悪徳領主同士の話し合い
アサマ島の港街から、高台にある。屋敷まではほぼ一本道である。
ドンオール公爵は貴賓である。家令のシドも貴族と聞いていたので、わざわざ特注品で作った馬車を用意して、乗っていただいての移動であった。
ドンオール「噂に聞いていたが、まさかこんな近くで大山羊の牽く馬車に乗れるとはな」
アーペル王国ではまず見ない。立派な大山羊の牽く馬車の乗り心地は素晴らしい物だった。
ドンオール「ほ~う殆ど揺れぬな、なるほどの~。道は殆ど舗装されておるな」
ラルク「はい正解でごさいます。この島を開拓するに当り問題になったのが、非常に硬い岩盤層でした。しかしアサマ子爵様の生まれた国々では、そうした岩盤を砕く道具がございます。それと舗装技術を取り入れて作ったのが、この大きな一本道でごさいます」
ドンオール「ほほ~う、そのような道具がの~」
ラルク「はい、元は鉱山で作られた物だったそうです。硬い岩盤を砕く為に作られた道具だとか、後程そうした道具の展示もございますので、ご説明させて頂きます」
ドンオール「さようか、それでは頼むとする」
ラルク「承りました」
先ほどまで、文句を言っていたとは同一人物とは思えない素晴らしい受け答えであった。
そうラルクは非常に外面が良く、カッコつけたがりであった。
外見も整ってるので、普段のあれが無ければ、非常に優秀であった。
因みに妻は、同じ従者のニーナである。
シド「あの。ラルクさんはアサマ子爵様の元に仕えて何年間になるのですか?」
ラルク「正確には、ベラース王国に行かれる前となりますので、間もなく五年になりますね」
ドンオール「ほほ~う、小僧は人を見る才に長けておるとはおもったが、見事に化けて見せておるな」
流石は公爵閣下である。ラルクの擬態を見抜いたようだ。
ニヤリとラルクは笑うと。
ラルク「流石はだぜじいさん、お気楽子爵の言ってた通り見抜かれたか~。これでも自信あったんだぜ?」
シド「なっ、なっ、なあ~!」
唖然と惚けるシドを放置して、
ドンオール「ふむふむ、面白いな!、小僧の所の家令で無ければ、家で勧誘したい所だ、ガハハハハハ!?」
いきなり高笑いするドンオール公爵に、ラルクは苦笑しただけだが、
シドは茫然自失である。
ラルク「まあ~うちは、変わり者ばかりだぜ、
代わりに有能なのは間違いないがな~、俺みたいな孤児を家令にするとか、あの子爵様の頭は可笑しい、せいぜい巻き込まれないようにしろよ?」
ドンオール「ガハハハハハ!、そいつは無理な相談じゃな、もうズブズブであるからの~」
あちゃ~って、頭を抱えたラルクは、諦めた顔で、
シドを可哀想な目で見ると。ポンポン肩を叩いて。
ラルク「あんたも苦労人ポイ顔してるぜ、うちの筆頭とタメ張れるぞ~、
まあ~じいさんの様子見たら分かるわ~。子爵様に関わるなら覚悟しとけよ。あっ、相談するなよ俺には、無理だ諦めろ!、俺から言えるのはそれだけだ」
ドンオール「ぶっふ。ガハハハハハ、諦めろとか、貴族家に仕える者から初めて聞いたわい。ガハハハハハ!?」
ラルク「実に楽しそうで、何よりだな」
アマリリス「着きやがりました。とっとと降りやがれ、です」
ラルク「ほれ、降りろよ、お気楽子爵様のおでましだぜ」
わんわんわんわん、キャンキャンキャンキャン♪
シド「・・・・・・」
シドがさきに降りると、美しい黄金の毛並みの大きな狼が二頭を従えた。
見覚えのあるアサマ子爵様がにこやかな笑みで出迎えてくれた。
ドンオール「ほ~う、見事なゴールドウルフではないか」
§§§×§§§
キイチ「でしょ、うちの子は家族思いの良い子です~。ほなら、ようこそドンオール公爵閣下、あばら家へ」
ニヤリ、不敵に笑うキイチに、ドンオール公爵もニヤリと悪どい笑みを浮かべていた。
これではタヌキのばかしあいである。
ドンオール「実に貧相な村であるな~、アサマ子爵よ国王陛下より御恩情である」
キイチ「はっ、温かくも官僚の皆さまへ僅かながら手土産を用意致しましたが、非常に愚かなことで」
ドンオール「誠にな~」
二人は顔を合わせ笑っていた。
キイチ「つきましては、この度公爵閣下の御恩情を賜りたくお願いの義が御座います」
ドンオール「ほほ~、この我にお願いとは、いかなる物よ?」
キイチ「はっ、卑しくも、私は成り上がり者でごさいますゆえに、偉大なる公爵閣下の右腕様にしばしこの地にて、監督の任を伏してお願い致します」
ドンオール「うむ、見事な忠義よ、そこまで頼むのであれば良かろう我が右腕であるシドを貸そう」
キイチ「はっ、ははぁ~、あり難き幸せです~、こんなもんかな?」
ドンオール「で、あろうよ」
キイチ「マーク、書類は出来たか?」
陰気そうな青年が、コクコク頷き、二枚の証書を用意していた。
ドンオール「ほほ~、あの短時間で用意したか」
キイチ「優秀でっしゃろ?、でも人見知りです~、僕もようやくでした」
ドンオール「なるほどの~。小僧には小僧なりの苦労があるか」
キイチ「さよです~。あっ、手土産は公爵様がお持ち帰りを。売れ残りの霊薬で申し訳なく思ってます~」
ドンオール「仕方あるまい、このような貧相な村ではポーションとて高価でえろう?」
キイチ「いや~面目ない」
二人はまたしても笑っていた。
ごくりシドは粟立つ恐怖と供に、全てを飲み込んでいた。
貴族になるとは、こうした清濁を飲み込んだ数だけ、ふてぶてしく生きて行く物だから。




