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3 Primum

 白咲の家は今日()暗い。

 明るいのは皆が寝静まった深夜だけ。妖美な光を放っている。

しろがねさん、白咲さんいませんね」

 だから、帰ろうと必死に目で訴えるが、鼻で笑われただけだった。

「二階で深雪と仲良くやってるんだろう。そろそろ下りてくるぞ」

 その言葉通り、白咲は深雪を抱えて下りてきた。

「やあ、(僕の可愛い玩具)ちゃん♪ 今日は何の用事かなぁ?」

 白咲が苦手な葵は、銀の背後うしろに隠れ、服の裾を握りしめてこちらを伺っている。

「あはは、やっぱり可愛いねぇ!そうだ、君にぴったりの洋服を買ってあげよう!さあ、おいで!僕が飽きるまで、僕のそばで僕を楽しませてよ!……ま、どうせすぐ飽きちゃうんだけどね。壊すときが最高に楽しいんだ!」

 銀と深雪は、ため息をつき、頭に手をやっている。

「おい、白咲。いい加減にしろ。葵で遊ぶな。困ってるだろうが」

「あれれ、銀が他人を庇うなんて珍しいこともあるもんだね!もしかして、葵ちゃん(僕のオモチャ)が気に入った?深雪、今日はお赤飯だねぇ!」

 一人、テンションが高いのもいつものことである。

 しかし、葵は一向になれる気配がない。

「そろそろ黙れ………黙って下さい」

「ねぇ、さっき“黙れ”って聞こえたんだけど。僕の聞き間違い?」

 いつの間にか自分で立っていた深雪は、「ねぇ、深雪?深雪ってば!」とうるさい白咲を奥の部屋へ押し込んだ。

「助かる。昨日、この家宛に届いた荷物があるはずなんだが。届いているか?」

 深雪に礼を言い、淡々と話を進める銀。

 銀と葵が白咲の家へ出向いたのはこの為だった。

 家が世間に知られてしまうと引っ越す手間がかかるので、毎回白咲宛にして届けてもらっている。

「届いています。少々お待ちください」

 そう言い、深雪は白咲を押し込んだ部屋とは別よ部屋へ姿を消した。

 ホッとしたのか、葵がため息をつく。

「私が付いてきた意味なかったじゃないですか…… 白咲さんに遊ばれに来たようなものじゃないですか……」

「ああ、この家に来る必要はなかったな。ただ、俺にも白咲と似たところがあるらしい。葵の反応が見たかったからな」

 絶句とはこのような状態を指すものなのだと、葵は初めて感じた。

 言葉が出てこない程の衝撃だった。

「何に驚いている?俺のことは知らないことの方が多いだろう?知れて良かったじゃないか」

 葵は、笑っている銀を見るのは初めてだ。

 否、ここまで楽しそうに笑っている銀を、初めて見る。

「えー、なにそれー。葵ちゃんの前ではそんな顔見せんのー?え、何?雰囲気を壊すなって?銀《お前》もバカだねー!僕の前でイチャつこうとするのが間違いなんだよ!」

 いつの間に部屋から出てきていたのか、白咲はこちらを見ながら拗ねているかのような顔をしていた。

「ねぇ、銀。もう、傷は癒えた?敵からの、じゃなく仲間・・から受けた傷。……そんな怒った顔しないでよ!ちょっと意地悪しただけじゃない!そろそろ深雪も出てくるだろうし、外に出よう。話したいことがあるんだ」

「俺だけか?」

「うん!あ、葵ちゃんは深雪が来るまでここで待っててくれる?深雪が来たら、二人で外に出ておいで」

「分かりました……」

 白咲が考えていることなど、考えるだけ無駄だとこの時、葵は悟った。

Primum=初めての

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