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247:お持ち帰り。

「うんっしょ。んっんっんんん」

「ウッヒョー。貯めこんでるねぇ、ミス・サクラ」

「何言ってんの。これでもほとんど捨ててきたのよ。ね、ニコちゃん」


 ブラッディー・ウォーのギルド本部に戻って来た俺たちは、そのまま帰国の準備に入った。

 もちろん、その前にたっぷりとお風呂には入っている。

『水を使わないジャンプー』『体拭きシート』。この手のアイテムは大量に持ってきてたけど、やっぱり、気にならないわけがない。

 

 うちの社長のおかげで、ニューヨークにも銭湯ができている。

 いや、この三ヵ月の間でオープンしたばかりだ。

 そこの家族湯を二つ貸し切って、何度も何度も髪を、体を洗いまくった。


 サウナにも入って、そりゃもう天国かと思うほどに気持ちよく、スッキリしてからここへ。


「Yes。これでも毎晩、持ち帰るアイテムを厳選したのよ」

「どうせ持って帰るなら、少しでも高価そうなものを選ぼうってね」

「スノゥが大活躍やったんばいね」

「うふふ。役に立ててよかったわ」


 いやぁ、スノゥは本当に大活躍だった。

 ギルドの倉庫で、サクラちゃんのアイテムボックスに入ったものをどんどん並べていく。

 ひとつ出てくるたびに、エディさんの顔がにやけていくのがわかった。


 オーランドを三ヵ月も連れまわしたし、行きも帰りもお世話になっている。

 これで恩返しができたかな。


「サクラちゃん、ヨーコちゃん、スノゥ……」

「あらあら、オーランド。寂しくなったのね」


 さしげなくオーランドが、三人を抱き寄せ、深呼吸している。

 何故深呼吸?

 そんなオーランドを、スノゥが翼を広げて抱擁した。


「ヘイ、ミツイシ。帰国の準備は終わったか?」

「トムさん。あとはサクラちゃんのアイテムボックス内に入れたアイテムを取り出すだけです」

「全部置いていくのか。少しぐらい持ち帰ればいいだろうに」

「ご心配なく。真田さんや他のみんなへのお礼分は残してあるので」


 特に真田さんは捜索隊ではなく冒険者だ。

 アニマル軍団、それから富田さんは出張名目だから、実はこの三ヵ月もちゃんと給料が発生している。

 でも冒険者である真田さんは、完全にタダ働きだ。それはニコールやオーランドも同じで、三人には特に高価なアイテムを残した。


 ダイヤモンドの原石は、ボス部屋で砕けたアレっきりだったけど、エネラルドやルビー、サファイアといった原石はいくつか出ている。

 あのダイヤは恐ろしくデカかったけど、こっちは親指ぐらいの大きさだ。

 スノゥの鑑定だと質のいいものってのはわかったけど、お金に換算した金額まではわからない。


「ふぅ。やっと全部出せたわ。あとは使わなかった備品やテントとかの野宿アイテムよ」

「三ヵ月でこの稼ぎかぁ。オーランドひとり分って考えると、破格の稼ぎだな」

「そうなの、エディさん」

「あぁ。こいつはよく、ドロップを置いてくるんだ。帰って来てから『あ、忘れてた』とか言ってな。それも踏まえると、オーランド一年分の稼ぎよりも多いかもしれん」

「おっちょこちょいな男ばいね。ね、サクラ」


 サクラちゃん、何で俺を見ているんだ?

 俺はそんな…………。


「さぁて、忘れ物がないか確認しようか」

「大丈夫よ、悟くん。もう荷物は全部私のアイテムボックスの中だから」

「そ、そう」

「あぁ……ここにもおっちょこちょいがおったばい」


 お、俺はドロップを忘れたりしていない。

 忘れているんじゃなく、拾わないだけだ。

 何故拾わないか? そりゃあ、見えていないからだ。

 見えていないものを拾えるわけないだろ?


「おい、お前ら準備はできたか? 車が来てるから、そろそろ行くぞ」

「あ、はい。後藤さん」

「結局、後藤さんはなんでアメリカに来とると?」

「そんなの決まってるじゃない。悟くんが心配で心配でたまらなかったのよ」

「子離れできとらんのやね」


 後藤さん、言われてますよ。

 そもそも、自分の息子の心配をしてやってくださいよ。

 まぁ、大学生だと命の心配とかはそうないんだけどさ。


「おーい。こっちの準備はできたぞー」

「できたのぉ」

「ケッ。帰るぜ」

「ワォン」

「空港でお土産買うんでしょ。行くわよ!」


 みんなも集まって来た。

 真田さんはもうしばらく残るらしい。今度はニコールの拠点であるロスの方へ行くそうだ。

 というか、間違って別の飛行機に乗ると危ないからって、トムさんにニコールを送るよう頼まれたんだとか。

 乗る飛行機間違えることって、あるのか? チケット確認するから乗務員が気づくだろ。

 そう思ってたらエディさんが「そもそもチケット買うところからあいつは間違えてんだよ」と。


 重症だろ?


「さ、行くぞ、悟」

「あぁ、はい」


 手荷物なしで、車の方へと向かう。

 その車の前で、振り返った。


「オーランド」

「悟」

「本当にありがとう。オーランドのおかげで、父さんを戻せる。だから、必ずまた東京にこいよ」

「あぁ。その時はパパさんママさんたちと、どこかでかけよう。ジャパニーズ温泉!」

「いいね、温泉。わかった、両親に伝えとくよ」


 満足そうな笑みを浮かべ、オーランドは……。


「ところでオーランド」

「ん?」

「その、両手に抱えたサクラちゃんとヨーコさんを、放してくれないか?」


 何食わぬ顔でサクラちゃんとヨーコさんを、持ち帰ろうとしていた。





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