ブラックドラゴンとブラック会社
「わかったわ、じゃぁ働いてみればいいのね」
ブラックドラゴンの売り言葉に買い言葉で答えるアリス。
まさか、「働く」、といわれるとは思わなかったブラックドラゴンは面食らっていた。
「おい、おまえさっきの話聞いてたのかよ、こいつの会社ブラックだぞ」
「だいじょうぶよ、なんとかなるわよ。この優秀な私の働きぶりを見たら、社長だって心を入れ替えるわよ」
ドヤ顔で答えるアリス。これまで労働経験がないのにその自信はどこからやってくるのだろう。
「えっ、ほんとにいくんですか?」
「何よあんたが言い出したんでしょ。社会人なら自分の言葉に責任を持ちなさい」
ということで、ダンジョンの視察が終わったアリスは働きに行くのであった。
実はダンジョンの出口は玉座の下にあったよう。ボスを倒したときにすぐに外に出られるように脱出用のワープが準備されているようだ。なので帰りはそれを使ったよ。一方通行のシステムなので逆側からはそれは使えないようだけどね。
外に出たアリスたちは魔王様に挨拶をして、ダンジョンの改善点とか改良点とかを伝えた。その時の魔王様はとてもめんどくさそうな顔をしていたので、苦情は程々にしておいたようだ。きっとお他のモンスターにその仕事が行くのであろうことはすぐに想像がついたからね。
あまり、やいやいと、そう言うことをいうとブラックドラゴンのような被害者が増えそうだった。
ということで、魔王様への報告を終えたアリスはブラックドラゴンの仕事の報告のついでに、彼の会社へ行って働くようだった。ただ会社まではちょっと遠いらしい。交通の便も悪いのでここから普通のルートで行くのはきついみたい。
「ブラックドラゴンが運んでやればいいんじゃねぇか?」
「それいい考えね、私、一度はドラゴンに乗ってみたかったの」
「えっ?」
どうするのかと悩んだ結果、ブラックドラゴンがアリスを背中に乗せて運ぶのが良さそうだという結論に至った。
ブラックドラゴンはあまり乗り気ではなかったけどね。今までの言動からアリスがおとなしくしているとは思えなかったからね。
「じゃぁ、さよならゴブリン。さぼりは程々にね」
「おまえもお転婆はほどほどにな」
さすがにゴブリンはついてこないようだった。なのでお別れの言葉をかけ出発する。
「わぁ、飛んでるわ」
「お願いですから、おとなしくしてくださいね」
ブラックドラゴンの背中にのって空を楽しむアリス。
「わー、すごーいはやい。きっと火蜥蜴よりはやいかもしれないわー」
「……」
その台詞はやめよう。
◆ ◆ ◆
「あなたの願いを叶えます。あなたの隣の魔法商事有限会社だって」
そんなこんなでブラックドラゴンにつれられて、たどり着いたのは魔法商事という会社。魔法少女になりませんか、ってキャッチフレーズが文句が会社の横に大きく書いてある。そこには狸のような、よくわからない不思議な生物のマスコットキャラクターと、少女がステッキを持って並んで映っている。
「大きいわね、大企業じゃない」
入り口の屈強なガードマンたちを横目に、回転扉を抜けて会社へと進むアリスたち。とてとてと、ブラックドラゴンについて行く。会社にはいると多くの社員が走り回っていた。ただし社員はみんな、ぬいぐるみだった。
動物をファンシーにデフォルメした姿をしていて、ふわふわでとても可愛らしいぬいぐるみ達だった。
でも、みんな忙しそうに働いている。所々に倒れているぬいぐるみが見受けられる。もしこれがぬいぐるみじゃなければ地獄絵図だったのかもしれない。
「なにこのかわいいぬいぐるみ達。何匹か持ち帰りたいわ。そこに倒れているのは持って帰っちゃダメかしら」
アリスが、ぬいぐるみに心を奪われている間に、受付でブラックドラゴンが手続きをしていた。
「アリス、一応アポがとれたからそこで待ってて。秘書の方が迎えに来てくれるそうだから」
「アポってなーに?」
「アポイントメント、簡単に言うと面接の予約のこと。さすがに面接なしでは働けないよ。社長が直々に面接してくれるそうだよ」
「へー、そうなんだ。ありがとね」
アリスがブラックドラゴンに感謝の言葉を伝えると、ブラックドラゴンは少し照れたようになって、「報告があるから」、といってその場を去っていった。
「そんなに急がなくてもいいのにねぇ。それにしても暇だわ。なにをして時間をつぶそうかしら」
社長との面接まではあと一時間くらいかかるようで、アリスは暇を持て余していたよ。受付の所のソファに座って、足をぶらぶらさせて往来するぬいぐるみの社員たちを眺めていた。
「あぁ、あのぬいぐるみ達、とてもふかふかね。枕にしたらよく眠れそうだわ」
しばらくぼーっとぬいぐるみ達を眺めていた。
◆ ◆ ◆
「アリスさん、起きてください。面接の時間です。ついてきてください」
アリスはいつのまにか眠っていたようで、揺さぶられて目が覚めた。アリスが寝ぼけ眼で見ると、ちょっと目つきの鋭いスーツを着た女性がいた。彼女は社長の秘書らしく、時間になっても面接に現れないアリスを呼びに来たみたい。
「あっ、ごめんなさい。私ったらねちゃって」
「かまいません、ついてきてください」
そのまま、秘書は歩き出す。それをみたアリスはあわてて彼女について行く。彼女と一緒にエレベーターで最上階へ向かう。最上階の一番奥が社長の部屋。
「ここが社長室です。くれぐれも粗相はしないように」
そうアリスにくぎを差し、秘書は去っていった。粗相なんかし無いわ、失礼ね。とアリスはつぶやき。扉の前に立つ。
「しつれいします」とノックをして入るアリス。面接はドラマとかで見たからやり方は知っていた。とにかくアピールすればいいのよね。
意気込んで入った社長の部屋の壁にはステッキがいっぱい飾ってあったよ。すべて魔法少女が使うようなキュートなデザインだった。
「ようこそ魔法商事へ。これも因果の導きかな」
高級そうな椅子にちょこんと座った狸のような偉そうな態度のぬいぐるみがそこにいた。




