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狂王戦(5)

 

「ごめん、遅くなった」


 もう1度ハルは、アリスにそう言った。そのアリスは何が起きたかわからず動けていなかった。


「ハル・・・?」


 夢かと思ったアリスはハルのことを呼んだ。


「そうだよ、アリス」


「なんできたの!」


「なんでってそりゃあ、みんなが頑張っているのに僕が頑張らないでどうするの?」


 やっとハルが本当にそこにいるというのに実感が沸いてきたアリスはハルの体をもう1度見返す。その体はボロボロで、貫かれた腹のあたりは血が流れ出している。アリスは、その体を見ると涙が止まらなくなってしまった。


「・・・なんでそんなボロボロになるまで・・・」


「1秒でも速くたどり着きたかったから」


「話は終わったか?」


 今まで静かにハルとアリスの会話を聞いていたヴァンが口を開く。ハルはそんなヴァンの方を向いた。そして、周りを見渡す。壁にぶつかり倒れているミーシャとクレア、ボロボロになって倒れているリアナ。そして、擦り傷だらけになって泣き出してしまっているアリス。


「・・・これはあんたがやったのか?」


 ハルは静かに聞く。


「ああ・・・少しは面白かったよ。それよりお前どうやってここに来た?というよりも」


「面白かった?」


 ヴァンの言葉に反応するハル。急に聞かれたヴァンは不思議そうにする。


「んあ?ああ、面白かったよ!お前らのチームは本当に面白かったよ!!姿が変わるアサシン!魔族ヒーラー!!俺の体を一瞬で消し飛ばす『魔王の娘』!!!・・・まあ、もういらないけど。お前は何しに来たんだ?」


「・・・最初はみんなを逃がせれば良かったんだけど、考えが変わったよ」


 ハルはヴァンの右腕を捨てて剣を構える。そんなハルをみてヴァンは笑う。


「おいおい、もしかして俺を倒そうっていうのか?」


「ああ」


「お前の限界は分かってんだよ!もうお前じゃ俺のおもちゃにはならないよ!!!」


「・・・」


 ハルは、足に力を入れる。目指すべき目標に


「あっはっは!!!面白いなあ!!!!やってみろよ!!!!今度は左腕でも斬って」


「それってこれのことだよな」


「!!!」


 一瞬で一擊を加えるために。ヴァンは何が起きたかわからなかった。ヴァンはしっかりとハルを見ていたはずだった。それなのにハルはいつの間にか後ろに立ってヴァンの左腕を持っていた。


「あああああああああああ????!!!!!!!」


 ハルは、その腕を捨てるとアリスに駆け寄る。


「これかけといて」


「あ、ありがとう・・・」


 ハルは自分が着ていた上着をアリスにかける。


「アリス」


「は、はい?」


「少し待ってて、こいつをぶっ飛ばしてくるから」


「はああああああああ!!!!!!!!」


 ハルのブライトバスターとヴァンの《狂鬼招来》された足がぶつかり合う。そして、ヴァンは一瞬の隙をついてハルの横にある自分の左腕を足で器用に拾う。


「はあ・・・・はあ・・・・」


 ヴァンは自分の右腕と左腕を自分の周りにおいていた。


「?」


「・・・《狂鬼招来 レベル3》」


 そう唱えると黒い魔力に包まれたヴァンは先ほどの姿より一層凶悪に成長していく。そしてもうひとつ驚愕すべき点は


「腕がくっついている?」


 ヴァンの腕は黒い魔力で成長した鎧と同様にちゃんと腕として元の位置に戻ってきていた。


「おいおい、これはどういうことだよおおおおおおおおおお!なんでお前そんなに強くなっている!なにをした!!何をした!!!」


 元通りになった腕の感触を確かめながら、怒り狂いながらヴァンは叫ぶ。そして、ハルに突っ込んでいく。ハルはヴァンの攻撃を受け流す。その光景をみて、ヴァンは怒り狂いながら頭の中で考える。この目の前に剣士は一体何なのだと。数時間前は自分のただの《狂鬼招来》に簡単にやられていた。それなのに今この剣士は、


 ガガガガガガガガガ!!!


 自分の《狂鬼招来 レベル3》の鎧ですら簡単に削り取っている。


「何をした!何をした!!!何をしたああああああああああああああああああああ!!!!!」


 その叫びにハルはゆっくりと口を開く。


「別に何もしてないよ。ただ俺は剣をひたすら振っただけ」


「そんなことで!」


「強いて言うなら・・・ここまでひとりで来たんだ。ただひたすら真っ直ぐに」


「!!!!」


 ヴァンは思う。


(こいつは今なんて言った。ただ真っ直ぐに?誰の支援もなく??ただの剣士が???傷だらけの体。要するにコイツは目の前にきたモンスターを1階層から10階層まで斬ってきたというのだ。まるで俺のように!!!)


 その一瞬で考えが止まる。その瞬間でハルはヴァンを吹き飛ばす。壁に叩きつけられるヴァンは怒りと同時に喜びを感じていた。


「あははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!」


「・・・・」


「俺はお前のようなやつを待っていたんだよ!!!!弱かったはずなのに俺に噛み付いてこよう。おもちゃのくせに俺を逆に壊そうとするやつを!!!!!!!」


「・・・・・」


 ハルは叫び続けているヴァンを見る。


「さあ!!名乗れよ!!!お前の名前はなんだ、剣士!!!!!」


 叫ぶヴァンに、自分の名前を聞くヴァンにハルは答える。


「ハル・タラリス」


「ハル・タラリス!!!覚えたぞ!!!!さあああああああ第2ラウンドといこうぜ!!!!《狂鬼招来 レベル6》!!!!」


 先ほどのヴァンの姿からもっと凶悪に巨大な鎧を身に纏う。この姿を見たものはほぼいない。鬼のような悪魔のような鎧を身に纏う。顔には鬼のような兜を顔全体に纏う。

この状況普通のダンジョン攻略者ならもうこの剣士には勝ち目がないと言うだろう。しかし、ハルは剣を構える。ハルは諦めない。仲間を守るために。


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