099 鴨ネギ、カモンでした。
あー。
良いお小遣い稼ぎになったわ。
そして、この機会に真珠の価値を釣り上げて販売独占している海洋諸国に、喧嘩売る気満々な商業ギルド本拠地自治区を、陰ながら応援致します。
商業ギルド長さんから、商業ギルド会員証を貰い、商人の仲間入りした私です。
年会費は、きちんと規定料金支払いました。
本来なら、店舗を持たない身なので、行商人又は露店商扱いになるのだけど、商業ギルドに貢献したとして特別扱いになり、VIP会員になったとさ。
私、本職細工師だしね。
似非とか言われるけど、細工師なんですわ。
「あら、精霊魔法師ではありませんでした?」
「私は、枢機卿猊下クラスの治癒師だとも、聞いておりますが」
冒険者ギルドのお姉様には、冒険者ギルドに登録した職業が本職だとおもわれ。
商業ギルド長さんには、ナイルさんを治療した経緯を把握されていたりするが。
本職は、細工師なんですわ。
わざとらしい狸さん達を黙らす為、溜め込んでいた細工物を披露しましたら、狸親父にまたもや買い取りしたいと提案された。
おのれ、黙らすつもりが、化かされたか。
装飾品を扱う店舗の買い取り価格を知らないが、鑑定結果の価格の三割増しな金額の提案だったので、十数点買い取られていった。
しかも、希少な宝石類を配した装飾品ばかりだったので、ギルド長さんの目利きは確かである。
此方の世界には、カラーサファイアやダイヤモンドといった宝石は、あまり産出されない様だ。
けれども、ある処にはあり、珍しい希少な宝石として、教会や神殿等に奉納されるのが常らしい。
ギルド長さんも、ある教会から依頼されて希少な宝石を配した装飾品を探していて、渡りに船だったか。
うむ。
これは、人外さん方々に、奉納した方が良さげかな。
折をみて、作製してみよう。
奉納するに相応しいのは、精霊石とか魔晶石とかだと思っていた。
まあ、まだ常識知らずな私である。
アンナマリーナさん辺りにでも、探りを入れるかな。
いや、あの人は中身が彼でもあるから、シェライラの方が詳しいかな。
「ああ、そうだ。忘れておりました。時に、ミーア様。先日の祝勝会で披露された虹色真珠ですが。近々、件の海洋諸国から拒否権無しの召還状及び、窃盗容疑による身柄引き渡しを要求する為に、あちらのある国の王族が騎士団を引き連れて、女王国を訪れる可能性が高いそうです」
「エルネスト枢機卿猊下に、アルマニア枢機卿猊下麾下の諜報員からの報告として、連絡が来ております」
はあ?
何だ、それ。
人外さんの愛弟子さん達が暴露するには、何でも海洋諸国が奉る海神の女神像に、虹に輝くアイテムを捧げ持つ出で立ちで建立されていたのが、建国王の日記にあった。
しかし、いつからかは定かではないが、虹に輝くアイテムが女神像の両手から無くなっているのが判明している。
まだ、女王国が建国される前の話で、私が虹色真珠を所持していても、そこには結びつかなかったので、虹色真珠目当てに海洋諸国に打診した貴族の依頼があり、その虹色真珠こそが盗まれたアイテムだと主張しているんだって。
盗人猛々しいとは、この事か。
あのさぁ、真珠ってのは、鉱石と違い硬度も弱く酸化しやすいし、熱にも弱い、取り扱い注意満点なんだよね。
人の汗による変色だってする。
だからさ、南国の海洋諸国で真珠が長持ちする訳がない。
そりゃあね、適切なお手入れしたら、長持ちするわさ。
現代日本にある加工すれば、百年は持つよ。
かといって、此方の世界にはその技術ないでしょ。
虹に輝くアイテムが虹色真珠かはしらないけど、建国当初から数百年以上経過してたら、真珠だったらアウト。
消失していて当然だ。
「その女神像は、屋外に設置されてます? それとも、屋内です?」
「実物を見た訳ではないので、なんとも言えませんが。女神像なら、海洋諸国の至る処に、建ってますね」
「あー、そうか。海洋諸国だから、海の女神を奉るのは当たり前だしね。でもね、屋内だろうと屋外だろうとしても、真珠ってそれほど長持ちしないのは、真珠を扱う国が知らない訳ないでしょうが」
「まあ、そうですわね。私も研鑽の為に、アルマニア枢機卿猊下の元で一時側付きをしておりましたから、お話しには聞いております。真珠は、鉱石よりも寿命の短い石だとも、学びました」
