070 アズサ、ランキング五位になる
私たちはドルドの街に着いた。アリスとミーアは小料理屋の二階のアリスの部屋でしばらく同居。私は当然ルーと二人で私の部屋で暮らす。
女将さんの前で案の定ルーが私をママと呼んだので、女将さんが珍しく「アズサちゃんって子持ちだったの」って絶句していた。
ルーは十歳だし、どう考えても親子は無理でしょう。女将さんって天然が入っていたのか、気付かなかった。
女将さんはルーの顔を見て、そして私の顔をじっと見て、「あなたたち、よく似てるわね」って言ってくれたのは嬉しかった。私にも家族ができたように思えたから。
「アズサさんが戻ってきてるて聞いたのだけど」とヒロシが小料理屋に走り込んできた。
私はさっそく一緒にまた五十階層に行ってほしいと頼んだ。アリスにミーアにルーの顔を見て、ため息をつきながら、ヒロシは「承知しました」って言ってくれて安心する。
「アズサさん、疲れているところ悪いのだけど、冒険者ギルドにきてほしい。見てもらいたいものがあるんです」
「良いけど、それは何なの?」
「くればわかります」
ヒロシを先頭に私とルー、アリスにミーアがギルドに向かって歩いた。なんかたくさんの視線を感じる。
ギルドに着くと、ランキングが掲示されていた。冒険者パーティ黒猫が第十位に入っていた。
「ヒロシ、おめでとう。やっとトップテンに入ったんだね」
「アズサさんのお陰です。俺たちの実力じゃないから」
「ごめん意味がわからないのだけど」
「アズサさん、ランキングの上の方を見て」
ランキングの上の方って、いつも通りのパーティの名前が並んでいる。ランキング第五位が個人名だ。ソロで五位とは快挙だ。「アズサ」
「ヒロシ、私の名前がランキングにあるのだけど、どういうこと」
「赤の旅団の猛烈な推しがあったって聞いたよ。アズサさんは、前人未到の五十階層に入ったわけだし。当然と言えば当然。俺たちもそのおこぼれにあずかったわけ。俺たちの実力じゃない」
「アズサさん、ランキング五位おめでとう。私は冒険者パーティ白猫のリーダーをさせてもらっている、エルリックです。アズサさんにお願いがあって、お話中で失礼だとは思ったのですが、声をかけさせてもらいました」
「初めまして、エルリック様、ランキング三位おめでとうございます」
「いつも通りの三位です。赤の旅団、オウンゴールにはいつも及びません。しかし、赤の旅団はミルヒー殿を失い活動休止状態、オウンゴールはワイバーンに主力メンバーが喰われて、これまた休止状態です。私たちとしては、黒猫のヒロシ君とアリスさんに、名前が出てこないのですが、戦士君が五十階層に行ったことが猛烈に悔しいのです」
「ワイバーンさえ、二十一階層のゴブリン軍団さえなんとかなれば、私たちも五十階層を目指したのですが、私たちはゴブリンの軍団に遭遇して、見事に敗退しました。あれは帝国軍の近衛師団並みの力を持っています。小規模パーティでは絶対に勝てない」
「黒猫さんたちは、こっそり二十一階層を抜けたそうだが……」
「軍隊相手に戦うって、俺たちそこまでバトルジャンキーじゃないもんで、エルリックさん、すみませんね」
「ヒロシは黙って。それでエルリック様、私に何かご用でしょうか?」
「あなたがここにいて、妖精弓手がいる。これはきっとあなたたちはダンジョンに潜るつもりだと思いました。で、ご相談ですが、私たちも同行させてもらいたい」
「もちろんタダとは言いません。エルクシエル十本を差し上げます。今すぐです。いかがでしょうか?」
「そうですね。エルクシエルを見てからですね」
「アル、見本を持ってきて。どうぞこれが差し上げる。エルクシエルです」
「紅のポーション。少し魔力を通しても良いですか?」
「よくご存知で、構いませんよ」
紅のポーションに魔力を通してみた。見事な真紅のポーションに変わった。
「同行だけなら、助けませんけど……」
「もちろんです。アズサさんのおこぼれをもらうつもりはありません」
ヒロシがきっとエルリックさんを睨んだ。
「交渉成立です。ポーション十本は小料理屋に持って行けば良いのでしょうか?」
「そうしてもらえると有り難いです。まだ行くところがあるので」
エルリックが去っていった。
「アズサさん、エルリックは策士だ。何を考えているのか予想もつかない。気をつけた方が良い」
「凡人の私たちじゃあ、敵わないよ。考えるだけ無駄だよ。おいちゃんのところに行きたいの。ヒロシ案内して」
「了解です」




