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ロックンロールは永遠だ!  作者: はまゆう


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12/21

第12回:1978年、パンクからニューウェイヴへ——怒りのあとに来たもの

こんばんは、みんな。俺だ。


パンクの話をしたのは第8回だった。あの怒りと退屈が渦巻いた時代から、わずか数年で音楽はどう変わったのか。今回はその“後日談”だ。タイトルは「ニューウェイヴ」。聞こえはいいが、実はかなり複雑な響きを含んだ言葉なんだ。


よし、ギターのボリュームを少し絞って、話を始めよう。


---


■ プロローグ:怒りが冷めたあと


1978年、ロンドン。


パンクの爆発から2年ほどが経っていた。セックス・ピストルズは解散し、多くのバンドがメジャーレーベルと契約していた。路上の怒りは、少しずつ「プロダクト」に変わっていく。


ある晩、小さなクラブで知り合いのバンドマンと飲んでいた。彼はパンク初期からの古参で、今でも革ジャンをビリビリに破って着ている。でも、目つきが前と違った。


「最近、どうだ?」と聞くと、彼はビールを一口飲んで、こう言った。


「なんかよ、怒ってた頃のほうが、音楽が楽しかった気がするんだ。今は……みんな“パンクっぽいこと”をやってるだけだ。」


その言葉が、当時の空気をよく表していた。パンクは「流行」になった。そして、流行になった瞬間から、ある種の「退屈」が始まっていたんだ。


---


■ ニューウェイヴという“逃げ道”


ここで言葉の定義をしておこう。


「ニューウェイヴ」とは何か?簡単に言えば、「パンクの衝動を保ちつつ、もっと音楽的に洗練されたもの」だ。


代表的なバンドを挙げると——

・トーキング・ヘッズ:パンクの反骨精神に、ファンクと知性をブレンドした。

・ブロンディ:パンクのエネルギーをポップに昇華させた。

・エルヴィス・コステロ:怒りを、技巧的なコード進行と言葉遊びで包み込んだ。

・ザ・ポリス:パンクの速さにレゲエのリズムを掛け合わせた。


彼らに共通するのは、「怒りを捨てていないが、表現方法をバリエーション豊かにした」という点だ。


言い換えれば、ニューウェイヴとは「パンクの卒業生たちの新しいキャリア」だったのかもしれない。


---


■ 音楽理論で見る変化


ここで、また音楽の話をしよう。


パンクのリズムは「全員食い」で突っ走る、あの暴走感が特徴だった。ところが、ニューウェイヴになると、これが変わる。


例えば、トーキング・ヘッズの「Once in a Lifetime」を聴いてみろ。


ベースはシンプルな反復フレーズ。ドラムはほぼ機械的な4つ打ち。ギターは不協和音を散りばめ、ボーカルはほぼ“お経”のように繰り返す。


これ、パンクのノリとは正反対だ。「食い」でも「タメ」でもない。むしろ、感情を排した「無機質な正確さ」を追求している。


なぜこんなことが起きたか?


理由はいくつかある。一つは、パンクの「感情的な爆発」に飽きたから。もう一つは、シンセサイザーやドラムマシンといった新しい楽器が登場したから。


つまり、人間の「揺れ」を排除して、機械の「正確さ」を音楽に取り込む実験が、ニューウェイヴだったんだ。


---


■ 裏切られたのか、進化したのか


ここで、ある論争が生まれる。


パンクの「DIY精神」や「反商業主義」を掲げていた連中から見れば、ニューウェイヴは「態度を丸くしてメジャーにすり寄った腰抜け」に映った。


実際、ラモーンズのジョーイ・ラモーンはインタビューでこう言っている。


「あいつらはパンクの名前を借りて、ただのポップスをやってるだけだ。」


一方、ニューウェイヴ側の意見はこうだ。


「パンクが変わったんじゃない。世界が変わったんだ。変化に対応できない方がおかしい。」


どちらが正しいか?答えは出せない。ただ、言えるのは——音楽は常に変化する生き物だということ。その変化を「進化」と見るか「堕落」と見るかは、聴く人次第だ。


---


■ ある日のデヴィッド・バーン


1979年、ニューヨーク。


トーキング・ヘッズのフロントマン、デヴィッド・バーンにインタビューする機会があった。あの、異様に大きなスーツを着た、神経質そうな男だ。


彼はスタジオの片隅で、ずっとリズムマシンをいじっていた。俺が「パンクからの変化についてどう思うか」と聞くと、彼はこう答えた。


「パンクはね、ドアを壊したんだ。でも、壊しただけじゃ何も生まれない。俺たちはその先にある“部屋”を探している。」


その「部屋」に何があったか?


それは、従来のロックにはなかった「間」と「沈黙」の新しい使い方であり、機械と人間のコラボレーションであり——そして時には、冷たく無機質な実験音楽だった。


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■ ニューウェイヴの遺産


ニューウェイヴは80年代初頭にピークを迎え、その後はMTVの台頭やシンセポップの波に飲み込まれていった。


しかし、その遺産は大きい。


まず、ロックに「知性」を持ち込んだこと。パンク以前は、ロックの知性派といえばボブ・ディランくらいだった。しかしニューウェイヴ以降、大学出のミュージシャンが増え、歌詞には文学や哲学の引用が当たり前になった。


次に、「音作り」の概念を変えたこと。それまでは「ライブでどう鳴らすか」が全てだった。しかしニューウェイヴのバンドたちは、スタジオを「楽器」として使い、レコードでしか再現できない音を追求した。


そして最も重要なのは、「ロックはこうあるべき」という固定観念を壊したこと。


ギターが歪んでなくてもいい。3コードじゃなくてもいい。怒ってなくてもいい。髪の毛が長くなくてもいい。


その「自由」を、ニューウェイヴはもたらした。


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■ エピローグ:その先にあるもの


今、あの時代を振り返って思う。


パンクがあまりに強烈だったから、その後の音楽は「劣化」のように見えた時期もあった。しかし、ニューウェイヴは「劣化」ではなく「拡張」だった。


ロックンロールという木の幹から、いくつもの枝が伸び始めた。パンクという強烈な太い枝だけが全てじゃない。細い枝でも、やがて花を咲かせる。


実際、後のオルタナティブ・ロック、インディー・ロック、さらにはデジタル・ポップに至るまで、あの時代に蒔かれた種はたくさんある。


音楽は永遠に続く。形を変えながらも。


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■ 今夜の一枚


今夜はトーキング・ヘッズの「Remain in Light」を通して聴いてほしい。


特に「Once in a Lifetime」。あの曲を聴くと、いつもデヴィッドの言葉を思い出す。


「同じところをぐるぐる回ってるだけじゃないか?って気づくことが大事なんだ。」


そう。ロックも、人生も、同じところを回っているだけではいられない。たまには、違う部屋に足を踏み入れてみる勇気が必要だ。


ロックンロールは永遠だ。でも、その形は永遠じゃない。


---


■ 次回予告


次回は「1979年、ポストパンクとインディーの夜明け」。


パンクでもなく、ニューウェイヴでもない。もっと尖った、もっと実験的な連中が暗闇から現れた話をする。


70年代編、あと少しでフィナーレだ。


ロックンロールは永遠だ。

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