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異世界での目覚め

目が覚めた。

明るい光が瞼を透かして目にはいる。

どうなってるのか見ようにも、目がうまく開かない。

(誰か……!! 誰かいませんか……!!)

声をあげようにも上手く声が出ない。

「ホニャアッ!! ホヤァッ!!」

その声はまるで赤ん坊のようで、まるで自分の声とは思えないものだった。

体も上手く動かない。手足を動かそうにも、寝返りをうとうにも、自分の体がひどく重いかのように、動いてくれないのだ。

(刺されたのだ、そりゃ全身動かないよな……)

それでも、懸命に何とか体を動かそうとする。

アドレナリンが出ているのか、痛みはまったく感じない。このまま病院まで足を運べれば、まだ助かるかもしれない。

(誰か……!! 誰か……!!)

声にもならない情けない声をあげる。誰か助けてくれ!! 血まみれの人間が倒れているんだ!! 通り魔の顔を見たんだ!! 誰か!!

「はいはい、どうしたの坊や」

優しい、女性の声が聞こえた。

そこでようやく、自分の目が開く。

「どうしたのフルコー? おしめでも濡れてるの? お腹へったの?」

目の前にいるのは、巨人だった。

自分より遥かに大きな女性が、自分を抱き抱えて揺らす。

「どうしたシンディ。フルコーがぐずりはじめたのか?」

また別の巨人が、僕の顔を覗く。

「あなた、そうなのよ。おしめはさっき変えたはずだから、おそらくおなかがすいているのね」

そう言って、巨人は自分の胸を露にし、

「ほら、おっぱい飲んでまたねんねしてね〜……」

と優しい声で言うのだった。


その時、ようやく自分が赤ん坊になっていることに気がついた。

それから、驚き、声にならない声でわめき、巨人の女性と男性、僕の両親をしばらく困らせた。


次の日から、僕は今の現状を受け入れるしかないことをしっかりと悟った。

理由としては2つ。

ひとつは、自分の体が、フルコー、この赤ん坊になっていることは紛れもない事実で、夢なんかではないこと。

そしてもうひとつ、これ以上喚いて、ここの両親、シンディ・ユーゴ夫妻を困らせることをすることはよくないとわかったからだ。

この夫妻にはものすごく申し訳ないことをしている。なんせ、息子は誰かの生まれ変わりなのだ。仏教だったか、バラモン教だったか、ヒンドゥー教だったかの転生というやつだ。本来ここの夫妻には何も知らない無垢な子供を授かっていたはずなのだ。

それが……この有り様だ。

僕は一人の人間の人生を奪ってしまった。

だから、だからせめてこの夫妻に恩を返せるように、全力で良い子でいようと思ったのだ。

それの一環として夫妻の苦になるようなことは一切我慢することを決意したのだ。

夜中におしめが濡れて不快でも次の日の朝まで我慢する。

もし、夫妻のどちらかが不快や臭いで気がついてくれたら換えてもらうくらいにする。

極力何も求めず、騒がず、大人しい良い子だと褒めてもらえるくらいまで僕はなんでも我慢した。

そして、ハイハイも、自分で歩くことも出来るようになって、少しずつ自分の出来ることが増えてきて、ようやくこの世界のことが少しずつわかってきた。

最初、どこかの外国の子供にでもなったのかと思ったが、そうではなかった。

ここは、この世界は所謂異世界。ファンタジーの世界であった。

剣と魔法の世界。とはいえ、戦争や抗争はこの近くでは何もないらしい。

母の仕事は普通の専業主婦。父の仕事は薬師だ。

この二つの仕事も、言葉にすれば普通に聞こえるが、炊事に火の魔法をつかい、燃料が薪であることはやはり異常だ。

薬師の仕事も、ビーカーやアルコールランプなんてものはもちろん存在しない。薬も、錠剤やカプセルなんてものではもちろんない。大体が煮出した液体、または乾燥させた材料をすりつぶして混ぜた何かだ。

そんな事を全て理解したとき、僕は学校に通うような年齢にまでなっていた。

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