10.泥濘の眠り <レザト>
宿の扉を開けた瞬間、重たい疲労が全身に押し寄せた。まるで暗い霧が足元に絡みつき、私の歩みを鈍らせているかのようだ。体中が鈍い痛みを伴っている。それでも、無事に戻ってきたという安堵感が胸に広がる。
「レザト様……お帰りなさい」
その声に、心がほっと緩んだ。ルチカが私を待っていてくれた。
夜の闇に包まれた宿の薄明かりの中、彼女の優しい瞳が私を迎えている。
長い哨戒の間、ずっと緊張し続けていた心が、その瞳を見た瞬間にようやく解放された。
「……只今戻りました。お待たせしてしまいましたね」
私の声は、思ったよりもかすれていた。だが、ルチカは優しく微笑んで首を横に振る。
「いえ、私が勝手に起きていただけなので…」
彼女のその言葉に、何かが胸の奥で溶けるような感覚が広がった。彼女の優しさに触れるたび、私の中の疲労が和らいでいく。その言葉に、心が締め付けられた。
彼女がどれほど私を気にかけてくれているか痛いほど伝わる。
だからこそ、こんなにも疲弊した姿を見せる自分が、彼女に申し訳なく思えてならない。
私は強くあらねばならないのに、こうして甘えてしまう自分に苛立ちすら覚える。
私はルチカのもとへふらふらと足を運び、何も言わずにそっと彼女を抱きしめた。
彼女の小さな体は温かく、まるで全ての疲労を吸い取ってくれるかのようだった。
「すまない……」
その謝罪には、言葉にできないほどの感謝と負い目が込められていた。
彼女をしっかりと抱きしめたまま、私はそのままベッドへと倒れこんだ。
私が押し倒す形になり、ルチカは驚いたように一瞬体を硬直させたが、すぐに私の背中に優しく手を回してくれた。
「レザ、ト様……」
彼女の声はかすかに震えていた。だが、その震えが私には心地よかった。
彼女の温もりを感じながら、私の意識は次第に朦朧としていく。
「貴女がいてくれて、よかった……」
それだけを呟いて、私は眠りに落ちた。意識が完全に途絶える前、彼女の体から微かに感じる花の香りが、深い安堵感を与えてくれる。
彼女の手が触れた瞬間、何か異様な温かさを感じたが、それが何かを考える余裕は、今の私にはなかった。
短い文章での更新が続くと思います。来年はもっとスピード上げたい…!




