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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第三章  貴族裁判

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098 真珠の価値を知りました

 ああ、周囲が人外さん関係に囲われている気がしてならないや。

 過保護すぎやしないか?

 商業ギルドのお膝元の自治区にいなくてはならない評議会の一人が、他国の首都ではない街にギルド長として赴任している。

 問題が起きなかったのだろうか。

 それとも、宰相閣下達は知らないのかも。

 後者の方があり得るわ。


「ああ、レオーネ君が暴露してしまうから、バーシー伯に警戒されてしまったではないか」

「あら、後日判明するよりは、傷は浅いでしょうに」

「あー。僕は何も聞いてない、聞いてないです。申請も終わりましたので、少し街に出て旦那様達の日常品を買い出しに行きます」


 一般人を自称するヒューズ君が立ち上がった。

 あのさ、お姉様の暴露に立ち合ったのを鑑みると、君も同士なんじゃないかな?

 弟子とはいかないまでも、薫陶を受けていたりするんじゃない?

 冒険者ギルドでお姉様が君を見定める素振りを見せなかったのも、身内だったからでしょう?

 でないと、お姉様が私に近付く人間を調査なりして、忠告するのが常識だと思うな。

 幾ら、領主の信認があれど、弱点になりうる弱者を私から排除するのが妥当だからね。

 それをしないのを見ると、ヒューズ君は人外さん側の人材と見ていい。

 女史夫妻は私のスローライフに相応しい家畜を所持しているのが幸いして、裏で因果に関与して私の元に来るように仕向けた。


「じゃあ、勝手に帰りますので、心配ご無用です」


 しゅたっと、片手をあげてヒューズ君は逃走していった。

 まあね、私も君を試して何処でもフィディルの転移を使用した訳ですわ。

 そうしたら、彼は驚く事なく着いてきていたからね。

 前以て説明したとしても、実際に体験したら驚愕するか感嘆するか態度に表すのが、転移を体験したことがない普通の一般人である。

 のに、ヒューズ君は説明に納得して、平然としていたしね。

 あれ、転移に慣れてるわ、と側にいて理解できた。

 それに、一人で街に出るヒューズ君の心配を、お姉様もギルド長さんもしない。

 先の祝勝会で、私が稀少な品々を所持していると貴族が把握して、入手を示唆された御用商会が私の周囲を探っている情報は二人の耳に入ってない訳がない。

 私の領地であるランカには商業ギルドがないから、ライザスの商業ギルドにて私の情報を手に入れたいと考える商会の人間が、職員に探りを入れる為に見張っているだろうと思われる。

 そんな最中に、お姉様の護衛付きで私と見慣れない少年が現れれば、興味を引くのは確実だ。

 そして、ヒューズ君一人が街を彷徨けば、強引な手段に出て情報を引き出そうとする輩が出てくる。

 中には、力付くで痛め付けるのもやむ無しと考える阿呆がいてもおかしくはない。

 と、私でも思い付くのに、人外さんの愛弟子が気付かない訳もなく。

 ならば、ヒューズ君は自ら囮になった。

 そして、飄々とした少年と甘く見たら、手痛いしっぺ返しを出来る能力が彼にはある。

 まあ、多分だけど影でお姉様やギルド長の諜報員なり、裏仕事に就く人材が暗躍しているだろうが。

 ヒューズ君も、乗り気で囮役をかって出たみたいだし、無事に農園に帰ってくるだろうな。

 特大なお土産付きでさ。


「何だか、枢機卿さんの過保護が盛大すぎやしませんかね」

「まあ、分かってしまわれますよね。ですが、ヒューズに関してはエルネスト枢機卿猊下の手の者ではありませんわ」

「そうだね。彼は、アルマニア枢機卿猊下が引き取られた子の筈。彼の猊下は、南の海洋諸国が教区であるから、少し不思議だとは思いましたな」

「恐らく、エルネスト枢機卿猊下もアルマニア枢機卿猊下も、未来視の能力を有する子飼いの部下がおられましたからね。ミーア様が表に出された真珠目当ての騒動を予期して、根回しされたのかもしれません」


