平和に潜む陰
時間はお昼を終え、個人種目が行われている頃。
王立キャラメル学園の地下にて、三人の人影があった。
薄く光る非常時用の明かり、少し先がほんのりと照らされて少し見るか見ないか程度の道を躊躇なく歩く三人の者がいた。
足音だけが響き、微かに流動している風が肌に寒気を与える。漂う魔力は異質で、何らかの対策がなければ常人ならこの魔力で卒倒してしまう。
堂々と歩く。学園の者に見つかってもいいかのよに、それとも見つからない自身があるのか。どちらにせよ、この者達はこの学園にとって招かれざる客であったのは確かだ。
ほどなくすると、先頭を歩いて一人の者が「ここか」と呟くと横を向き壁へと触れる。
トンネルのように作られた長い長い道、その途中で壁に触れた。
そのまま触れ続けるが何も起きなく、諦めたのか壁から手を放して、その場からも数歩と下がる。
すると壁から奇怪な音が鳴り響き始め、重苦しい悲鳴かのような引きずった音を壁は出し、横へと土埃を立てながらずれていく。
隠し部屋である。
といっても、この道どこまで進んでも何処にも部屋に繋がる道はなく、果ては壁である。
ここは学園の地下迷宮、もし道なり進んで部屋があるのだとすれば、それは罠以外あり得ないだろう。
なぜ、地下迷宮があるのか。それは、この施設、学園になる前の学校。それも魔法国が魔法使いの育成を手掛けていた表の施設を作り替えたのが王立キャラメル学園である。
その地下迷宮は魔法国の隠された研究施設である。
ならば、その隠し部屋に有るものは何か、山のようにある魔導具、あらゆる魔導の技が書かれた魔導書、いやそれとも魔法などに使う触媒、材料。
いや、そんなわけがない。そんな小物など俗にあげてしまえ、最もこの迷宮で隠すべきもので、価値があるものはーー
ーー知識。
それ以外はないだろう。
この者達は知識を求めて、この部屋へとやって来た。
図書館。この学園にある図書館の何倍ものでかさと本の多さ。
ここの本は世界中から集められたのと魔法国で纏められたのに分けられる。世界中で集められた本は割合で出せば一にも満たないだろう。
それは魔法国の魔法使い達の八十年間、一秒さえ無駄にすることなく、世界中から集めた魔法使い、知識、未知を全てを一つに集め温故知新切磋琢磨と、死力を尽くし努力を行い、希望という消えぬ欲望を抱いて、絶望という伴侶に抱き締められる。最後に誰もが意味もなくとも呪い合う。
深淵へと溺れるように神秘への追求がなしえる魔法使いの意がここに。その記録の全てはここに記録されている。
未だに、この場にはその魔法使い達の思いが残っている。
ゆえに、学園の者すら入ることは限られた者しか入れず、そして入らず。
その資源をもて余している状況がかれこれ、二百年は続いている。
そこに、目的を持って情報を求めてきた三人。
目的の情報を見つけるために、探し回る。
もしもの話をしよう。
ここにあるすべての知識を記憶し理解できたのだとするれば、それだけで魔王に至れるだろう。
その力を操ることは出来ずともに。
白衣を着た男は、一つの水晶坂に気づいた。それは、古代の終わりに開発された技術だとされる魔具。
それに魔力を通すと反応して、水晶坂が淡い青白い光を発して、文字が浮かぶ。それには、色んな情報が書かれていて、本の内容によって区別されており、その水晶坂に手で触れると、紙を小さな視野で特定の部分を見て、その視野を保ちながら紙に書かれた言葉を視線で追うようにずれる。
「これは確かに近年復興した技術だったはず、実用化にはまだ耐えれないはずだが……」
普段は心の声が漏れることなどないのだが、近年は過去の技術を復興し始めた。だが、それは二百年も前に既に復興。いや、より進化しているのだど。
突如、この男には心に不安が芽生え、緊張が背筋を走た。
ここは、近代の謎すら解き明かす知識が眠っているのではないかと、だけど恐怖もしていた。ここは今までの魔法国が終わって始まった二百年の魔法界の歴史、いや、あらゆる科学の歴史がむだだったのでないかと。
そうならば、いった俺たちは学者は何をやっていたのかと。
でも、ここで、今、必要な知識以外を見れば、世界は大きく進むのではないかと期待も抱く。
ただ淡く光る水晶坂だけに目が生き、それ以外は見えなくなって、音すらない世界に落ち。
期待と不安に体が震え、その震えに指が言うことを聞かない。
だけど、指は自然と水晶坂に触れ……
「いるか……や………聞こえているのか…………ヤグチ! 聞いているか!!!」
その大声に驚き、指先は水晶坂に触れた。
そして、とある項目を映し出す水晶坂。
