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特攻娘Jチーム  作者: 加熱扇風機
第一話 特攻娘Jチーム
10/18

3-3 suicide attack

 ブゥゥゥン。ブゥゥゥン。


 っと、腹から携帯電話のバイブレーションの様な振動を感じた。


 俺は腹の中からその振動するもの取り出した。限られたスペースに入れられた超薄型のタブレット通信機器だった。


「こちら白雪」


 画面に映ったのは、七姫とシマリスちゃんだった。


『白雪さんっ! 今の現状はどうなっておりますの?』


『その前にデータを転送しなきゃっ! 通信が出来るなら、データが受け取れるよっ! お兄さん、ウィジャットの操作端末と今持ってる通信機器を接続して! ハブはお腹の中に入ってるからっ!』


「わかった!」


 俺はシマリスちゃんが言った通りにした。ウィジャットが手に入れたデータが、転送されていく画面が表示されていく。


「どうして通信が出来るんだ? 中と外は妨害電波で遮断されているんじゃ?」


『わかりませんわ。こちらも白雪さんのシグナルが突然現れましたの。外に出たと思ったのですが、それがまだ施設内部でシグナルがあって……。それで通信を入れましたの。まさか妨害電波を止めしまいましたの?』


「俺が? そんな事はしてないぞ」


『んー、そうだよねぇ。確かに装置にウイルスは浸食はしてると思うけど、こっちが操作をするまで破壊はできないからね。アレが止まっちゃうとアナログ自動で防犯装置が働く厄介な仕組みだから、絶対に切らせないようにしてたのに。そっちにあるのは監視カメラの操作アプリしか入れてから、絶対に操作はできないはずだよ』


