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20話 闇深い隣国の王子様

 今日の夕食は、カレーを作った。これはデレクが残して置いたレシピを再現したものである。意外とこの土地でもスパイスが手に入り、簡単に再現できた。


 カレーは最初はプラムもクラリッサも不評だったが、私やデレクがあまりにも美味しそうに食べて居るので、だんだんと好きになったらしい。まあ、この二人はカレーにご飯というよりは、田舎パンと一緒に食べるのに気に入って居る。


「なに? この料理は?」


 出来上がったカレーを見て、クラウスは好奇心の満ちた目を見せていた。


 食堂にはカレーのスパイシーな匂いが広がる。テーブルの上にはカレー、田舎パン、チーズ、それにブラックティーと準備満タンである。意外な事にブラックティーとカレーの組み合わせの相性が良く、カレーの時はブラックティーを出すのが慣例になっていた。クラウスに元いた世界の料理を出すのはどうかとも思ったが、朝から食材の準備をしてしまっていたし、仕方ない。それにクラウスはそこまで嫌悪感を見せてはいないので一安心ではある。


「寒い日はカレーはいいわよね」


 クラリッサが言うと、クラウスは素直に頷いていた。


「僕、早く食べてみたいよ。こんな料理は始めてだ!」


 こうして食事が始まった。


 会話はあまり弾まない。私もクラウスの事情を知ってしまったせいで、どう接すればいいのか判断しかねていた。話題は自ずと料理のことばかりになる。


「これがカレーか。思ったより複雑な味だね。どことなく薬の様な感じ」


 カレーに興味がありそうなクラウスだったが、やはり微妙な表情を見せている。


「辛いのが苦手だったらチーズを入れてみるといいわ」


 クラリッサにいわれて、クラウスはカレーの器にチーズを入れて一口食べる。


「あ、こっちの方が美味しいや。チーズを入れると味がまろやかになるんだね。面白い料理だ!」


 クラウスはチーズカレーは気に入ったようで、パクパクと食べていた。


「これはマスミのいた国の料理なの?」

「厳密には違う。私は日本って国にいたけど、もともとはインド料理。でも日本という国は色々外国のものをアレンジするのが好きだから、本場のものとは全く別物になってるのよね」

「へぇ。面白い国だね。うちの国は自国の文化を守るために滅多に他の国のものは取り入れないけどね。まあ、僕の父さんは隣国の女性を不当に盗んでいたわけだけどね」


 場が凍りつく。精神、肉体ともに強いプラムや朗らかなクラリッサでさえ黙りこくってしまった。私も気まずく、カレーをすすってばかりいた。この土地でとれたジャガイモが柔らかく、濃厚なチーズとよくあう。確かにカレーは美味しかったが、クラウスは意外と空気が読めないようだ。まあ、空気を読む事は日本人がやたらと上手なだけで、この土地の人からしたら不自然な事では無いかもそれない。


「マスミは事件を調べるつもりなのよね。これからどうするの?」


 クラリッサが話題を変えてくれて心底ホッとした。


「次はソニアかジェイクに会おうと思ってるよ。謎の女も気になるしね」

「謎の女?」


 クラウスがこの話題に食いついてきた。


「もしかしたら僕を殺そうとしている奴等かの。あとで似顔絵描いてあげるよ!」


 クラウスは天真爛漫に微笑んだ後、ドヤ顔で胸を張る。


「僕は意外と絵が上手いんだ。ソニアも上手だけどね」

「ソニアと仲良かった?」


 もしかしたらクラウスは何か知っているかも知れない。


「うーん、僕はブラッドリーの友達だからよくは知らない。ブラッドリーも絵が好きなんだよ。ヘクターもそう」

「ヘクターも?」


 ヘクターが絵が好きだとは初耳だった。


「うん。あの人も趣味で絵を書いたり、評論家っぽい事してたよ。でもソニアの絵は抽象的で嫌ってたみたい。まあ、僕もソニアの絵はよくわからないけど」


 ソニアの絵は毒キノコがメインの抽象的なものばかりだった。そういえば婚約パーティーでヘクターはソニアにヤジを飛ばしていた。


 ・ヘクターとソニアは不仲?


 行儀が悪いと思いつつも私この事をメモする。


「この事はモニカの件と関係あるのかしらね?クラウスは何か知ってない?」


 プラムが聞く。相変わらずちょっと怖い顔つきなので、クラウスがちょっと怖がっている。


「さぁ。でもモニカとブラッドリーは過去に付き合っていたのは事実みたいよ。僕はブラッドリーから聞いたし」


 やっぱりモニカとブラッドリーは関係があったのか。ブラッドリーには動機がある事にもなるが?こうなるとソニアも疑ってしまう。


「ところで、クラウスはこの国にいて大丈夫なの?」


 私はこんな暗殺者のいる隣国よりさっさと自国に帰った方が安心じゃないかよ思うのだが。


「それはそれで危険なのよ」


 プラムはため息をつく。


「うん。僕の国も今王族連中がものすごく対立していてね。僕の事を嫌っている人いっぱい!子供の頃は毒殺されそうにもなったよ」


 そんな事を笑顔で言えるクラウスが逆に怖い。とりあえずクラウスの身の上はわかったが、彼の天真爛漫な笑顔を見ると何故か不安になった。


「それにうちに国はしょっちゅう内乱やってるし、ここの方が一見平和なんだよね!」


 クラウスの天真爛漫ば笑顔の裏には、底知れぬ闇がありそうだった。正直なところ関わろたく無いが、この雪空の下に追い出すわけにもいかなかった

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