第一話-1 第4地区
やぁやぁ皆さんのことが大好きラッコだよ。
「今回は写真投稿サイトに撮影した時に不審人物が映る」という話がラッコの元に来たよ。
怖いねぇ、でも気になるねぇ?
それじゃあみんなも一緒にどんな話か見て行こうか。
第4地区、トラムの走る地下の出入口階段から珍しく歩く音が聞こえる。苔むした雨よけで薄暗い影になって映るが、その人物は黒い色のベレー帽、赤淵眼鏡に透き通るような白い肌、袖の長い白のセーターとベージュのサロペットと厚手のショルダーバッグ、最後に黒のチェルシーブーツの順に姿を見せる。
出た先は窪地にで人物が出た後方左右の三方が白い波型のブロックで固定された崖になっており、残る一方には分厚い金属製の黒く閉ざされた鉄扉の検問所で待ち構えている。
旧帝国陸軍の様な出立ちの男たちが相当に暇なのか、人物に気づくまで木箱に座りタバコを吹かし、小銃も雑に近くの折り畳みイスの上に置きながら雑談をしていた。
彼らの一人が寄りかかるソメイヨシノはまだ青く芽吹くタイミングを見計らっている。
見慣れない姿に気がつくとジロジロと物珍しそうに見つめ、何かを理解したように木箱の上の銃を担ぎ直したり、タバコを光沢のない暗いブーツでもみ消し、帽子のホコリを払ってを被りなおし、前を開いていた者は締めて襟元を正す。着替えが終わった者から木箱を端に寄せる。
まだましな格好をしていたソメイヨシノを背をしていた彼が負い紐を引っ張りあげて銃を担ぎ直し二等隊員である錦 博丸が人物の前に急ぎ足で躍り出た。
錦が前にたどり着くのに合わせてショルダーバッグから身分証明書を取り出す。佐藤 命、写真と比較し眼鏡を外し、帽子も外してロングから髪型も今より少し短く肩にのる程度のセミロングヘア以外の違いはないことを確認した。
錦は何かに違和感を覚えるも「なにかありましたか?」佐藤の小鳥のように小首を傾げる動作に彼の動悸が早くなるのを感じた。
傾けた際にわずかに捲れたセーターからチラリと見えた白い首が無防備にさらされた。女を知らない彼には十分即効性の毒だ。
「命と書いてメイと読むのは美しい名前だなと思いましてはははっ」
錦は慌てて首元から目を身分証に戻してから慌てて佐藤に返しながら取り繕う。
「ありがとう、母が付けてくれたの」と横目で端ににこやかに笑顔を振り撒かれる。
彼自身があまり長身ではないが自分と目線が変わらないため妙にくっきりと顔が目に映り直視できない。
なんせここを通過するのは安く済ませたい配送会社か出張に交通費の出なかった修繕作業員と男・男・男たまに来てもこちらに住む両親に挨拶に来た男連れだけでこんな美人が一人で来るのはあまりにも想定外だ。
「こちらこそ、お嬢さん、ようこそ第4地区へ」と思わずそんな言葉が口から洩れる。耳まで熱を持っており佐藤に気づかれるのではないかと恥ずかしさを隠す様には腕を真っすぐ上げる。
彼の背丈の倍はありそうな門がエアーの抜けるような音の後にゆっくりと横にスライドした。
門前では後ろで片付けたていた彼らは今さら背筋をピッと伸ばして門衛らしさをアピールする。ただそれがかえって服のシワを目立たせていることに彼らは気がつかない。
佐藤は少し進んでから振り返り「隊員さんのお名前は?」と問う。
「境界陸路二番警備隊二等隊員 錦 博丸であります!」
敬礼をしながら声高らかにそう返した。
佐藤はそれに対して「錦君またね」と手を軽く振るうと門の中に入りまたエアーの抜ける音共に黒い門は閉鎖された。
門の先も両端はブロックでせき止められて谷のような形になっていた。
シンプルに町へ続くであろう路面電車の停留所と暖簾の吊るされたザ・定食屋という風情の食事処が一件、隊員たちの待機場所であろう三階建ての建物だけがある。
路面電車の停留所で時刻を確認し、まだ時間があるし腹の虫も先ほどから鳴くため食事処に入ることにした。障子戸を模した自動扉が開き、中にいるのは検問所の隊員たちが各々談笑をしていたり通信端末で動画を見ているものもいたが佐藤が入ると一瞬目線がこちらに集中する。
佐藤は入り口横で開いている四人掛けのテーブル席に座る。どうやらお冷はセルフなのかひっくり返されたコップと金属製のピッチャーが置かれている。
水を継ぎながらラミネートがはがれかけたメニュー表を見て思案する。その間も物珍しそうに彼らの中の数名が眺めているが佐藤は自身の財布の中を天秤にあうものを探した。
結局は一番安いかけうどんの次に安いたぬきうどんを注文することにし通信端末を起動してスワイプし注文をする。
「あの」
短く丁寧に刈り上げられた髪と初々しい表情のだんごっ鼻の隊員が声をかけてきた。
それに続くように少し肥満体の少年と色黒のエラの張った顔立ちの少年もやってきた。右腕の横の階級章はそれぞれ二本線である。先ほど見た錦と同じ二等隊員であるようだ。