「詳細はヒューズにお聞きしたら良いかと思います。この度の暴挙、アルマニア枢機卿猊下は後手に回ってしまわれております」
「それは、海洋諸国が教区の枢機卿を頼らず、他の教区の枢機卿猊下に根回ししないで、暴れますと言ってますね」
海洋諸国は、女神像から盗まれたとの大義名分で、他国の貴族である私を賊扱いしていて、身柄を要求している。
うちの子達が言うには、枢機卿と神聖国の役割りは、中立であり調停者の意味あいが強いと聞いた。
中でも、人外さんの仮の姿であるエルネスト枢機卿猊下は、法王に次いで第二の位置にいる。
そんなエルネスト枢機卿猊下は、荒れ地に建国した新興国を庇護せんと権力と威光を強権発動して、女王国近隣諸国を列強の大国から守護してきた実績がある。
ああ、法王と枢機卿は寿命が短い人族ではない種族が就任するのが、神々が定めた理なんだって。
それから、権力とか損得勘定で他者に阿り、一部の種族を優遇して支配したりとか、選民意識の塊の様な特権階級至上主義といった感情を持ち得ない種族であるのが条件だったりする。
故に、彼等は神人種と呼ばれているそうな。
まあ、実際は殆どの枢機卿さんは、人外さんみたいな神様の仮の姿らしいのだから、神様に等しいのも当然だ。
そして、子供と認識された教区の種族に敵対する輩には、大変厳しい鉄槌と執念深い説法、別名お仕置きが待ち受けている。
しかも、惜しみ無く振るうから、教区の枢機卿猊下は慕われる。
また、鉄槌を降された側の枢機卿猊下も、非が自分達にあれば身を呈して庇い、身代わりに鉄槌を受けたりもするから、こちらも慕われる一方。
ただし、庇護の対象外になる案件もあり、教区の枢機卿猊下から見放されて、国が潰えていたりもする。
エルネスト枢機卿猊下はかなりアグレッシブに活動し、弱者を守護しては支援して慕われる派で、今まで特定の人物を特別扱いした事はなかった。
が、私と言う、履歴が定かではない身分不詳の天翅族のハーフ登場に、愛弟子達は最初は枢機卿猊下の通達に驚愕し、訝しんだ。
おまけに、簡単に破門を突きつけるというから、私を要危険人物指定されていた。
んで、お姉様が最初に接触し、私を観察と監視して、動向を探っていた。
そしたら、獣人種の救世主である白夜の星であると、冒険者ギルド職員の同僚は言うではないか。
更に、深く探ると、六柱の大精霊を守護者に持ちながら、目指すのはスローライフ。
若干、道を外れて、ロンバルディアとの諍いに率先して巻き込まれ、終息させて、同盟を結ばせるわで、お姉様もスローライフは何処に行ったかと不思議がっていた。
気になりすぎて、到頭エルネスト枢機卿猊下本人に、問い合わせたらしい。
どうして、お気に入りになったのか、と。
返答は、ミーア君だからの一言。
なんじゃ、それ。
私でも、突っ込むわ。
まあ、内心はどうあれ、敵対的な行動したら、愛弟子達側が即切られるのは必定。
なら、友好的になるしかない。
テオドールなら信頼にたる人物を一目で見抜けるし、人物鑑定も余すとこなく詳細に鑑定出来る。
商業ギルド長でもあるし、商業ギルド本拠地自治区の評議会員でもあるから、化かしあいには適している。
駄目元で会わせてみたら、何だか意気投合してしまった。
また、別の教区の枢機卿猊下の小飼いの子供にも、騙すのは止めるよう忠告されていた。
どうやら、エルネスト枢機卿猊下だけでなく、他の教区の枢機卿猊下も関心を持たれているお気に入りさんだった。
お姉様にぶっちゃけられて、謝罪された。
いや、特段私に被害がないし、探られても仕方ないとは思うので水に流しますよ。
以降は、他の教区の枢機卿猊下からの情報は、逐一寄越してくれるそうです。
それで、海洋諸国からの案件をどう対処するか、身内判定されて相談の仲間入りです。
「アルマニア枢機卿猊下からは、女王国内で何らかの騒動を起こし、ミーア様や女王様から抗議を出されても庇わないときています。アルマニア枢機卿猊下も、たかが虹のアイテムぐらいで他国に喧嘩を売るお馬鹿さんはいらないとの由です」
うわお。
それ、完全に丸投げだね。
そんでもって、五体満足で帰国しなくてもオッケー、又は帰ってこなくても問題なしとのお墨付きが出ているのでは?