『それよりそちらが騒がしいですわね。まさかっ!』


「あぁ、侵入者発見って外が騒いでるよ」


 その言葉に七姫が悔しそうな顔をした。


『脱出はできそうですの?』


「いやぁ、ここからじゃさすがに……。それにあの警備員の所を今素通りする事はできないだろう。万事休すって所だな」


『わかりましたわ。では今すぐ救助に向かいますわね。ハヤテ、突入開始ですわよっ!』


『了解っ!』


「マテマテっ! 施設内部情報はどうするんだ? まだ見る限りじゃ転送中で、そっちに行き渡ってないぞ」


『後からシマリスちゃんから受け取れば構いませんわ。まず第一に白雪さんの救助を行いますわよ』


「俺なんかいいって! 俺なんかよりも大変な物を発見しているんだ。マテリオンだ。そっちを優先にしてくれ!」


『マテリオンですって? やはりありましたのね……』


「やはりって……」


「おいっ! この中も調べろっ!」


 外の方で兵士たちの声がする。隣の男子トイレから、兵士たちの慌ただしく動く靴の足音がこちらまで聞こえてくる。どうやらこの女子トイレの中も調べられそうだな。


「こりゃ俺はもう見つかるな。抵抗しなければ命は助かるかも知れない。みんなは事が落ち着いてから、しっかりと準備を整えた状態で突入してきてくれよ」


『白雪さん……』


「大丈夫だよ。檻の方も見て来たけど、案外過ごしやすそうな環境だったよ。ノンビリみんなが来るのを待ってるさ」


『……ごめんなさい。ワタクシのせいで』


 七姫が画面の向こうで頭を下げた。


 プライドが高そうな人なのだけれどな。でも責任と言う物の大きさを身に染みてわかっている人だな。たった17歳の少女が、大きな物を背負っている。関心するわぁ……。


「それじゃ通信を切るよ。丁度そっちに転送終了したみたいだし。何か送ってたかバレたら、俺、殺されるかもしれないからさ」


『あぁっ! 後少しでそっちのデータが全て消去できるのにぃーっ! もうちょっと待って! 後少しで証拠は全て……』


「わかった、ありがとう。でももう無理だよ、シマリスちゃん」


 俺は通信端末機を力いっぱいへし折った。何とか4分割に小さくすると、トイレの中に放り込んだ。


 そしてトイレの水洗を押して、全て洗い流した。


 シマリスちゃんが言っていた通り、証拠は隠滅しておいた方がいい。


 次はウィジャットの操作端末だ。さっきの通信端末機が中で詰まってない事を祈る。


 早く水よ溜まれ。このトイレは貯水タンク式だった。水が溜まってから流さないと流れる勢いが弱く、しっかり流れて行かない。


 が、その間に、兵士が女子トイレの方に入ってきた。


「誰もいませんかー?」


 男の声がトイレの中に響き渡る。


 少し入るのを躊躇してるのだろうか。もし女性が入っていたら、後でどんな目で見られるかと言う気持ちがあるのかもしれない。


「早く調べてこいっ!」


「わ、わかりましたよぉー……」


 誰かにどやされて、しぶしぶと言った声でこちらに向かってくる。相手は一人か。そして出口側に一人って言う感じか?


 見つかる前に端末の処理をしないと……。えぇいっ! 貯水タンクの中に隠してしまうか!


 まだ水が流れるフタを開けてポチャンとその中に入れた。


『侵入者を発見したっ! Aブロックだっ! 直ちに総員迎えっ!』


 その時、新しい指示が響き渡って行く。Aブロックって、俺がいる所か? ついに見つかったか?


「えっ? Aに?」


「おい、聴いたか? 行くぞっ!」


「あっ、待ってくださいよっ!」


 そう言って二人の声は遠くなっていった。


 Aブロック? 俺のいる所がどのブロックだか把握はしていないが、二人が遠くへ行ったって事は、ここはAブロックではない?


 誰か他に侵入者が居たって事か? それともJチームが乗り込んだのか?


 まぁ何はともあれ、今の状況は助かったって所か。


 便座の上に座り、深いため息とともに無事だったことを神に感謝した。


 さて、どうするか? しばらく様子見か?


「……あ、ウィジャット」


 俺は操作端末を思い出して、慌ててフタを開けて取り出した。


 完全に水に浸っていたのにも関わらず、画面は未だに起動中のままだった。防水対策しっかりされてるなこれ……。もしかして水中でも使える使用になってたりするのかも……。


 よぉーし、動くぞ。だったらこれで、何処に向かわせるか。今ここから動くと危ないし、何も出来る事がないからな。


 そうだ。そのAブロックってところが気になる。


 換気口から兵士たちの向かう先を見て、ウィジャットもその方向に向かって歩かせていく。


「よっしゃ! 捕まえたぞっ!」


 そんな声と共に、たくさんの人の歓声が沸きあがる声がした。


 とっても便利な換気口から、その場所をまた覗き見する。


 兵士たちに囲まれた中に、同じような兵士の格好をした男性が、後ろ手で縛られて床に這いつくばっている。


 ってアレは、西条家で見たCAAのテリー・ブライアンじゃないかっ!


「コイツは何者だ? またCAAか?」


「おい、オマエは何者だ? まだ仲間は居るのか?」


 捕虜は何も言わず、ただ黙っていた。


「答わないと頭をぶち抜くぞテメェっ!」


 そう言って男の頭にライフルを突き付ける。


「……他には誰も居ない。そしてオレはCAAだ」


「どっから侵入してきた?」


「外と中を繋ぐ換気口からだ」


 おいおいそこって……。妨害電波の他に、侵入を防ぐためのレーザーとか色々と設置されている所だぞ。


 シマリスちゃんも言っていたが、それらの装置を一つでも解除してしまうと、アナログで防犯装置が作動してしまう。作動させないで侵入するには、かなりの手間暇と技術が必要で、失敗する確率も高い。


 ここからの侵入は敵に察知されやすくて、止めた方が無難と七姫は決めていた。


 だからこそ俺の様な侵入方法を選んだのだった。


 なるほど。妨害電波が消えたのは、ブライアンさんが入る時に、邪魔になった為に壊した可能性もあるって事か。


「それはまたご苦労なこった。だけど残念だったな。せっかく入ってこれても数分でこのザマだぜ」。CAAの連中がゴキブリホイホイのようにドンドン捕まって行くぜ。こりゃお笑いざまだな」


