CROSSOVER episode.1 空の向こうで、誰かが呼んだ
白い輪は、もう空に見えなかった。
ルーナ村の畑には水が流れている。リュミナ村へ続く道には、白い灯りがぽつぽつ並んでいる。村人たちはまだ空を見上げたり、畑を見たり、井戸をのぞいたりしていた。
ミオは白狐を抱えたまま、透明な石板をそっと開いた。
「もう見ないのでは」
「見るだけ」
「出ました」
白狐は疲れた声で言った。
石板の表面に、いつもの村落ログとは違う線が走る。
[ORIGIN-7 CROSS-LINK]
――――――――――
遠隔管理者反応:検出
系統:惑星基盤
同期率:0.004%
通信:不可
観測語:REN
――――――――――
ミオの指が止まった。
「……レン?」
声に出した瞬間、胸の奥がきゅっとした。
白狐が耳を立てる。
「知っている名ですか」
「分からない」
嘘だった。
分かっている。
けれど、ここで認めると、何かが崩れそうだった。
石板が小さく乱れた。
砂のような光が流れる。
その向こうに、暗い場所が見えた。
金属の床。
赤い警告灯。
焼けた機械。
誰かの手。
そして、短く途切れた声。
「……ミオ」
ミオは息を止めた。
顔は見えない。
それでも、その声を知らないとは思えなかった。
「レン」
呼んだ声は、空に届かなかった。
石板の表示が揺れ、すぐに消える。
[CROSS-LINK STATUS]
――――――――――
映像断片:消失
通信経路:未確立
管理者候補:別系統に存在
再同期条件:不明
――――――――――
白狐は、ミオの腕の中で黙っていた。
しばらくして、小さく言う。
「今のは、空の上ではありません」
「じゃあ、どこ」
「もっと遠い場所です。けれど、同じものの中です」
ミオは空を見上げた。
白い輪はない。
青い空だけが広がっている。
でも、どこかで誰かが、同じ名前を呼んだ。
それだけは、はっきり残っていた。
「続きが読みたい」と思ったそこのあなた!下の評価とブックマーク登録をしてもらえると嬉しいな!
第二章も近日中に公開されます!ブックマークして待っててね!




