夢の終わり
「わっ!」
私は飛び起きた。
あたりを見渡すとそこは公園で、私はベンチのうえだった。背中は汗びっしょりだった。なんだろう今まで長い夢を見ていたような気がする。
「あれ、何で私こんなところでお昼寝していたんだろう? なんだか面白い夢を見ていた気がする」
私はまだうまく働かない頭を働かせて思いだそうとする。
「うーんなんだったかな。ウサギのぬいぐるみを追っかけていったら不思議な世界にいった気がするわ……」
そして、さっきまで見ていた夢のことを思い出せるだけ思いだし、スマートフォンに記録していく。大雑把なあらすじをメモし終わると、私は駆け出していった。
「これを小説にしてみると面白いんじゃないかしら」
なんて不思議な冒険だったのかしら。
◆ ◆ ◆
「ねぇ、今回のお話はどうだったの?」
先ほどまでアリスがいたベンチに二人が座りながら話している。
「うーん、ちょっと思っていたのと違う形になっちゃったね」
二人といったが、正確には一人と一匹。一人は始まりでにアリスに膝枕をしていた女の人、もう一匹はアリスが追いかけていたウサギのぬいぐるみ。
「ちょっと感性が違う子を選んでみたのはまぁよかったけど、あまりにも外れすぎるのは困ったね」
ウサギのぬいぐるみが人参をポリポリかじりながらそう呟く。
「そうねぇ、もう少しハラハラドキドキするかと思ったけど、なかなか難しいものね」
女の人が頬杖をつきながら、アリスが走っていった方向をぼーっと眺めている。さっきまでアリスが体験していた冒険を思い出しながら考え事をしていた。
「それにしても、君はぬいぐるみ使いが荒いなぁ。どれだけ走ったと思ってるのさ。もう飲まなきゃやってらんないよ」
ウサギのぬいぐるみが人参ジュースを飲み始める。
「ごめんごめん、なるべくはじめは筋書き通りに進めたかったの。そのあとは完全にアドリブだったけどね」
女性は、ちょっと悪かったような顔をして、ウサギのぬいぐるみを見つめる。
「それにしても、こんな結末とはね。夢落ちって結構嫌う人が多いらしいけど大丈夫なの?」
うーん、とすこし考える
「まぁ、原作もそうだったし、この物語の締めとしては正しいのかもね。どんなに不思議な冒険をしていても最後は現実へ戻る。それが古来からのおきまりだしさ。あと」
「あと?」
「そこから持ち帰る物があれば、冒険としては上々でしょうそして、次へつながる物もね」
といって、どこから試験管を取り出す。その手には空の試験管が10本握られていた。
「あの子が持っていたのは11本。空になったのは10本。さて残りの1本はどこにあるのでしょうか」
「……え、ちょっと、それはまずいよ、向こうの世界の物をもちこむのはルール違反だよ?」
「あの子は最後にこれを使うこともできたけど、使わなかった。それは誇るべきなのかもね」
ウサギの言葉を無視して、女性は続ける。
「それに気づくのはいつになるのかな」
女性はにやりと笑う。
◆ ◆ ◆
色々な話が、日々生まれそして埋もれていく。
色々な人たちが、生まれる話を読みそして忘れていく。
不思議の国の物語も、多くあるだろう。
異世界なんて星の数ほどもある。
すばらしい話もあれば、数行で終わる話もある。
終わらない話もあれば、すばらしい終わり方を見せる話もある。
そうして、その話をよんだ人が、また新しい話を書く。
アリスもそうだろう。先ほどの冒険を小説にして誰かに読ませるのだろう。
そうして、いろんな人と一緒にその夢物語を楽しむのだろう。
たわいもないけど、楽しかった思い出とともに。
そうやって、いろんな人とつながり、物語は生み出される。
この小さな種が、花を付け、種をつけ。
他の人に広がっていく。
話を受け取り、新たな書き手へと芽吹くそのときまで
その手でそっとしまっておくれ。
思いでの中に、しおれる物語もあるかもしれない。
でもそれは必然なのかもしれない。
そして、それをみてまた懐かしむのだろう
とうにしおれてしまった花冠をみる度に。
そうして僕らは旅をする。
目指すは世界で一番面白い物語。
自分だけの物語を求めているんだ。