もしや、アルマニア枢機卿猊下が海の女神様ですかいな。
たかがアイテムと言い放つのは、そのアイテムに微塵も関心がないか、アイテム自体が捏造された話だったりするのかも。
こりゃあ、建国王の日記も眉唾物だったりして。
ああ、宗教には誇大解釈はつきものである証左が、此方にもあったわ。
「ガストーネ自治区の評議会は、虹色真珠が盗品であったとする海洋諸国に、何故この時期に公表して返還を促さずに、所有者を盗人扱いするのか、疑問視する書簡を提出しております。何しろ、海洋諸国が真珠を特産品として売り出して以降、一度として虹色真珠の話題はあがらず、またお披露目してはないですからね。海洋諸国からの回答は、無論ありません。ただ、盗まれたとの一点張りです。これでは、世論は動きません。が、ある大国が虹色真珠に目をつけて、横入りして入手しようと焚き付けている節があります」
「その大国の後ろ楯を得た事で、海洋諸国も女王国を見下し、威圧的に出れば事を成し遂げられると勘違いしているのかと」
「ふむ。海洋諸国は捨て駒で、本懐は大国かぁ。それとも……」
勇者召喚をやらかした国がとか、考えない訳にはいかない。
あの国には、人外さんが警戒しているあれな神が黒幕としている。
さすがに、人外さんも私が巻き込まれ召喚された人物だとは、お姉様達に打ち明けてなさそうだから、口には出さないでおいた。
お姉様達も、私が何を思案しているかは、聞いてはこなかった。
「良し。分かりました。招かざる客に対しては、臨機応変に無難に対処します。冒険者ギルドや商業ギルドは、我れ関せずのスタンスでお願いします」
「宜しいので?」
「はい、両ギルドに損害出したくはないんですよ。で、被害にあうのも、私だけでいいんです」
「それでは、余りにもミーア様を蔑ろにしているとエルネスト枢機卿猊下に、お叱りを受けます」
「ああ、その辺りは私が根回ししておきます。まあ、これでも六柱の大精霊を守護者にしてます。うちの子達に活躍して貰います。でないと、拗ねてしまうので」
うん。
これに、尽きる。
私に関する案件で、うちの子達が暗躍しない、報復しないとなると、盛大に拗ねますよ。
それと、エスカはロンバルディアの樹木の精霊であったネリエが消失してから、落ち込みが回復してないからね。
気分転換の、八つ当たりに持ってこいな鴨ネギが来て、私は喜んでおりますわ。
あー。
早く、来い来い鴨ネギよ。
待ち遠しいぞ。
私の意地の悪い笑顔に、お姉様達がどん引きしているのを見たのは、静観していたフィディルとファティマだけだった。
後日、二柱は言った。
あの日のマスターは、逆らったら何するか分からなかった、と。




