できない状態で、他にも似たように焼いて内容が消されている部分が何箇所かあったので意図的に削除したのだと思われる。そのメモが見つかった手帳は、柳田氏が遠野物語のフィールドワーク中に使っていたものの一つであったため、おそらく東北地方のいずれかの地域であろうと推測されている。メモは手帳の皮表紙をいったん剥がし、そこに隠された上で米粒により糊付けされていた。その内容はだいたい以下の様である。
××地域には「転ばせ屋」という職業の者が居る。この職には一家で就き、「大転ばせ」と呼ばれる仕事を男衆が、「小転ばせ」と呼ばれる仕事を女衆が受け持つ。彼らの仕事は対象を転ばせることであり、転ばせられた人は××と呼ばれ××となる。
ここから文字は乱れ、走り書きのような状態になっている。
大は老人、小は妊××
仕方のない××××
内容から推測されるにクチベラシを生業にしていた一族なのではないかと思われるが、他の文献には登場しないところを見るとかなりのタブーとされていた存在ではないかと報告された。
尚、この報告があった一週間後、民俗学学会の会長が心臓麻痺により他界したが、これについてネット上の某巨大掲示板の民俗・神話学板では、転ばせ屋が現代まで残っているという話題で騒然となった。
<終>