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他に愛する人のいる彼の元を去ったら、何故か彼が追いかけてきます  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)


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50 第四皇女の秘密

第四皇女リラの母親は、イザークと同じく平民の女性だった。

持ち前の美貌で皇帝の目に留まり、数年間彼と過ごした末に子供を身籠った。



しかし、体が弱かった母親は出産と同時に亡くなってしまい、赤子のリラを残してこの世を去った。

それからというもの、リラは皇宮で虐げられながら生きていく羽目になった。



皇帝は死んだ女に興味など無いのか、既に他の女を堂々と皇宮で囲っていた。

リラは両親も頼れる兄弟もいない中で、一人ぼっちで過ごしていた。



イザークのように何らかの才能を持ち合わせているわけでもない彼女にとって、そこでの暮らしは苦痛そのものだった。

女である以上、皇位継承ができるわけでもないし、成長すればどこかの貴族の元へ嫁がされる。

自分はきっと、そのために皇帝に生かされているのだろう。



リラは自分によく似た顔の女性が描かれている絵をじっと見つめていた。

その昔、リラがまだ生まれてくる前に宮廷の絵師によって描かれたものらしい。



その女性はリラの実母であり、皇帝に遊ばれた末に命を落とした女性だった。

母親が生きていれば、何か違っていたのかもしれないと思うが、そうとは言い切れなかった。

平民の女など、どうせ生きていたところで皇妃にすらなれないからだ。



お母様、どうして私を残して死んでしまったんですか。

あの日、亡くなったのがあなたではなく私ならどれだけよかったか。



リラはそのような思いを抱えたまま、成長していった。



***



その日、リラはいつものように皇家主催のパーティーへ出席していた。

彼女は茶色のみずぼらしいドレスを着用し、貴族たちの前に姿を現した。



「第四皇女ったら、こんなにもめでたい日にあんな格好で来るだなんて……」

「仕方が無いさ、彼女の皇宮での立場を思えばね……」



招待された貴族たちは憐れむような目でリラを見つめた。

皇族である自分がそのような視線を向けられるだなんて。



「あらぁ、お姉様。いらしていたのね」

「マイラ……」



一人ポツンと立っていた彼女に話しかけたのは、二つ年下の異母妹である第五皇女マイラだった。

マイラは昔からリラを敵視し、何かと彼女に突っかかっていた。



そして今日も取り巻きを連れ、リラの前に現れた。



(……母親に私を貶めるように言われたのかしら)



マイラの母親はリラの母親のような平民の女性ではなかった。

第一皇妃であり、元々は侯爵家の令嬢だった女性だ。



何の後ろ盾も無いリラが、彼女に対抗することなどできるはずがない。

リラはただいつものように、マイラからの罵声に耐えていた。



しかし、そんな彼女の前に救世主が現れた。



「――美しいレディー、私と一曲踊ってくれますか?」

「……あなたは」



リラをマイラから庇うようにして立っていたのは、セレナイト公爵家の嫡男であるキースだった。





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