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お題【二年前】【男気】【優等生】

 筆の走る音だけが静寂の中に響いている。

 蛍光灯が時折瞬く以外、特筆すべきところがない廊下。

 開くことのない窓の外は暗く、廊下に佇む自分の姿が映るだけ。

 どうしてこんなことをしているのか。

 自問の答えはいつも同じ――姉さんの死の真相を知るため。


 全寮制で中高一貫の女子校。

 幼い頃、両親の離婚により離れ離れになった姉さん。

 仲良しで大好きだった姉さん。

 始めのうちはこっそり連絡を取り合っていた。

 だけど姉さんが高校に進学してから突然、全く既読がつかなくなった。

 そんな矢先だ。

 姉さんが自殺したと聞かされたのは。

 しかも、身ごもっていたという。

 男気(おとこっけ)のない全寮制の女子校で?


 私は必死に勉強して、高校からなんとかここへ入学することができた。

 姉さんと同じ学年の人たちがまだ残っているうちに。

 なんとしても二年前の真相を暴きたい……その想いでさらに勉強した。

 高等部の寮は全部で三つ。学年毎ではなく、定期試験の成績順に部屋が割り振られる。

 私もようやく移ることができた。この、優等生しか居ないという最奥の松乃寮へ。

 そして驚いた。

 この寮は、他の寮に比べて、やけに薄暗く、古臭く、不気味で、そしてどこか……悍ましい臭いがする。

 うまく表現できない臭い。そんな臭いを出すモノを、見たことはないし、一生見ないでいたい、そう思えるほどの。


『飛び級』


 姉さんが自殺したちょっと前に、学校側からそう言い渡されたという情報を、なんとか手に入れた。

 しかしその直後、それを教えてくれた先輩も『飛び級』して、この学校を去った。

 姉さんの死を調べていることに気付いた先輩の中には、やめるよう忠告してくれた人たちも居た。

 でも、大切なたった一人の姉さんを喪った哀しみから目を逸らすことができなかった。

 でも、諦めなくて良かったと思っている。

 真相……とまではいかないが、その手前までわかったから……その内容を全てメールにまとめた。

 あとはそれを……電波が通じる場所を見つけることさえできれば……。


 どこか遠くで重たい金属が軋む音がする。

 あの臭いがにわかに濃くなる。

 嘘でしょ?

 まさか、寮の中にアレを放すなんて。

 こうなったら窓に体当た……嘘……。


 窓の外に張り付いてこちらを見ているアレのうちの一匹の、ぬるりと緑色に濡れた頭部に、姉さんとお揃いの髪留めがついていた。

 床や壁に貼りつくような湿り気のある足音と、どうにも我慢ができない臭いとが、ゆっくりと私を取り囲むのを感じた。




<了>


構想10分+執筆30分というルールで書いたもの。

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