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100 対処を依頼されました

 冒険者ギルドのお姉様と商業ギルド長さんとの話し合いから数日は、平穏無難な日々が過ぎた。

 ライザスの町に繰り出したヒューズ君はしっかりお役目を果たし、私を探る輩の情報と愚かにも人質に取ろうとした集団を釣り上げて、自警団の牢屋にご案内したそうだ。

 あの日は私は先に帰宅してしまったけど、ヒューズ君は自身がテイムした世紀末覇者の愛馬みたいな立派な魔獣の馬に乗って農園に帰宅した。

 レオンから知らされて出迎えたら、えらくでっかい馬がいて驚いたものである。

 んで、女史夫妻や自分に必要な日常品をしこたま買い込んで、馬さんの背中にかなりボリュームある荷物を楽々運んできた。

 そういや、牛舎や鶏舎は準備しておいたけど、馬さんの寝起きする小屋がなかった。

 慌ててレオンに突貫で仮小屋をお願いしかけたら、牛舎と同じで良いと説明されて、ヒューズ君は荷物をおろした馬さんを牛舎に入れた。

 牛の魔獣も一瞥しただけで、受け入れていたのを見るに、引っ越し前もそうしていたのだと分かった。

 喧嘩しないか尋ねたら、そこは躾けてあると回答された。

 まあ、翌朝、牛さんは何事もなかったかの如く搾乳されていた。

 生の牛乳はお腹に優しくないからと煮沸殺菌と、生活魔法のクリーンによる二重の殺菌処理されて出された牛乳はとてもまろかやな味わいだった。

 うん。

 これは、充分にお金になります。

 商業ギルド長さん推薦の業者と、料理店に卸したら、たちまち注文が殺到したのも伊達ではない。

 我が家のブラウニー達も、料理の幅が広がると絶賛していた。

 私的には、チーズやヨーグルトに加工したら、更に売れるのではと内心思った。

 まあ、抜け目ない商業ギルド長さんもその辺りは目を付けていたが、いかんせん牛乳を卸すだけで供給が追い付かない状態である。

 個体数が増えない限りは、加工品にまで牛乳を回せないとお断りするしかなかった。

 又、卵の方も需要が増えつつあり、我が農園のブランド名がうなぎ登り中真っ盛りとなった。

 実は、商業ギルド長さんには、うちの農園の農作物を使った料理に精霊の祝福が付いた話は把握されている。

 しかし、料理人の料理スキルの差により、誰しもがうちの農作物で祝福効果がある料理を作れる訳でもないのが判明している。

 よって、特殊な祝福付き料理を提供する料理店を開店させようにも、確実に狙った効果が付く料理が出来上がる事がないので、こちらも頓挫した。

 100%祝福付き料理を提供できるのは、我が家のブラウニー達と私だけなので、料理店まで運営する気はさらさらあり得ない。

 諦めてくれるよう穏便なお断りをさせて貰った。

 肩を落とした商業ギルド長さんには、料理人のスキル向上を支援して育成した方が、道は早いのではとは助言しておいたけどね。

 そんな日々を送っていたら、我が家の番狼の灰色君から、他の森の番人がどうやら農園に近付き、私達を伺う素振りを見せている派と、強引に乗り込もうとしている派がいるとの情報がもたらされた。

 前者は温厚な種族で話し合いが可能であるらしいが、後者はベルゼ森の主権を主張して他の番人を配下にして宝珠を奪い、禁忌の場所に眠るとされる遺産の力で、森だけでなく女王国を足掛かりに、大陸の支配者を狙っている危険種族だとか。

 度々、ベルゼの森を監視しているレオンとエスカによれば、排除して番人の役目を取り上げたらいいと提案された。

 なので、農園に突貫攻撃される前に、討伐してみるかと思い立ち、ベルゼの森に足を運ぶ事にした。

 危険種族だと前以て判明しているので、心配性なうちの子達揃って、その種族の生息圏へと行ってみた。

 鬱蒼と生い茂る木々の中にポツンと建つ洋館があり、陽射しも差し込まない薄暗い雰囲気に種族が察しられた。

 これは、簡単にはいかないかと推測したら、案の定警告もなしに攻撃されましたとさ。


「マスターに、敵対するお馬鹿さんには容赦はしない」

「相手の力量を見誤り、反撃されるのは自業自得、因果応報だよ」

「……井の中の蛙さん。ご苦労様」


 私に攻撃が向かう以前に、エスカが樹木の権能で相手を捕縛すれば、ユリスは水攻めで相手を溺死寸前まで追い込むわ、セレナは問答無用で氷浸けにして凍死確実な瀕死に追いやるわ。

 阿鼻叫喚な出来事が、山積みになった。

 勿論、レオンは落とし穴に落とし、穴の中には槍襖が鎮座してある。

 殺る気満々だ。

 大人組は比較的、被害は最小限に押さえたが、こちらは温情によるモノではなく、反省を促し、二度と敵対しないように鼻っ柱を折りにいっている。

 二柱して、言葉攻めで心を折っていた。


「お願いしますぅ。どうか、我等に寛大なるご慈悲を……」


 襲撃してきた種族は、吸血種族さん達でした。

 彼等は魔族に分類される種族であるが、好戦的な性質ではないとの枢機卿さんの庇護にあり、絶滅危惧種族でもあった。

 それ故に、ベルゼの森の番人として役目を担う事で、人種族から迫害されない安住の地として、生き永らえてきた種族だった。


「何処をどう間違えて、好戦的になってしまったんだか」


 思わずぼやいたら、比較的軽傷の吸血種族さんが涙して答えを教えてくれた。

 何でも、ライザス側の住人や冒険者とは交流があり、人種族とも仲良く共存できる世の中には出来たが、反対側のランドルフ伯爵が見目麗しい吸血種族を愛玩ペットにと所望して、狩りの対象に位置付けられてしまっていた。

