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ダークエルフの女の子が、聖職者と仲良くしたらダメですか?  作者: 渋谷 恩弥斎
第1章 少年牧師と、ダークエルフの少女
13/114

02/01. 騒がしい朝(前編)

 次の日の朝。


「ほ、本当にごめんなさい……」


 俺がまだ、となりの教会堂にすら行っていないくらいの早朝、家を訪ねてきたのはアミカちゃんだった。


「そ、そういうつもりは全然なかったんですけど、ちょっとその……気持ちが落ち着かなかったというか何というか」


 玄関先でのあいさつもそこそこに、アミカちゃんは謝罪の言葉を口にする。


「牧師さまは誠実な方だって、ちゃんとわかっているのに、ついつい身勝手な声を上げてしまって、本当に……本当にごめんなさいっ」

「い、いいんだよ、アミカちゃん。俺はほら、全然気にしてないから」


 ある種のケンカ別れみたいになっちゃった昨日の出来事を、彼女は重くとらえてしまっていたみたいだ。


「俺のことを心配してくれてるんだってことは理解してるし、まぁその……り、リリウが少し露出の多い格好をしているのも事実ではあるから」


 アミカちゃんは清楚でまじめな女の子だから、実際はそういうタイプじゃないとしても、あのリリウの姿には、いろいろと思うところもあったんだろうし。


「お、怒ってませんか?」

「怒ってない、怒ってない」

「わ、私のこと……嫌いになったり、とか?」

「俺が、アミカちゃんのことを嫌いになるわけないよ」


 そう伝えると、彼女はやっと表情を和らげて、


「(よかった……)」


 ホッとしたように、胸をなでおろしていた。


「こんなに朝早くから、逆にごめんね、アミカちゃん――今から、朝食にフルーツでも切ろうと思ってたんだ。よかったら、どう?」

「はい、いただきます♪」


 笑顔になってくれたアミカちゃんを招き入れて、俺が作業を始めようとすると、


「朝からうるさいなぁ、もう……」


 奥の部屋から、眠たそうなリリウが歩いてきた。


「ああ、悪い、起こしちゃったか?」

「いつもは、こんな朝早くに起きたりしないんだよ。お昼近くまで寝てるっていう、あたしの正しい生活のリズムが崩れちゃうじゃん」


「何が『正しい生活のリズム』だっての。間違ってるぞ、そんなの」

「ダークエルフ的には正解なの――ふぁーあ」


「起きたんだったら、お前もフルーツ食べるか? きっと、目も覚めるぞ」

「うぅーん……じゃあ、食べゆ」

「わかった。なら顔でも洗って、それで――」



「ちょ、ちょっと待ってくださいっ!!」



 俺がリリウと話していると、突然アミカちゃんが大声を上げた。


「えっ!? え、え、えっ!? 何ですか? 何ですか、これ!? 私、幻とか見ちゃったりしてるんですか? 意味がわからないんですけど、意味がわからないんですけどぉーっ!?」

「あ、アミカちゃ――」

「牧師さまっ」

「は、はい」


 つかみかかってきそうな勢いのアミカちゃんに、俺はとっさに返事をした。


「あ、あの眠たそうな女性は、リリウさん――ですよね!?」

「そ、そうだよ」

「り、リリウさんが、き、きき、昨日までとは違う服装をしていますが!?」

「い、いや……俺の部屋着を貸したから」


 胸当てのような布地とショートパンツしか身につけていないのが普段のリリウのファッションだけど、今は男性用のゆったりとした肌着で、上半身と、下半身の一部を覆っている。


 リリウの肌の露出――特に、そのせいで大きな胸が強調されてしまうのをよく思っていなかったアミカちゃんにしてみれば、俺のゆるい部屋着姿の方が、ある意味では好ましい服装のはず。


 なのに、なぜかアミカちゃんは、ひどく取り乱しているんだ。


「何か悪い魔族に、私が呪いの魔法をかけられていないのなら……」

「か、かけられていないから安心して、アミカちゃん」


 聖職者として、それは保証します。


「い、今、お、おお、奥の部屋から、リリウさんが出てきたように見えたんですけど!?」

「う、うん……そうだね、その通り」

「く、くはっ!!」

「あ、アミカちゃん!?」


 どうしてか彼女は、まるで吐血するような雰囲気でひざをついてしまった。

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