第33話 ひな
「葵ー、来たわよー」
コンコンと、玄関の外からすみれの声が届く
「あ、お二人さんきたっすかね」
やっと、やっと来てくれた
ガチャっと扉を開き、二人を抱き寄せる
「いらっしゃい、百合、すみれ」
「どうしたのよ、そんなに心配だったの?」
「まぁ、すみれさんが普通に百合さん連れてくるのは意外っすね」
「私をなんだと…」
二人がそうやって話してる中、私は百合を更に抱き寄せる
「?…葵?どうしたの?」
「おかえり」
やっと、言えた
もう言えないかと思ってた
「…?ただいま、?」
可愛い、そうやって悩んでるところもひなそっくり
ーーー
「じゃあ、葵、私たち帰るっすよ?」
「帰っちゃうの?」
「もー、百合さんにそんな顔されたら帰りたくないですよー」
そういってると後ろからパーカーのフードの部分をすみれさんに引っ張られる
「帰るわよ、私たちも明日の準備あるでしょう?」
「そうっすね。じゃ、お二人さんお疲れ様ー」
帰路につく
二人、心配だな
百合さんの精神状態は相当だが、葵の方がそれよりもやばそう
葵は、何を思って百合さんを家に呼んだの?
単純に友達を助けるため?それならいいのだけれど
そうじゃない気がする
まるで
百合さんを自分のものにするために
そうじゃないことを祈るしかないっすね
ーーー
「葵ー、ドライヤーどこー?」
お風呂上がり、先にお風呂に入った百合がそうやって甘えてきてくれる
可愛い、ひな
私のかわいいひな
「私の部屋にあるわ、髪乾かしてあげるわよ?」
「え、いいの?」
「いいわよ、なんならやらせてほしいかな。百合の髪さらさらだから」
「すみれも言ってくるけど、そんなにさらさらかな?」
「私は短いから羨ましいわ」
「葵も伸ばす?」
「いいわ、この髪型はね、私の大好きな人が褒めてくれたの」
「葵の大好きな人?葵恋人いたっけ?」
目の前にいるのに
「片思いかしら」
告白したらどんな顔してくれるのかしら
「いいねー、恋バナでもする?」
「遠慮しとくわ、どうせ二人の惚気話になりそうだから」
「そう?」
今はすみれの話は聞きたくない。私のひなが取られる感じがして
「ねぇ、百合」
付けていたドライヤーを横において、後ろから百合に抱きつく
あったかい、何年待ったことか
「どうしたの?」
「今日は一緒に寝ましょう?慣れないと寝にくいでしょう?」
「いいの!?」
「もちろん、いいわよ」
「やったー!!」
百合は両手を上げて喜ぶ
かわいい、
そうやって、初心で純粋なところが本当にひなに似ている
「じゃあ、お布団行きましょ」
いや、似ているじゃない
何を言ってるのかしら
「ひな」
目の前にいるのは、ひなじゃない