 対抗するうちに、禁忌の遺産で伯爵に一矢報いる筈が、長年の怨みから人種族自体を毛嫌いして吸血種族も迫害に乗り出したのがきっかけとなってしまった。

 そして、対話路線の老人より、好戦的な若者世代が増えて、人種族を支配下にすれば安泰だと短絡的な思考に同調者が種族の三分な二にまでなったのが原因らしい。


「申し訳ございません。番人の役目の意義を見失い、己れこそが支配者に相応しいと禁忌の力に取り憑かれた愚か者に、相応しき罰をお与えくださいませ」


 洋館に残る吸血種族さん達は、皆さん排他的で耽美な麗しい老齢されたおじ様方ばかりだったけど、なまじか他者の魔力を感知する能力が高かった為、私の桁外れな魔力と守護者達の見えない存在感に、自己防衛意識が募り、つい攻撃してしまったと平謝りされた。

 それから、自分達の種族の内情を勝手に話しだした。

 年経た方々は、番人の役目を正しく理解して禁忌の力には触れないように若者を教育していたけれども。

 ライザスの前領主もランドルフ伯爵も人格に難があり、種族差別意識が半端なく、迫害は苛烈を極めたそうだ。

 その為、反感感情が芽生えた若者が、敵対に否定的な長老方々を非難して、過激な思想による対抗意識が、彼等も又他の種族を排斥するに至ってしまった。

 吸血種族の若者は、封印された森の中央区に新しい郷を作り、外道魔導師の置き土産である歪んだ魔力を取り込み、吸血種族至上主義となり、他の種族は餌と見下しているとのこと。

 うん。

 彼等は後回しにして、好意的な他の種族に接触するかな。


「種族の諍いに、私を巻き込まないで欲しかったですが。私を巻き込むなら、敵対して矯正不可能な若者には、即消滅させるのが温情だと思ってください」


 種族間の諍いに、部外者を巻き込むなら、それぐらいは覚悟して欲しい。

 でないと、この先に今回みたいな仲裁役を求められるのは有り難くないからね。

 私は、彼の枢機卿さんみたいに揉め事解消には、向いてないのは自覚している。

 お人好しでもないし、揉め事は力技で解決してきたしさ。

 だって、高校の友人のストーカーは話を曲解して、訳の分からない自分ルールで動いては、問題を大事にするだけだったし。

 痴漢の類いは、被害者の外見や衣服が誘っているから、自分は悪くないと主張して、罪を認めようとはしない。

 どちらも、悪者は相手側との認識だけが、統一した自分勝手な言い分だった。

 だから、自衛官の父親直伝の裏を取り証拠を突きつけると、決まって最後は威圧的な恫喝と暴力に発展する。

 なので、最初の手が出されてから反撃して、過剰防衛に近い正当防衛で対処してきた。

 まあ、妹が苛めにあった時にやり過ぎて、正当防衛じゃないとこまでいってしまったが。

 概ね、相手側の父兄には感謝されたのが驚きだったけど。

 何でも、家庭内暴力も酷かったようで、自分が心折れるまでやり返されて、初めて痛みを知った温室育ちが原因だったらしい。

 主犯の子が女子なのに、反省の意味で丸坊主程のベリーベリーショートにして、謝罪してきた際に涙ながら叱られて漸く、自分が孤独感に苛まれていたのを告白して、妹の大親友になったのいい思い出である。

 父親曰く、今時の若い親は叱る事に躊躇い、子供と向き合って話す機会が無くなった弊害だとか。

 お金さえ与えておけばという感覚で、親も仕事か遊びに夢中になり、子育てを疎かにしているんだって。

 その点、紅林家は父親の職業が職業なので、転勤ばかりだったりとかで、友達が作りにくい環境であったけど。

 休日には、私と妹の趣味に付き合ってくれていた父親だった。

 だから、私と妹は父親を嫌ったりはしなかった。

 ちゃんと、自衛手段を仕込むのも忘れない人だった。

 そのかいあって、私は暴力沙汰に発展しそうな諍いには、よく駆り出されていたものである。

 よって、鉄拳制裁が主なので、安易なお話し合いでは済まなくなりそうなので、先に警告はしておく。

 長老さん方々も、種族の存続には若者の存在は不可欠であるから、素直に承諾は出来ないだろう。

 暫し、長老さん方々の内密な話を纏めて、最終的には紅の宝珠を差し出された。


「精霊様の加護厚き方のご意志に従います。ですが、なるべく改心した若者には、寛大なるご慈悲を賜りますようにお願い致したく存じます」


 まあ、そうくるよね。

 ならば、全滅は避けたげようか。

 あちらが、どうするかによってだけども。

 外道魔導師の残留思念の悪意に染まりきってないのがいたら、浄化だけで済ましますかね。

 あれ?

 でも、吸血種族に浄化魔法行使したら、聖魔法だから消滅してしまうかな?

 よし。

 最初に攻撃してきた吸血種族には悪いが、実験させて貰おう。

 それぐらいは、自分達で対処出来なかったツケは支払って貰っても、場違いではないと思う。

 では、向かうとしますかね。



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