テスト前一週間3
今日が最後のテスト週間前の授業。
担任のフルカザキ先生が受け持つ体魔訓練の授業である。
何時ものように体操服に着替えてグラウンドに集まって、準備運動を終わり、先生が今日やることを言う前に注意を促す。
「今日は、危険なので、ふざけないように。ふざけたりした場合は、先生自らが排除します」
フルカザキ先生が注意を言うと身体がブルッと震えて、強張った。
少しだけ漏れた殺気、脅しを込た言葉はここにいる自分達の精神を引き締めるには効果的だった。
自分も身体に不自由が出る程に怖いと感じたのは久し振りで、寿命が縮んでしまうかと思った。
「脅すようなことを言いましたが、私がいる限りは危険はありません…………だからと言ってふざけて言い分けでないですから」
脅すように張った声は少し緩み。それにつれ張り積めた空気も緩んだ。
「それでは、今日やることは来週の体魔訓練でのテストの練習みたいなことです。テスト形式は、実技テストとなります。そのテストで扱う魔物と今日は一人一回は闘って貰い。そして、テスト当日までに、倒すまたは封じる等の作戦を考えて、テスト時に魔物を抑えることが出来たら、合格とします」
先生がそう言うと不安の声が上がる。
先生の話からは、結構強い魔物である可能性が大き、自分達のレベルの話ではあるが。
まあ、フルカザキ先生は滅茶苦茶に強いから、危険はないと思うけど。用心は大事。
その不安の声を掻き消すように、大きな声でフルカザキ先生は話し出す。
「本当に大丈夫ですから、危ない時は直ぐに止めさせますので、安心してください。……それに凄腕の医療の先生も居るので、怪我をしても直ぐに治って安心です。それで先生も無茶をして頑張ったことありますから」
最後のはちょっと、どうかと思う。怪我しても治して貰えれるからと言って無茶はするべきでないと思うのだが。
それでは、と言ってフルカザキ先生は魔力を高めて、魔法を扱う。
杖を使わず、魔法陣を地面に描かず。
地に平行して、魔力の光が現れて、魔法陣が描かれる。それは基本的魔方陣で、二重円に外接する正三角形に内接円。外円の内側と内円の外側の間には力ある字が記されている。
そして、呪文を唱える。
『星なる力から生まれし、争いと苦しみの獸よ。人の過ちによって、怨みに呪われた存在。其の身を地に現したまえ。
我が大いなる意思の前に異でよ』
そんな不吉な言葉が混じった呪文は、この場を恐がらせて魔法陣が駆動する。
自分はその魔法陣に呪文に見覚えや聞き覚えがある。それが、何だったか、忘れたが。
そんなことを思っていると、魔法陣内の魔力が高速循環をしているのか駆動音が聞こえ始める。
そして、魔法陣から光の大樹のような太い柱が天を穿つように昇っていく。さながら龍であった。それは、落ち着くように柱の高さが先生の背ぐらいまでに、形成した。
何が起きているかは分からずとも、この場に漂う気配は
――不吉だった。
背中を虫が這うように寒気立つ。
辺り一帯には謎のプレッシャーが乗し掛かり、寒気が広がる。
そんな中に突然とグニョンと光の柱が曲がった。
それに、一気に魔力と嫌悪が自分達を襲う。
グワァンと真ん中を裂かれて、光がアーチ状となる。ただ、光のアーチから漏れ出す光。あらゆる光の光源があるのか、赤、青、緑、黄、紫、空、白、黒が別々に在りながら、混じっている。そんな確かに言えることは、光っているというだけだった。
それに、自分は強い好奇心に引かれて、近くに居た余裕のあるタツガワくんを誘う。
「一緒にアーチの中見ない?」
「うん~~…………いいね。それ行こうか」
タツガワくんと一緒にアーチの中を見える位置に行って見ると。その光の奥から、誰かと視線が重なりあった。
その瞬間、体が止まった。化石化したのかと思えるほどに微塵も動けない。
