01/02. 深い意味はないんだけれど(2)
「それにしてもあんた、料理が上手よね」
一瞬訪れたピリつく空気を壊すように、リリウが言う。
「男の子のくせに、なかなかやるじゃん」
「まぁ、一人暮らしだしな。家事だって、全部自分でやらないといけないから、ある程度は自然に。村の人たちの助けもあるから、何とかやっていけてるよ」
何気なく俺が答えると、
「……家族は、いないの?」
こちらの様子をうかがうように、リリウが恐る恐る聞いてきた。
もしかして俺の『一人暮らし』のところに、彼女は気を遣ってくれたのだろうか。
「今は離れて暮らしているけど、姉さんが一人。だから、天涯孤独とか、そういうんじゃない」
「そ、そう……ふーん」
目線を逸らしながら、何でもないようにしているリリウ。
彼女の心の内はわからないけど、こういう態度を見る限り、本当に悪い魔族だとは思えないんだよな。
人の感情を推し量るとか、そういうことができる女の子のような気がするから。
「俺のことより、お前は平気なのかよ?」
「ん、何が?」
「森の中で、女の子一人なんだろ? 危ない魔族だって、いたりするんだし」
昼や夜に俺を訪ねてきて、眠る頃には森のどこかへ帰っていく――リリウの行動は、基本的にこんな感じだった。
「舐めないでよ。あたしはダークエルフ。そんじょそこらの野蛮なやつらなんかにやられるわけないじゃん」
魔族と一口に言っても、その種類は様々だ。
人間と近い、あるいはほとんど変わらない容姿の種族もいるし、霊的な存在や、知能の高い者もいる。
一方で、本能のままに生きる獣のような魔族だって多い。
「まぁ、確かにそうだけどさ……」
リリウが主張するようにダークエルフは、魔族の中でも魔法を得意とする強力な種族。
森の野犬や賊まがいの暴漢に襲われるような心配は少ないだろう。
とはいえ、リリウは同じ歳の女の子なんだ。
俺が牧師だとか、彼女がダークエルフだとかは関係なく、単純にいろいろと心配してしまう。
「じゃあ、とりあえず一晩くらい泊まってく?」
俺としては、本当に何気ない言葉だった。
もちろん、深い意味なんてない。
だけど、
「なっ!?」
驚いたように声を上げたリリウは、それから急に、顔を赤くして慌て出しちゃって。
「あ、ああ、あんた、さ、ささ、最初からそういうつもりだったんだね!? あ、ああ、あたしに、い、いやらしいことをするつもりで、だから――」
「ち、ちち、違うしっ!! 全然違うしっ!!」
自分の発言が、意図しない意味にも受け取れると気づいた時には、もう遅い。