ヤグチと呼ばれる男はどこか、ホッとした顔で、どこかイラつきを覚える。
ヤグチと呼んだ女は腰に剣があり、どこかイラついた態度が表に出ている。
「こんなとこでぼさっとして、それで見つかったのか」
鋭い目で見るが、ヤグチは何を言っているのか分からないと様子で見る。
「見つかるわけねだろう、バカが」
そういって、今一度。水晶坂を見るのだった。
そこには、高位存在の召喚と使い魔契約の戦略兵器運用について。と書かれたレポートであった。
それにニヤリと笑みを向けて。
「いや、見っかった」
そう告げた。
急な返しに困惑という表情で。
幾度かの操作をすると理解したなか、ヤグチは多少不馴れなところはあるが、問題なく操作をして目的のレポートを運ぶように指示をする。
すると、物音を立てながらやってくる自動人形と共にやって来た女は一緒に来たもの一人。
そして、自分の元にやって来た自動人形からレポートを受け取り。
「目的も果たしたしとっとと帰るぞ」
「そうだな、目的が果たせたなら、帰るぞ。こんな頭が痛くなる場所からはやく離れたい」
そうイラつきな原因をぽろっとこぼした。
さっき戻ってきた女も興味を引くものがなかったのか、つまらなそうな顔する。
それに、ヤグチは理解する。
あの女は自然にしか興味がないものだ。魔法使いだとしても。だからか、ここの魔に呑まれなかったのだろう。
自分が陥っていた症状を理解して、神妙な心で。
「ここは何処までいっても魔の深淵なのだな、危うくここにいた魔法使いになるとろだった……」
誰にも聞こえないような小さくその気持ちを呟いた。
そして、帰る。
だが、地下から出たら一人の教師がたっていた。
最近、新人として入った実力派の若手。
特徴的な白い髪に、老人かのような落ち着いた雰囲気は動きに無駄を見せなく。
フルカザキ先生すら見た瞬間に強いと思わせた者だ。
そして侵入者に告げる
「ここは、生徒の学舎だ。あんたらのような者が入っていい場所ではない、下朗が。それを理解しているかな」
不敵に微笑む。その笑みは何処までも何も掴ませず、それだけで圧としてなる。
少しな動きさえ慎重にしなければならないと。
明らかに強い者達もこの男は強いと。そして脳裏に浮かぶ男を同時に重ねた。
だが、その男の圧を越える圧が場を支配した。その男はここの副校長を務める者であり、校長がいない間の学園を管理を任せられる。
新人教師は、侵入者の報告をする。
「副校長、侵入者が……」
副校長は、新人教師の言葉を遮り。
「まこと、面倒なことをしおって……」
「……何を? ……まさか、あなたも……どういぅーー」
「スリープ」
副校長は杖を新人教師に向け、催眠の呪文を唱えた。
何十年も魔法の研究をしていた者でもこうも容易く同じ魔法使いを眠らせることは出来ないだろう。
最近、とある組織と関わりを持った、魔法研究の金を出すことで。
キャラメル学園の地下に魔法国の研究施設があったことを教えたのも、侵入者を体魔祭にゲストとして呼んだのも副校長グシャ・シュリンこの者である。
「はよ、帰れ。ここは本来なら、下朗がはいって場所ではない」
「そうさせてもらおうか、協力者さん」
気にくわないといった顔をするが、言葉には出さずに三人は闇へと消えていった。
疲れた態度で、地下階段に視線を向ける。
かつて、魔法国という真性魔法使いだけが許された神秘の研究施設である。ここに恋い焦がれて、入ったがここの生ぬるい環境に耐えきれなくなった。
「たかが、精霊の力なしに魔法も使えない者など、見たくも話したくもないというのに、吐き気をもようす。家畜としての価値しかない」
吐き捨てるように、呟く。
真性魔法使い主義を裏密かに掲げる魔法国のなくなった今でもある差別的な思考の主義である。
副校長は、未だ寝ている下朗に目を向ける。ここでいっそ、と杖を新人教師に向けて……。
膨れ上がる怒気、殺意、魔力。
「愚かなり、まこと愚かなり。ここまで愚かだとは知らなかったぞ。グシャよ」
「フッん、貴様こそ、愚かだなオオヌハ校長。貴様ではもう止められない、出てくるのが遅かったようだ」
「それはどうかな」
そんな不敵な笑みを浮かべる。その笑みを強がりと判断して、ここに高位の魔法使い戦いが始まりそうな魔力と殺意のぶつかり合いの隙間を縫うように意識の間もを這い。
呼吸と合わせるように副校長の背後に立ち、そっとすっと心臓を潰した。
「これで、一安心ですね。校長」
そう笑顔で告げたのは、先まで寝ていたはずの新人教師であった。
「どいう……こと……だ?」
「あなたは分からなくてもいいですよ」