いや、動くことさえも許されない。此方を見ている何かは、自分に見られていることを極上の褒美であると言うかのように思えてしまった。だから、微細な動きさえ止まってしまった。
そんな自分を置いといて、タツガワくんは話し掛けてくる。
「凄いね。不思議な感覚。色んな光があって色鮮やかに見えるのに白くて何も見えない」
それに同感だが、視線が体が魂が動くことが出来ない。
光のアーチの奧にいる何かは此方を観察するようにじっくりと舐めるように見られていると肌身をなぞる視線で分かる。
実際には、何かは、その奥の奥の見えざる世界にいるのだろう。だからイデアの世界でしか見ることは出来ない領域の住人であることを瞬時に理解した。その時、視界が暗闇に包まれ、誰かに視界を塞がれている。
すると体の自由が戻った。だけど、腰が抜けた。その為にガクンと崩れる。視界を塞いだ者に、支えられて何とか保つ。
視線が外れたお陰か、自由が戻った。それで、フルカザキ先生にお礼を言う。何故、フルカザキ先生かと分かると言うと気配である。
「ありがとうございます」
それに苦笑いを浮かべながら、フルカザキ先生は手を放す。
視界が戻ると此方を見ていた何かの気配が消えていた。
「あはは……まさかその歳で彼方側の住人を認識できるとは、思ってなかたよ。……ほら、今回の魔物だよ」
そう言うとアーチの内の付近に、悪意の気配を感じた。
タツガワくんは近くに居たけど、自分に何か起きているか分からないようである。自分だけしか分からなかった……何でだ。
長く感じたが、アーチが出来て一分も経ってはいないはずである。
自分はアーチの中から出てくる魔物に注意する。
黒い空気を纏っているかのように空気が暗くなり、出てきたのは知っている魔物であったが、危険度で言えば結構なレベルである。
人形で、足の指は三本で、全体的に細く、手の指は五本。背中には黒くコウモリのような羽が生えて、右の辺のデコには角が一本あり、灰色の肌と黒色の服のような物を身に付けて、腰のした辺りには長い尻尾が生えていた。
それは、数々の物語に出てくる悪魔である人形の悪魔。
魔力の重圧に殺意や悪意しか感じさせない雰囲気はここにいる者達を震える上がらせるには十分であった。
悪魔が此方に気付くと、殺意はより強くなり、動こうとした。
ただ、それより早く、フルカザキ先生が「止まれ」と言うと。悪魔はピタリと止まって、行した。
そして、いつの間にかあった結界に入れられていた。
「今日やる魔物は悪魔です。だから、気を抜かず、闘ってください。もちろん、悪魔には枷がありますから、大怪我をすることはありません。先のように、支配下にもあります。万が一があるかも知れませんから気を絶対に抜かないでください」
そう言うと、悪魔の説明をされた。
一つ目、悪魔とは精霊と似た存在で、悪魔には
ランクがある。上位、中位、下位の三つである。それを決めるのには、魔力量と悪性度で決まり、ランク評定を参考にすること。今回は下位の悪魔である
二つ目、悪魔は基本的に魔法でしか倒せなく、それも結構な高位か、浄化魔法を扱う必要がある。何故、魔法しか攻撃が効かないかと言うと、エーテル体で体が構成されているから、魔法でしか効かないのだ。ただ、例外を一つ言うと、武の至りと言われる場所に到達した者だけであると詳細は不明。
三つ目、悪魔の姿には人形と異形の二つがあり、人形は人に対して脅威な殺意を抱いている。異形は人形以外の中で、決まりはないがだいたい強い。悪魔は肉体的、魔法的にどちらも優れている。
四つ目、悪魔の召喚は聖法教会が行っている資格を持たなくては、行うことは厳禁である。今回はフルカザキ先生が取得しているために、行われている。それか教会から魔滅師の称号を持つものがいれば、行うことが許されている。