 その言葉に周りの連中が一緒に笑い出す。


「コイツを牢に入れて置け。後で色々とじっくり遊んでやるよ」


 立ち上げられたブライアンさんの尻に、その男が手でぱしーんと叩いた。


 うわぁー……。嫌だな……。捕虜になっても、ある意味で無事では帰ってこれなくなるのか。


 捕まらなくてよかったかも。もしかしてさっき寝ていたあの工作員の人も、お尻が痛くて寝ていた……。深く考えないようにしておこう。


 さて……っと。どうしたものか。


 助けたいが、俺の今の装備じゃ無理だな。


 ここは自分のみが脱出するしかないか……。けど今の状況じゃ外には出れそうにないな。


 しばらく経ってから、行ってみるか。


 きっとあの東ってヤツも気が気でないんじゃないか? 戻ってこないオレを心配して。


 あー……、そうだった。


 外部との連絡を取りたいけど、通信機器壊を破壊してトイレに流してしまったな……。


 壊さなくてよかったな。失敗した……。でもあの状況でこうも変わるとは思わなかったし、仕方ない事か。


 ブライアンさんが捕まったこの状況を伝えておきたいな……。


 ……いや待てよ。まだ連絡する方法はあるな。





「七姫っ! 何をしているんだっ! 早く突入して、白雪を助けなければっ!」


 缶詰工場から30メートル離れたコインパーキングに停めたワゴン車の中で、みんなが騒いでいた。


「そうですよぉ。私たちならともかく、一般人である白雪さんに被害を出してしまうなんて……。早急に責任を取って救出するべきです」


 わかっている。ワタクシだってそうしたい。けれど事の重大さは軽視できない程に悪化してしまっている。


「もう少し冷静になってください。今、七姫が綿密な作戦を立てております」


 メイドちゃんが二人を落ち着かせようと、持ってきた紅茶を入れている。


 いつも冷静なメイドちゃんだけれど、その紅茶を入れる手つきで焦っている事がわかる。普段は一滴も零す事が無いその動作が、テーブルに二つも滴がこぼれた形跡がある。


「うぅー、わたしのせいだったらどうしよう。ウイルスなんて仕掛けたせいで、警報機が動いちゃって……。まさかのミスだよぉ! ごめんなさい! お兄さん、ごめんなさい!」


 一番後部座席のシマリスちゃん専用のパソコン付座席の前で、顔をうずめて丸くなっている。


 その様子を見て、ママがなだめに入る。


 ワタクシは補助席にて、白雪さんが命がけで手に入れた情報をもとにして、最高の作戦を考えていく。


 アナタの苦労は、絶対に水の泡には致しませんわ。


 瞬きすら忘れるくらいに、パソコンの画面に食い入る。


 この場所から突入するにあたって、次はここで自衛隊をこちらに展開し、次にワタクシたちは白雪さんがいると思われるこの牢屋へ……。


 計画の設計は後少しで完了する。


 後少しです。待っていてください。白雪さん……っ!


 ジジ……ジジジジジジッ!


