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女王⁉ 聖女⁉ いえ、ただの農業オタクな細工師です。  作者: 堀井 未咲
第一章 新しい未来へ

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041 謝罪が始りました

遅れました。すみません。


「ミーアさん。聖剣はロイドではなくエメリーを選んだのでしょうか」


 アルバレア家側は放心状態だけど、ナイルさんは蒼白な顔色をしているも子供達が心配なのか、聖剣をロイド君から奪った。

 箱にいれてしまえば安全だと理解して、蓋を手に持つ男性の元に近付き、聖剣を納めて蓋を無理矢理取り返して封をする。

 しまった。

 兄妹にはファティマの結界があるも、受け継がれてきた血を介した精霊の自己主張に負けてしまった。

 聖剣に宿る精霊に敵意がなかったのも、ファティマが油断した原因かな。

 微笑んでいるファティマだけど、内心は反省頻りで私に念話の謝罪がきた。

 ナイルさんに拒まれた聖剣の精霊は、幼な子のように主を求めていた。

 器物に宿る精霊は、何らかの使命を戴き、全うすることだけにこだわりがちになりやすい。

 主をみつけたら、一目散で押し掛けるわ、相手の事情を汲まないで躍起になる。

 ゲームでの仕様だったけど、こちらの世界でも変わりがない。

 根本的な精霊の本質が変わってはいないから、継続されているのか。

 でも、聖剣の精霊は、何処か悲壮な感情を見せていた。

 使命を全うするだけではない、主を得ようとする必死さがあるようだ。


「魔法適性を見れば、エメリーちゃんがナイルさんやロイド君より高いです。しかし、どうもそれだけでは無さそうに見えました。私は、ナイルさんが聖剣を受け継ぐのを、希望します」

「……。アルバレア家が、自分達親子を信用しなくてもでしょうか」


 だから、聖剣を擁護してみた。

 ナイルさんは兄妹を引き寄せて、庇っている。

 前領主に恩があったからといって、領主代行側の言動を許容する気がなくなったみたいだ。

 お父さんがアルバレア家を放逐された理由も知らないし、また自分達が後継者に選出されなければ捜索されなかった経緯もある。

 都合のよい駒にしか思えないのだろう。

 私も挑発に乗って、内情を探ろうとした責任がある。

 転生者がゲーム内の知り合いだったのも、悪かったかな。

 つい、気安く対応しようとしてしまった。

 反省しないと。


「聖剣と魔剣は、表裏一体です。所有者が善行を積むか、悪行を積むか、使い手次第でそう呼ばれてしまう。また、剣に宿る精霊は簡単に負の思念に囚われ易く、本質が歪んでしまう」

「ミーアさん?」

「嘗て、精霊を宿す剣を作成できた鍛冶師が嘆いていました。聖剣を作成しても、剣の効能だけを求めて、聖剣がなんたるものか理解しない使い手が増えてしまった。鍛冶師が鍛える剣も半数以上が、精霊が変質して封印するしかなくなりました。ナイルさんが受け継がなければ、アルバレア家の聖剣もこのまま不信感しかなくなる。精霊も分かってしまい、主を得ようとしてしまった。適性が高いエメリーちゃんに向かってしまったのも、エメリーちゃんが一番若く長い年月を側にいられると判断したからでしょう。孤独はつらい。そんな感情が伝わってきました」

「待て。アルバレア家の血を引く妹がいる。私は父の魔法適性を継いだが、妹の子には引き継がれるはずだ」


 男性が訝しんだ。

 わらび餅さん、あー。

 アンナマリーナさんだっけ。

 混乱してくるな。

 彼女? の魔法適性は僅かにあるけど、子供には受け継がれない。

 何故なら、聖剣の精霊がアルバレア家の本流がマーベル一家だと認識しているので、ナイルさんの血を引かないと認識されない。

 そうすると、魔法適性が薄れて失われていく。

 アンナマリーナさんはどうやら私同様に、ゲーム内の技能を保有している。

 火と闇の魔法適性を伸ばしているから、自然と雷適性は消えてしまうだろう。

 アルバレア家側に、ゲームのことを出さずに説明した。

 内容を理解したアルバレア家側は、放心していられなくなった。

 そりゃあ、そうだ。

 正統な後継者を排除しても、アルバレア家を維持できなくなるからなぁ。

 事実を隠しても、いずれは露呈する。

 聖剣が、誰も選ばない。

 そうなると、領民や国の不信感が芽生えてくる。

 調査されたら、マーベル一家が何故に排除されたのか白日の元に晒されて、対処しなかった処罰をされるだろう。


「どちらにしろ、ナイル=マーベル殿の後継者指名は、宰相閣下や女王陛下に奏上してある。断られると、私達が義理を欠いたと思われるだけだ。そして、英雄の家系は絶える。それだけは、してはならない」


 領主代行は正しく理解している。

 ナイルさんに歩み寄り、頭を下げた。


「申し訳ない。私達を不信に思おうが、アルバレア家を慕い支える領民には責はない。どうか、アルバレア家を継いで欲しい。我々はマーベル殿を支えない輩を連れて、去ることにする。無論、マーベル殿を補佐する人材は残し、貴殿が苦もなくアルバレア家を運営していけるように手筈は整えていく」

「……済まない。妹を案じるあまり、理性を無くした。不愉快にさせて、申し訳ない」

「兄上?」


 男性も代行に習って謝罪の意を表した。

 アンナマリーナさんが、何かに驚いた表情で男性を見つめた。

 こちらの、兄妹の仲はよろしくないのか?