以上が説明である。
深く具体的な悪魔の説明はこの後に行われる授業、生態雑学でするらしい。今日の体魔訓練と生態雑学は連携授業で悪魔に関して学ぶアンド対策について学ぶと。
何でも、このぐらいの時期ではないと下位の悪魔は弱くなるし、逆に中位や上位なると強すぎてしまう。それに上級生では中位は弱いし、上位になると無茶をするからこのぐらいの時期ではないと良い経験を得れないと教えてくれた。
フルカザキ先生に一人づつ呼ばれて、武器を選び、守護をしてもらい、結界の中に入ると開始となる。
「それじゃ、ちょっとしてから呼ぶから、少し待ってね」
先生がそう言うと、皆は一斉に話し出した。
どうするか、どうやるかと話し合ったりと。それで、自分も隣にいるタツガワくんに話しかける。
「タツガワくんは以外と余裕そうだけど……戦ったことあるの」
皆とは違い。タツガワくんは冷静に悪魔を見ている。この場合は観察していると言った方が正しいのかな。
それで、観察が終わったのか。此方に視線を向けて、つまならいと言った顔をして、話し出す。
「まあ、有ことは有るけど……殆んど普通の攻撃が効かないし。あと、何て言うか、鬱陶しい殺意を向けてくるし、下らないことしか言わないから戦って好きじゃないだよね」
本当につまらなそうに言う。
て言うか、悪魔と戦ったことがある事態が稀な体験と思うのだけど、以外と皆戦ったこと有るのかな?
まあ、だけど、下らないことしか言わないと言うのは賛成だね。あいつらは本当に、人を殺すことしか目がない。それゆえか、悪魔至上主義なのか最初から此方を見下してくるもんだからムカつくだよ。でも、下位の悪魔って放すこと出来たっけ?
など思っていたら、タツガワくんがジト目で見てくる。
それに何だと聞くと。
「君も平気そうだけど。大丈夫なのかい。どう戦うのとか考えなくて。余裕綽々と言った感じだけど、普通に殴ったりして勝てないよ悪魔は」
「知っているよ。先の説明で聞いたし、魔法を使えば良いだろう」
「そんな楽観視で勝てるのではないだけど……」
タツガワくんの言う通りだが、自分はまあ今回の試験勝ちましたと思っているから。何せ、悪魔退治または祓うことは専門だ。
まあ、だからと言って油断をするわけでない、退治をする時は慎重にやる。
「何なら、教えてあげようか?」
そう言ってくれたが自分は断る。
「大丈夫、君と同じ経験者だからね」
それに、やっぱりと言った顔をして、呆れている。何故かは問わないことにした。
すると、フルカザキ先生から一人目が呼ばれて行った。
一人目が呼ばれて行ったことで皆はその試合に意識を向け、自分の時までに情報を得るために、それまでの話し声は静まって悪魔の動きを観察する。
自分もタツガワくんも話すのをやめて観戦することにした。
男子生徒は剣を持って、目先にいる悪魔から視線を離さず微細すら捉えるかのように観察。
悪魔は飢えた猛獣のように、男子生徒に襲い掛かる。
下位の悪魔の身体能力は人の約二倍であるとされている。だから、悪魔の踏み出しに男子生徒は遅れることになった。
まあ、これは経験不足だから仕方ない。
基本的に人の速さに慣れている男子生徒は、悪魔みたいな人形で肉体的に人間の上な能力を持つような魔物と戦うたまに反応が遅れることがある。
その遅れは強者との戦いほどしてはいけない、遅れが遅れとなったままに成ることが多いからだ。
剣のグリップを強く握り、悪魔の動きに注意を張りながら全身に満遍なく魔力を纏わせている。剣のブレイド部分にも纏わせて、魔力の属性が聖となっているために悪魔に攻撃が可能となった。
そして、悪魔が男子生徒の攻撃範囲に入った。
瞬間、少し男子生徒の腕がぶれ。