「え? なんだっ!?」


 ヤイバが驚いた声を上げた。異常が音がするのもあって、それが気になってワタクシも振り返ってみた。


「なんですの?」


 窓ガラスが円形状に焼け爛れていく。何かレーザーでその部分が破壊されているとわかった。


 直径5センチメートルほどの穴をあけると、そこから見覚えのある物が丸まって入ってきた。


『よぉー、みんな』


「白雪さんっ!」


 それは白雪さんに渡した、ウィジャットだった。そしてそこから発せられた声は、まさしく白雪さんその物だった。


「どうしたのですの? ウィジャットを使ってここまで来るなんて……。捕まってしまっても、ウィジャットが使用できるとは、一体……」


『俺はまだ捕まってないよ。だからこうしてウィジャットを操作して、ここまで来た」


「ウィジャットで? なんでだ? 通信機はどうしたんだ?」


『ごめん。壊した』


 壊した……。そうですか。よかった……。無事で。


「お兄さん! 通信機のシグナルが消えたから、殺されちゃったか捕まったかのどっちかって、みんな心配してたんだからぁ!」


『え? そうなの? シグナルって、あの通信機から出ていたの?』


「そうだよぉ。通信画面も切れてシグナルも無くなって。わたし、お兄さんが撃たれたんじゃないかって思って……。うぅ……」


『あー……。ごめん。急いでへし折ったんだよ。アレが見つかると色々とヤバいと思って、証拠隠滅に折ってトイレに流した』


 トイレに流したって……。


 まぁ確かに。アレを持っていれば外部に何か連絡を取った事がバレますわね。そしてその漏れた情報がどの様な聞き出す為に、拷問を受けてしまう。


「いいえ。白雪さんが行った行動は正しい選択ですわ。それにしてもご無事だったとは……。一体どのように逃げましたの?」


『いやぁ、ずっとその場に居たよ。今もね』


 っと言う事は昨日計画した女子トイレに潜伏を実行中ですわね。


『まぁそんな事より、さっきの騒ぎの原因なんだが、ウィジャットで見た情報だ。CAAのブライアンさんが換気口から潜入して、それがバレて捕まったんだよ。あの警報騒ぎは俺が見つかったんじゃなくて、ブライアンさんの失敗からだったようだ』


「ブライアンさんが? 全く……。手は出さないでと言って置いたのに……」


 功を焦りましたわね。それとも、ワタクシたちには知られたくない事情があるのか……。


『ブライアンさんは、牢獄の方へ連れて行かれた。これで人質一人追加だな』


「ですわね。自衛隊の方にも伝えておきますわ」


 全く持って余計な事を……。おかげで白雪さんが危険な目に合いましたわ。


『俺はこのままこの場所に留まって置くか? それともこのまま脱出しようかってのもあるけどね』


「出られそうですか?」


『騒ぎは落ち着いたし大丈夫そうだ。それに俺がいつまでも出てこないと、それはそれで怪しまれそうだし』


「そうですわね。タイミングを見て可能と思われたら出てきてください。ワタクシたちはその入れ替わりに突入しますわね」


『お? ついに始まるのか? くぅー、写真撮りたいよ。せっかくのチャンスだっていうのに』


 白雪さんのカメラは、暇を持て余したシマリスちゃんが、騒ぎが起こるまでいじっていた。白雪さんの所持品はこの車の中に置いてある。


「……でしたら、カメラなども一緒に、そちらに持っていきますわよ」


『え? 本当?』


「おいマテ、七姫。白雪をまた危険地帯に送り込むつもりか?」


「白雪さんが外に出た時点で、後は彼の自由ですわ。ワタクシたちの仕事ではなく、彼の仕事をするだけです。ワタクシたちには、彼の仕事に何も言えませんわよ」


「そう言われると……」


「大丈夫ですわよ。彼はあの状況を乗り切り、そして難関を乗り越えるだけの知識と技量、度量を持ち合わせていますわ。ワタクシたちが守らずとも、いつも通りに自分で何とかしていきますわよ」


『あははー、ありがと。七姫にそこまで褒められちゃ、最高の写真を撮らなきゃな』


 本当に、彼は不思議な人ですわね。


 Jチームを結成し、最初の仕事の時に偶然に出会ってから、今まで幾度もワタクシたちの前に現れた。


 なんてうっとうしいコバンザメと思いましたわ。


 けれどワタクシたちでも危険で大変な場面でも現れる。そしてある時には、ワタクシたちより先に危険な所まで踏み入ってまで、その写真を撮りにいく。


 あの行動力と能力には、ワタクシも完敗せざるえなかったですわ……。


 もし彼が望むのなら、ワタクシたちのチームの一員に……。


 ……いえ。彼はカメラマンとしての仕事に生きがいを持っている方ですわね。彼は彼の場所で、頑張る方がいいでしょう。


「ワタクシたちの作戦実行時間は、19時20分ですわ。その間にまで出られるかしら?」


『あぁ、大丈夫だ。それじゃ、そろそろバッテリーも切れかかってるし、伝えたいことは全部伝えたよ。そっちはないよね?』


「えぇ、問題ありませんわ。あ、忘れていたことが一つありましたわ」


『ん? なんだ?』


「ご無事で何よりですわ。怪我のないようにお気をつけて」


『あぁ、わかった。それじゃ』


 ウィジャックの電源が落ち、足を畳んで丸まった。


 本当に無事でよかった……。本当に……。


 ……さぁ、次はワタクシたちJチームの出番ですわ。


「ではこれより、作戦内容を説明致しますわ。皆さん、よろしいですわね」


『おぉーっ!』

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