面接
「こんにちは。今日面接に来たアリスです。よろしくお願いします」
そういって、軽くお辞儀をするアリス。
「どうも。じゃぁ、そこの椅子にでも座って。さて、早速面接にはいろうか」
そういって、狸のぬいぐるみである社長はそう言いアリスに質問を始める。アリスがそばにあった椅子に座る。ゲーミングチェアのようですごく座り心地が良かった。ひじ掛けもしっかりしていて体を包み込むような感触でリラックスできた。
社長は手元にある資料を眺めている。そこにはブラックドラゴンから提供されたアリスの情報が書かれていた。それを見て、ふーんと社長が呟きアリスを見る。
「じゃぁ志望理由を教えて。あぁ、ちなみにこの面接で嘘をつくと直ぐわかるからね」
社長はそう言い、部屋のモニターの電源を入れる。そこには嘘、本当と書かれた文字が表示されている。
「えっ、えーっと。社会経験のために……」
『嘘です』
モニターの嘘の文字が大きく光る。早速アリスが付いた嘘がばれたようだ。
「だから嘘は分かるっていったよね。本当のことを言って」
「……ブラックドラゴンが社畜自慢をしていてちょっとイラついたから売り言葉に買い言葉で働くことに決めたの。でも本当は働きたくないの」
『本当です』
「ふーん。そう。この会社が何をやってるのか知っている?」
「あんまり詳しくは知らないけど、派遣会社なんでしょ? ボスモンスターを派遣しているって聞いたわよ」
「それも一つの業務だけど、本業は魔法少女候補の勧誘だね」
「勧誘?」
「そう、私の会社では魔法少女になってくれる人を勧誘し、魔法少女にして、アイドル化させるのが本業なのだよ。ねぇ、君も弊社に入って魔法少女になってみない?」
社長は、アリスをじっと見つめる。無表情で、無機質なぬいぐるみの目はちょっと怖い。
「えーっと、魔法少女になるとなにがあるの?」
「魔法少女はね、各地に現れる魔物を退治してもらうのが主な仕事だね」
「魔物?」
「そう魔物。化け物でもいいけど、そういった存在をやっつけるのが魔法少女の役割。あとはアイドル業もかな。魔法少女に採用されたら変身してもらうんだけ、変身した姿は皆可愛くてね。中にはアイドルとして活動してもらう場合もあるんだ」
モニターが切り替わり、フリフリの服を着た少女たちが映し出される。その子達は会社の看板に写っていた少女だった。画面が切り替わり怪物たちを倒している映像が流れる、そして最後に『豊かな未来を作り出す、魔法商事有限会社』とテロップが流れる。
「こんな感じでね、弊社の広報活動もやってもらっていたりする」
「へぇ、可愛い衣装ね。私も変身したらなれるかしら」
アリスは少し興味が出てきたよう。その姿を見て社長がにやりと笑う。アリスはモニターにくぎ付けだったようでそれには気付かなかったけどね。
「ああなれるよ。どうだい、アリス魔法少女になってみるかい」
「そうねぇ、ちょっとやってみようかしら。そしたら働いたことにはなるわね、あっ、そうだ労働条件はどうなっているの? 休みとかちゃんとあるのかしら」
「そうだね、基本は自由にしてもらって怪物が出たら退治のために働いてもらうって感じだね。だからそんなに労働はしなくてもいいよ」
「怪物の退治の頻度はどれくらいなの? 毎日出るんだったら休めないわ」
「毎日でるけど魔法少女でローテーションするからね、週2~3回くらいじゃないかな。退治にかかる時間は1時間程度だからすごく楽な仕事だと思うけどね」
「そうね、よさそうね。あとはお給料はどうなのかしら」
「固定給で月4千Gってところだね」
「相場がよくわからないけど、いいのかしら」
「平均は月2千Gだからかなり高いと思うよ」
社長は机の引き出しを開けて、書類を取り出す。
「さて、これが契約書だよ。ここに君の名前を書けば契約は終了だ。晴れて魔法少女の仲間入りってわけ」
そういって、アリスに書類を渡す社長。そして、そこに名前を書こうとするアリス。
その時、会社の下の方で大きな爆発音がした。凄まじい音とともに部屋が揺れる。
「えっ、なに。地震? 何の音?」
「大丈夫だよアリス、よくあることさ、それよりもそこに名前を……」
社長がアリスに続きを催促しようとすると、部屋のドアが開く。
「このくそ社長、ようやく見つけた」
つり目でツインテールの女の子が部屋に入ってきた。凛とした姿で、立っている。可愛らしい魔法少女の衣装は血まみれだった。しかし、その少女はケガらしきものが無いことから、どうやら返り血のようだ。彼女の拳にはレザーグローブが装着されており、そこから血の雫がぽたぽたと落ちている。
「あーあ、せっかくいいところだったのにな。まったく、秘書は何をやっているんだか。それで何の用。というか生きてたんだね。もう死んじゃったかと思ったよ」
「はっ、あんな軟弱な追ってごときであたしを殺そうなんざ百年早いぞ」
見つめ合う社長と魔法少女。それは険悪な雰囲気だった。
「えーっと、なにこれ」
この展開についていけない、アリスはただただ困惑していた。