「何か御用ですか」
佐藤は角に追い込まれ彼ら三人により将棋の盤面の穴熊状態だ。
「どこから来たんですか?」
「こんな金持ちの道楽とデジタルデトックス患者しかいないところに何の用ですか!?」
「お前ら人にもの尋ねるなら自己紹介しろよな、俺は藤堂 一でこっちのノンデリデブが原田 浩二、で地味なのが斎藤 三蔵」
「佐藤 命です。第5地区からこちらには人を尋ねに来ました」
「誰がノンデリデブだ!」と原田が藤堂の脇腹に貫手を入れてちょっとしたじゃれ合いが始まる。
皆それを見ているがいつものことだと言わんばかりに周りは無視をしている。
「どちらに行かれるんですか?」
残った斎藤から質問をされる。
「白銀貸本屋です」
「ほう、どういった」
「まるで尋問されてるみたい」とフフッ佐藤が笑うと「これは失敬」と頭をかきながら照れる。
「白銀貸本屋だと三番街の大通りで降りて坂を上った曲がり角にありますね」
『お料理が出来上がりましたわぁ』とハムボ女性の声と共には店の奥から配膳用の円筒形のロボットが少しノイズまじりの音楽を流しながらやってくる。
慣れているのか配膳経路の障害になりそうな隊員の脛をロボットアームで叩いたりしながら無理やり通過する。特に通路でじゃれ合っていた藤堂と原田には何発も叩かれる。
「やめろ!ポンコツ!」
「いい加減にロボット三原則を守れ!」
「早くパッチをダウンロードしろ!」
と叩かれた人々から悲鳴が上がるがそれを無視して佐藤の席まで来ると中からロボットがアームを伸ばして目の前にアツアツのたぬきうどんを届けてくれる。
そしてアームが机中央まで引いた後に止まると佐藤の対面に座る斎藤の鳩尾に一撃を加える。斎藤は短い悲鳴をあげて「自分なんかしました・・?」とわずかに声を漏らして腹を抱える。
それを気にせず佐藤は湯気と出汁の香りが鼻をくすぐり腹の虫がまた鳴いた。
『ご賞味くださいまし!』
そう言うと配膳ロボットはまた店の奥へと去って行った。
「いただきます」
髪が汁につからないようにをかき上げながらすする。うどんの熱で熱いのかピンクの唇と頬が紅潮する。そのまますすり終えるとそのまま器を持つと豪快に飲み干す。その豪快な食べっぷりを参院は観察する。
ふぅと一息をつきしてお冷を飲み干す。汗をハンカチで拭い終えると会計の為に通信端末の操作を起動しようとする。
「ここは俺が奢ります」
「いや、俺が出す!」
「お前らさぁ」
痛む腹を抱えながら斎藤が釘を刺そうとする。
「あの自分で出すので大丈夫です」
彼らが再度4人掛けの椅子で穴熊を作り出られずにいるとカウンター席の方からバンッと強めに叩くと「俺がもう済ませた」と少しドスの利いた声が聞こえる。
佐藤の通信端末には支払い完了の通知が届く。
カウンターテーブルの人物が振り向いたことで斎藤たちは席を立って彼の座る横に整列させられる。
少し強面で無精ひげのある男が右腕の階級章には線ではなく。赤い正三角形の図形が刻まれている。
身長は高く並んだ隊員たちよりも頭半分は高い。
「あのごちそうさまでした」
佐藤は彼の前に立つと帽子を押さえながら深々と一礼をする。
「こちらこそだよお嬢さん、こっちも部下が迷惑をかけてしまった迷惑料だと思ってくれ」
「いえいえ、通信端末が町中だと使えないと聞いたので、場所を教えていただきました」
チラリと並んだ彼らに佐藤は笑顔に向ける。
「お役に立てていて光栄だ。俺の名前は鴨 水仙、一応伍長でこいつらの上司をやらせてもらってる」
親指を立てて3人を指す。
「中で困りごとあったら遠慮なくこいつらでも俺にでも声をかけてくれ、保安警備隊の奴らよりは役に立つ自信があるからな」
「分かりました」
ペコリと再度一礼して店から立ち去るのを見送る。
扉が閉まるのを確認すると鴨が右手のひらを上下させるとそれを合図に緊張の糸が切れたように彼らは思い思いしゃべりだした。
「サトウ・メイさんかぁ、可愛かったなぁ」
「いつまでこっちにいるんだろう?」
「今度、お店に行ったらまだいるかな」
「へっ、お前らにあんな上玉落とせるとは思えないな」
タバコを咥えながら火をつけて吐き出すと彼は最後に「俺以外はな」と付け加える。
『当店は禁煙・嫌煙・火気厳禁ですわぁ』
奥から配膳用ロボットが消火スプレーを持ってやってきた。
まずは読んでいただきありがとうございます。
投稿までにあーでもねぇこうでもねぇと思案してAIと駄弁って、書き出したら書き出したで配膳ロボットが人類に反抗をし始めて何が起きてるのか分かってない作者です。
まだ1話目の4分の一しか消化できてないことに頭を抱えています。
しかも重要なファンタジー要素の世界観は第二話にならないと分からないというグダグダ具合です。
そんな内容でも今後読み続けて頂けると非常に非常にありがたいです。
※錦君のは一部作者の実体験を元にしてます。