 成る程。

 女王国周辺の中央区が人外さんの仮の姿の枢機卿の教区で、南の海洋諸国ら辺をアルマニア枢機卿さんが教区としているのか。

 で、私が世に出してしまった虹色真珠を、南洋諸国も目をつけたと言ってる訳だね。


「虹色真珠だけではありませんよ。大粒の黒真珠や白真珠の歪みのない見事な丸真珠を、あれだけ豊富に使われた装飾品は、海洋諸国の王族すら持ち得ていません。海洋諸国のある島国には、真珠の養殖技術が発達してはおりますが、望んだ通りの真円の真珠は小粒なら出回り始めましたが、大粒は年に数粒しか流通しないですよ」

「その大粒の真珠を競って手に入れたがるのが大国の王族で、誰がどれだけ大粒の真珠を手に入れたか、国内外で揉めておりますわ」


 ガストーネ自治区の商会や冒険者ギルドで、真珠関連の入手依頼は増えていく一方であり、些か問題視されている案件らしい。

 お姉様とギルド長さんが愚痴っている。

 依頼内容の中には、養殖場から真珠を盗み出せと言わんばかりなのもあるのだとか。

 あはは。

 私、祝勝会で親しくした子爵令嬢に淡水真珠の養殖技術ぺらぺら喋った気がする。

 これ、やばめではないかな。

 お姉様に打ち明けたら、頭を抑えて呻かれた。


「ミーア様。何、気軽にお話されてしまいましたか。淡水真珠が流通したら、海洋諸国が絶対に黙ってはいませんよ」

「そうですわ。ああ、枢機卿猊下に報告しないと」

「いや、この場にヒューズがいないのが悔しい。彼なら、アルマニア枢機卿猊下に連絡手段があり、手を打てるのに」


 いきなり、お姉様とギルド長さんが用紙を取り出し慌ただしく書きなぐり、空に放る。

 と、用紙は鳥の姿に変わり、羽ばたいて建物を通過して消えていった。

 非常連絡手法だそうな。

 人外さんとヒューズ君に報告して、騒動に発展しないようにしてくれたのだろう。

 お詫びを出しておくのがよいかな。

 人外さんがくれた肩がけ鞄はアイテムボックスとして重宝するけど、いかんせん大きさがあり気軽に街歩きするにもちょっと邪魔になる。

 ので、細工師の本領発揮で、小型の腰に付けるポーチを付与しまくって肩がけ鞄と空間を繋げ、簡易アイテムボックスポーチを作成しました。

 まあ、空間属性の大精霊のフィディルも関わってくれての力業だけどね。

 でないと、神器な肩がけ鞄と繋げるのは難しかった。

 肩がけ鞄が神器だなんて、誰が分かるかっての。

 詳細知って、叫んだのは悪くないと思うな。

 人外さんめ。

 一体、幾つ私に神器を寄越すのか。

 謎だ。

 話が逸れた。

 んで、ポーチから先ずテーブル大の布を出す。

 そこへ、大小様々な真珠を出してみた。


「……あの? ミーア様?」

「これは、全て真珠でしょうか?」

「あー。他色の真珠って、まだ広まってないですか?」


 流石に虹色真珠は控えたが、単色の色違いの真珠を出したのだけど。

 日本には、ピンクの真珠と金真珠は出回っていたのは、我が母親が結婚する前は真珠専門店に勤めていたので、話には聞いていたけどな。

 まあ、紅色や蒼色や翠色や黄色や紫色は、ゲーム内だからあり得るのは分かる。

 人外さんは律儀に、ゲーム内で死蔵していたアイテムすらも再現して、私に渡してきていた。

 だから、色とりどりな真珠がアイテムボックスの肥やしになっておりましたわ。

 商業ギルドを牛耳るガストーネ自治区の評議員が目の前にいるので、試しに披露してみたら。

 先程のお姉様宜しく、頭を抱えてしまわれた。

 あー。

 やはり、稀少な品々か。

 それも、大粒だからな。

 一つでも売り払えば、一財産どころの騒ぎではないのが分かった。

