裁判の始まり
アリスが裁判所についたときには多くの人や生き物がそろっていた。生き物と言ったのは、人に限らないからで、モンスターや獣人、動物、ぬいぐるみなど色々な生き物がそこにそろっていたよ。
そしてアリスは、『さいばんだい』と書かれたお立ち台に立たされる。これから裁判が始まろうとしていた。でも、準備に時間がかかっているのかなかなか始まらなかった。
拉致されるように連れてこられたアリスも、ちょっと余裕ができた。なので暇つぶしに周りを眺めてみた。アリスがこれだけ落ち着いているのはもう理不尽な出来事には慣れたからだよ。いままで色々あったからね。
法廷の内部はこんな感じ。正面の法壇の上に座っている人が裁判官。その位置には、熊のような生き物が座っている。灰色まだら模様で、まん丸い手を口元に当てて「でゅふふ」とゆがんだ笑みを浮かべている。変な生き物だね。
その前に座っている人が裁判所書記官、手が何本も生えている蜘蛛が担当のようだ。いくつもの手には鉛筆、シャーペン、ボールペン万年筆などが握られている。速記するために手はいくつもある方が望ましいのかな。
その左側に座っている人が検察官(ただし,法廷によっては右側に座っていることもあるらしい)。その位置には、貴族のような身なりのしっかりしている人たち、そして原告側には、ハーレムのあの人と、王冠をかぶった人がいた。
右側に座っている人が弁護人(ただし,法廷によっては左側に座っていることもあるらしい。そこには、なびく髪が特徴的な暑苦しそうなひと。瞳の奥に炎が見えている。どうやらアリスの弁護人のようだ。何かを発言したくてうずうずしているようだ。
アリスが裁判にくわしいのは、テレビの影響が強かったね。夏休みの暇な時間に刑事ドラマとかを見ていると詳しくなっていったのだ。
大体アリスが、周りの観察が終わったころ。
かんかん、という音が裁判所に響き渡る。
熊が木槌をかんかん、とならしている。
「静粛に~、静粛に~。さ~て、これから裁判を始めるよ~」
とても間延びした調子で裁判官が発言する。
「キミの名前はアリス。間違いないね」
「えっと、そうだけど……」
「間違いないね?」
「うん、間違いないわ」
熊はアリスに名前の確認を求めた。
裁判官は、被告人が起訴された被告人本人かどうかを確認しする必要があるよ。これを『人定質問』と呼ぶね。
「じゃぁ、アリス。宣誓書を読んで」
「宣誓書?」
アリスが尋ねると、小さな鼠が紙をくわえてアリスの元にやってきた。それをアリスは受け取る。
「えーっと、宣誓。真実を言って、嘘を言わないことを誓います」
「よろしい、嘘を言うと罪が重くなるからね気を付けてね」
読み終えた紙は、そこに待機していた鼠に渡す。そうすると鼠はそれをくわえてまた走り出していった。
「それでは起訴状を読み上げる。被告人は、さきほど、始まりの村において、王子が所有する女性陣の婚約を破棄させた。罪名は婚約破棄」
「え!? なにそれ」
アリスが驚きの声を上げる。周りの傍聴人たちもがやがやと騒ぎ出す。
「静粛に、静粛に」
裁判官がかんかんと木槌を打ち鳴らす。
「私、そんなことしてないわ。冤罪よ!」
「あ~静粛に、被告人は問われたことだけ答えるように」
裁判官がちょっとイラついたように言う。
「さて、原告の証言にはいるよ~。原告は何があったか言ってね」
そう裁判官が、原告席を見る。そうすると始まりの村で会ったハーレム王子が立ち上がる。
「そこにいるアリスという少女は私の妻達に薬を渡して無理やり婚約破棄をさせたんだ。信じられるかい、私は妻達を愛していたんだ。それなのに薬で無理やり婚約破棄させるなんてありえない。裁判官そいつを死刑にしてもらえるか」
「原告側がそういってるけど、それは本当かい?」
裁判官は被告人のアリスを見る。
「私は何もやってないわ。ただ、試験管を渡しただけよ」
「ほら見てみろ、薬を渡したことを認めたぞ、裁判官」
「あー、そうだね、それじゃぁ死刑にしちゃおっか」
めんどくさそうに熊のぬいぐるみが木槌をくるくる回している。どうやら飽きたようだね。
「はぇ、なによ、やるんなら最後までちゃんとやりなさいよ。証拠とか動機とか色々と聞くことあるじゃない。反対尋問とかまだじゃない」
「えー、メンドクサイ。もういいじゃん。アリスの首をはねれば終わりなんでしょ」
そういうと、熊はどこからかホイッスルを取り出して、吹き鳴らす。
そうすると、裁判官の傍から黒いマントをかぶった骸骨が現れる。死刑執行人のような格好で死神のようだった。おどろおどろしいその恰好だった。
「それでは、判決を下すよ」
「意義あり! 意義あり!」
ゆるい裁判官の言葉に、アリスは必死に叫ぶ。これからアリスの逆転劇が始まるのだろうか。




