48 キースの恋人
カイルの誕生日パーティーから数日が経った。
あのあと、フィオナの元には彼からのお礼の手紙が届いていた。
「カイルはすっごく真面目な人なのね、アロイスならこんなの書かなかったわよ」
「お礼の手紙を書くことくらい当たり前だ、お前は何でもアイツと比べすぎなんだよ」
「そ、そうかしら……?」
キースの言葉に、フィオナは苦笑した。
アロイス以外に親しい男性がいないフィオナは、どうしても彼以外に比較対象が無いのだ。
(どんな男性であろうとも、アロイスよりはマシだってお兄様は言うけど……)
意外とその通りかもしれない。
無関心というのは何よりも辛い。
暗い表情になったフィオナに、キースは話題を変えるようにコホンッと咳払いをした。
「ところで、今日お前に紹介したい人がいるんだ」
「紹介したい人?」
フィオナは顔を上げてキースを見つめた。
「あぁ、今日の夜……父上と母上にも紹介するつもりなんだ」
「それってもしかして……恋人?」
彼女の問いに、キースは恥ずかしそうに視線を逸らした。
「恋人というか……まぁ、結婚を考えている相手というか……」
「それを恋人って言うのよ!」
フィオナは立ち上がり、キースに迫った。
「ちょっと、いつの間に出会ったわけ!?私全く知らなかったんだけど!」
「そりゃあ、兄弟の恋愛事情なんか普通興味ないだろ」
「そんなことないわよ!」
照れたように頭をかくキースを、フィオナは問い質した。
「お相手はどんな人なの?」
「とても優しくて……美しくて……俺には釣り合わないくらい素敵な女性だ」
「まぁ……お兄様ってそんなこと言うタイプの人だったのね」
キースがそんなに女性を褒めるのは初めてかもしれない。
彼女のことを考える彼の頬を赤く染まっていて、恋に落ちたのだということが誰から見ても明白だ。
「お兄様ったら、照れちゃって!」
「あまり俺をからかうなよ」
こんなにも余裕の無いキースを、フィオナは初めて見た。
「その女性とはどこで出会ったの?」
「前、皇宮を訪れたときにたまたま会ったんだ。二人で話しているうちに惹かれていて……」
「それで交際するに至ったわけね?」
「あぁ、彼女とは今すぐにでも結婚したい。そうしなければいけないんだ!」
切羽詰まったような顔でそう言ったキースに、フィオナは首をかしげた。
「……そうしなければいけない?」
「まぁ、今日の夜ここへ来るから。詳しくはそのときに言うよ」
***
そして、夜になった。
公爵邸を訪れたキースの恋人を見たフィオナは、驚きのあまり固まった。
「――初めまして、セレナイト公爵夫妻、公女様。第四皇女のリラ・オランジュと申します」
何とキースが恋人になったのは、前世で彼の妻となった第四皇女だった。