 そんでもって、更に狙われる案件だわな。


「ふぅ。申し訳ありませんが、これらは見なかった事に致します。すぐに、仕舞われてくださいませ!」

「はーい。了解しました。なら、これは大丈夫ですかね」


 ギルド長さんに怒られて問題な真珠は即仕舞う。

 ならば、これは大丈夫だろうと、まあまあ大粒な白真珠と黒真珠を出す。


「まあ、出所を探られても平気なら、売り出しても構いませんが」

「んー、真円の真珠でなくても、形に添った装飾してあげれば、下位貴族でも手が出やすいと思うんですが」


 例えば、雫型ならイヤリングにして真珠をアピール出来るし、歪な形の真珠でも動物の型にしてとか、然り気無く他の色石を嵌めてみたりとか、細工しほうだいなんだけどなぁ。

 何気なく、細工した真珠も出してみたら、お姉様とギルド長さんに溜め息吐かれた。


「此方が化かす予定でしたが、我々が化かされましたな」

「ミーア様。まったく、貴女という方は、どれだけのびっくり箱なのでしょうか」

「どういう意味で?」

「海洋諸国では、歪な真珠は値が付きません。真珠ではないと認識しておりまして、廃棄されるのが常です。また、細工師として名が高い者達も、このように細工をしようとも考えつかないでしょう」


 真珠は真円を至上として、加工する意義を見いだすのは邪道扱いとの認識が世間に流布されている。

 以前に、廃棄される歪な真珠を加工して販売した細工師と商会があったものの、真珠は真円が売り物だとする海洋諸国の猛反発と潰しに敢えなく負けて、挑戦者はいなくなってしまった。

 それに、加工された真珠の細工物も、あまり王侯貴族に馴染めないシロモノだったのが災いして、流行らなかった。

 その為、真珠加工は廃れたのだという。

 しかし、私が提出した真珠の細工物は、充分に注目を集めるに叶った品々だと、ギルド長さんは商人として判断した。

 脳内では、廃棄される真珠をどうやって入手して、細工を施し、流通させるかシミュレーションしているな。

 ギルド長さんは売れる、それも生産国の海洋諸国に先んじて莫大な儲けを生み出すと計算しているだろう。

 王侯貴族が真珠は真円でないとと唾棄するなら、一般人相手に売り出したらいい。

 どうせ、廃棄される真珠なら仕入れ値は0に近い。

 細工師の腕にもよるが、加工賃を上乗せしても元が取れるだろう。

 まあ、真珠の加工に挑む細工師がいればの話だけどさ。

 私?

 道筋は立ててあげただけで、真珠で儲ける気は更々ないですけどね。

 私の目標は、目指せ農園スローライフである。

 延々と、真珠加工だけに専念する気はありません。


「ミーア様。此方と此方を是非買い取らせていただきます」


 ギルド長さんも、私に委託する気はなく、自分の所の職人を育てる様だね。

 雫型のイヤリングと動物型に細工した数点を、自腹で買い取る気概を見せた。

 かなりな、お値段になりました。

 大金貨数枚と引き換えに、真珠の細工物はギルド長さんの手に。

 ほくほく笑顔のギルド長さんです。

 お姉様?

 此方に、数粒等間隔に真珠を配置したネックレスがございます。

 いかかでしょうか。

 はい、毎度あり。

 商業ギルドで、数点お買い上げ頂けました。

 あれ?

 私、商業ギルドに加入しておりませんが、売買して宜しかったのでしょうか?

 はい。

 加入申請書類ですね。

 さくさく、記入しておきます。

 序でに、農園の申請もお願いします。

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