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第1回

【読者の皆様へ/作品に関する注釈】

※この物語はフィクションです。登場する人物、団体、名称、グループ、楽曲等はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

※作中には、実際のアイドル界やテレビ業界の構造、エンタメ文化等の要素をモデル・モチーフにした表現が含まれますが、特定の個人や団体を批判・中傷する意図はございません。

※物語の性質上、業界の裏側やスキャンダル、理不尽な逆風といったビターな描写や、キャラクターの葛藤・挫折が含まれる場合があります。

※エンターテインメントとしての演出やフィクションとしての脚色を行っております。あらかじめご了承ください。

※本作は、Webメディア「note」にも同時掲載しております(著者本人による投稿です)。

 「こんな案ではダメだ。」

 会議室では数名の大人たちが会議を行っている。

 その中で、鶴の一声で案を没にしたのは、敏腕アイドルプロデューサー神谷康史だった。

 神谷康史はこれまでAYB32や常盤川36などの国民的アイドルグループを手掛け、世に出してきた。そんな神谷が今、大人気の常盤川36公式ライバルグループとしてグループのコンセプト会議に参加していた。

 「私は青春を前面に押し出す、衣装が制服だけのアイドルグループがこれまでありそうでなくていいと思ったのですが……。」

 近い未来、新グループが誕生する大手音楽事務所AuraX(オーラックス)の男性幹部社員が答えた。

 「制服を衣装に前面に出したグループはたくさんある。第一、アイドルは卒業するまでアイドルを続けるのだ。今や、アイドルと言っても長ければ30代まで続ける子もいる。そんな中で青春をモチーフにし続けるのは逆に酷であり、失礼だ。」

 会議室は再び静けさを帯びた。

 「今をときめく常盤川36の人気は確かにうなぎ登りだ。しかし、アイドルというのは流行り廃れが激しいのが現実だ。それはアイドルグループに限ったことではなく、業界としてもアイドルが流行る時代もあればグラビアアイドルが流行る時代もある。その繰り返しだ。そんな世の中で常盤川36に足りないのは危機感だ。」

 神谷は力強く続ける。

 「常盤川36に危機感を持たせるためにもAuraX主導で新グループを、しかもライバルとなるグループを作る必要があるのだ。」

 「そういわれましても……。今や、アイドルグループは地上、地下、そして地方を合わせるとごまんといます。今から新たなコンセプトと言われても案は出し尽くされていると思いますが。」

 AuraXの幹部社員は大企業病なのかいつも弱腰だ。

 「青春……学園……制服……。」

 神谷は声に出しつつ、ホワイトボードに関連図を書き始めた。彼が突飛な案を出すときの常套句だ。

 「学園……アイドル……卒業……。」

 彼はそう言うと水性マジックペンを机にバンっと置き、おもむろに語りだした。

 「AYB32が今、人気が低迷してきている原因って何か分かるか?」

 「え?何でですか?」

 「世代交代の失敗だよ。人気があった時代は名前を聞かない日がないくらいだっただろ?でも、その時の人気メンバーは皆、同年代で卒業のタイミングが重なった。ドミノ式に毎年何人も人気メンバーが卒業していくとどうなるかというと、ライトに応援しているファンはその人気メンバーが去れば、ファンを辞めてしまう。すると、おのずとファンの数は減っていきブームは去ってしまうのだよ。今でも応援してくれている人はたくさんいるけど、とてもじゃないけど最盛期には及ばない。こういう図式さ。」

 神谷はとうとうと語った。

 「だからこそ大人数のアイドルグループには世代交代が重要なんだ。こういっちゃ、その子に悪いが人気があるメンバーほど早く辞めてしまうということがある。そうなると、残されたメンバーで人件費が圧迫しグループは消滅してしまう。アイドル運営の難しいところだよ。」

 「そうですよね。それを弊社は新たに作りだそうっていうのですからね。」

 「成功するためには世代交代が必要だと僕は思う。それも強制的なね。」

 「今の時代、解雇は難しいですよ。一般社会でも雇用は守られていますから。」

 「そうだよなあ……。」

 神谷は関連図に目を落とし、再び続けた。

 「アイドル……卒業……契約満了……。」

 その時、神谷は雷が落ちたような衝撃を受けた。

 「そうだ。期間限定のアイドルなんてどうだろうか?」

 「期間限定ってコンビニのスイーツみたいな……ですか?」

 会議室には笑いがこぼれた。

 「そうだよ!中学校や高校みたいに10人くらい始めは加入させて、2年次、3年次と進級させる。勿論、毎年新メンバーを10人くらい加入させてね。」

 「学校ですか!?」

 「そして、3年次の春になると卒業式を行うんだ。そこで3年目になる彼女たちはアイドルを卒業して新たな道へ進む。アイドルは3年目が一番輝いていると僕は思う。だからこそ、これまではグループとして育てて、芸能界や社会へ羽ばたかせるんだ。」

 「そんなこと出来ますかね?法令に引っかからなければ出来そうですが……。」

 やはり大企業病の社員たちだ。コンプライアンスばかり気にしている。

 「実際、年齢に達すれば人気の有無に関わらず卒業させるグループもあるんだ。そう考えると、そのグループよりも保守的だろ?」

 「噂には聞きますが……。」

 「とにかく会社の法務部や顧問弁護士にリーガルチェックをお願いして、前向きに考えてみてよ。」

 「はい……。分かりました。」

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