正確に首を狙った刃。だが、剣筋は首元でピタリと止まった。
悪魔は固いようで切れていない。もう少し魔力制御による強化と刃の切れ味を上げる魔刃を発生させていたら切れていただろう。
惜しい。そんな思いを抱きながら、負けを見る。
悪魔は深く笑みを浮かべて、腕を上げて男子生徒に振り下ろす。
――筈だったが、当たる寸前で静止した。
驚きな顔をしている悪魔が動くことが出来ないのか、微塵も動かない。
あれはフルカザキ先生によって、支配下に置かれているから制御が出来ている。
だから、悪魔は動くとも出来ない。
男子生徒は防御も避けることも出来ないと思って目の前に迫る攻撃に待つ恐怖に襲われていたが、いつまでも衝撃も痛みも来ることはなかった。とっさに瞑った目蓋を開いて見ると目の前には悪魔の手があった。それでビックリしたのか、尻餅をついていた。
フルカザキ先生に終了の合図がされて、結界を出て戻って来たので自分は疲れている彼に近づいて言う。
「惜しかったな。あともう少しで魔刃を作れたら切れていただろうし、緊張か分からないが動きにも支障が出てたぞ」
彼は力を抜いて、ため息をついて言う
「はぁ、ナガクラくん。分かってはいたんだけど……緊張て言うか、何て言うかさ。悪魔って人形何だよね。だから、人を殺すような気分で……分かってはいたんだよ。悪魔は人を殺すことしか考えていないって、でも本当は優しい心があるじゃないかって共存できるのではないかって思ってしまったら少しね。無理だと分かるのに思ってしまうだ」
とても疲れていて、精神的にも参っているようだ。確かに人形悪魔は名の通り人形ではあるが人類を殺すための存在だ。それに悪魔は魔物だし、人形の魔物なんて沢山いるのは子供でも知っていることだ。
だから、そんな考えがなかった。やはり、不思議だ。無駄と言えるし、甘えとも言える。そんな考えだが、知性があるなら分かり合えると言う思想が見える。
この男子生徒は、アカゾク・ヒロキ、独特な考えと道徳を持つ青年でたまに話すことがあるが。
「やっぱり、考え方から違うのか。人形悪魔は魔物だからそんなことを思っていない訳でもない。悪魔の出生事態が人間の罪から生まれているからね。その人形悪魔は最も業が深いし人を殺すことに快感を得る。だから、殺そうとするのが聖法教会の人達の考え方なんだ。最初の頃は思わなくもなかったが自分は割りきるようにしったけど」
「まあ、そっちの方が正しいことなんだろうけど、自分にはどうにも甘いのかもしれない。……どうにもならない世界……そうそう、割りきれないな」
正しいとか、関係ない気がする。人形悪魔は人類を殺してしまう知的生命体だが。それは聖法教会が一番救わなくてならない。でも、それは神の如く所業であり人には到底出来ない。
ただ、これに全ての人形悪魔に対しては救うことは出来ないが、個に対しては可能なのだろう。個人的には。
救っても、聖法教会に所属している過激派が狩に来るだろうな。聞くには、大体ヤバイ奴らと聞く。目的は同じでも手段が違うと敵対関係になるから厄介とかも言っていたか知り合いの開拓者は。
「何が正しいなんて、神ですら知らないさ。だから、正しいと思った事をすれば良いんだよ。自分の思うままに行動すれば、いつかは確かな道に歩けるようになっているよ……多分」
自分がそんなことを言うと、アカゾクくんは驚くような顔をするが笑い出す。
何だと思って見る。
それに、何でもない、と言って、アカゾクくんを呼ぶ声に反応する。
『アカゾクくん、ちょっと来て!』
「じゃあ、呼ばれているから」
そう言って呼ばれた方に行った。
『心の欲する所に従えてども矩を踰えず…………懐かしいな』と離れ際に呟いていた言葉は何だろうか。それに笑っていたのか。
そんな、不思議ッ子ことアカゾクくんの姿を見送る