 そんな空気を察した。


「父ちゃん、どうしよう」

「お父ちゃん、貴族になるの?」


 抱き寄せられているロイド君とエメリーちゃんは、困った様子でナイルさんの服を握りしめていた。

 出掛ける間際に簡単に説明したけど、二人にとっては貴族になることは理解の範疇になかった。

 お祖母さんの実家が貴族だとは知っていても、恩恵を受けてはいない農民の生活しか知らないからか、何処か他人事にしか思えていないとみた。

 ここにきて、聡いロイド君は考えを改めざるをえなくなった。

 エメリーちゃんも、不安が募ってきたようである。

 貴族になれば、お父さんと離されると思ったのかな。

 自分も貴族になるとは、微塵にも思っていないな。


「正直、唐突なお話に混乱しています。母の生家ならまだ分かるのですが、アルバレア家は高位の家名です。農民として生きてきた我々が継いでいいとは思えないのです。ただし、ミーアさんの説明によれば、我々が継ぐしかないのは理解しました。少し考えを纏めたく思います。時間をください」

「貴殿なら容易く容認する訳はないと、兄からの遺言状には記載されていた。アルバレア家側が、信頼を得るには時間を要するともあった。そこで、ミーア殿。貴殿の転移魔法は回数制限があったり、魔力を膨大に消費して身体を損ねる危険性は高いか、教えて貰いたい」


 領主代行は、ナイルさん達との信頼を築くには、私の協力が必要だと認識したのだろうな。

 ナイルさん達親子がアルバレア家に身を任せるのを躊躇うので、私が帰宅すれば親子も同道するからか。

 親子との付き合いは日は浅いが、信頼関係を結んでいるのはアルバレア家より先になる。

 ナイルさんも好んで、アルバレア家に残ろうとはしないだろうし。

 フォレスト領と農園とは距離が開きすぎている。

 かといって、手をこまねいて待つだけでは、信頼は結べない。

 私の転移魔法に、活路を見出だしたのは分かりやすい。

 転移魔法は、秘匿するはずだったけど。

 乗り込んできたのは、私だしね。

 アッシーとなるのは、仕方がない。

 肩を竦めた。


「転移魔法を広められて、不利益にならないのを誓約して貰うなら協力は吝かではないよ。だてに、六柱の守護者と契約はしてはいない」

「で、あれば。娘のアンナマリーナを、連絡役に就けたい。元を質せば、アンナマリーナとマーベル殿との婚姻にて、マーベル殿をアルバレア家に迎えて反論意見を封じる策だった。マーベル殿の子は想定外に幼い。アンナマリーナにはマーベル殿より子の信頼を得てから、婚姻をさせたい」


 ああ、この人はきちんとロイド君とエメリーちゃんに配慮してくれるんだ。

 新しい母親を無条件で受け入れがたいのを、理解していた。

 貴族には政略結婚は当たり前と、ナイルさんと娘に課す割りには優しさが透けて見える。

 領主代行の責務を果たす為の犠牲は、極力出さないようにしたいんだな。


「アンナマリーナ」

「はい、母上」

「お前が冷静を欠いたのは、ミーア殿と旧知であるからとみた。ならば、お前が話した待ち人は、彼女であると推測できる。お前の過去を話して、助力を得よ」

「母上、聞捨てなりません。アンナマリーナに、何の過去があると言うのです。妹は、アルバレア家とウィンチェスタ家の娘です……」

「馬鹿息子。お前と弟があからさまに妹を疎んじ、愚か者を演じてまでアンナマリーナを守ろうとしているのを止める時期がきた。数年の後に、災厄が起きるだろう。対抗する為には、団結が必要不可欠。マーベル殿をアルバレア家の当主に抱き、英雄の家系を示さなければならない。邪魔をする輩を排除せよ」

「……。了承致しました。ですが、疑問にはお答え戴きたい」

「女の秘密を暴こうとする無粋は止めよ。益々、アンナマリーナに嫌われるだけである。妹至上主義な、甘い兄には堪えよう」

「母上!」

「母上? 兄上?」


 何だか、私達ほったらかしで、家族会議が始まったけど。

 不仲と思いきや、ツンデレ兄だったか。

 表情こそ怒りを見せているが、耳が真っ赤だから真実みたいだ。

 アンナマリーナさんは、驚愕している。

 何らかの事情があり、孤立している妹の不遇を案じて、兄が嫌われ役を買ってでている。

 そんな風に、考えがつく。

 母親には見抜かれていたようである。

 放置していたのも、過去が関係している。

 まあ、アンナマリーナさんがわらび餅さんであるのを見るに、腐れ魔導師が関与しているのだと分かる。

 でもさ、わらび餅さんて男性だったのだけど。

 何で、アンナマリーナさんは女性なんだろ?

 人外さんが意図して、私に二年後にやらかす国を教えないでいるのも、分かるだろうか。

 はたまた、単に忘れているだけか。

 アンナマリーナさんも、人外さんの不手際で異性の身体になったのかな。

 疑問が解けるといいな。

 その前に、部屋に押し掛けて来ようとしている大人数の一団を、入室させていいかな。

 多分、もう一人の弟さんだと思うがな。

 敵意を感じて、フィディルが入室禁止にしているんだわ。

 魔法で無理矢理入室しようとしているから、あちらに被害が出そうになっている。

 怪我の責任を負わせられるのは、勘弁願いたい。

 そして、お子様ズ。

 殺る気になるのはいかん。

 やる気で留めておいて頂戴。

 頼むからね。


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