それが善意であったのは間違いないのです
この章と次の章は悲しいお話
ここにきて、本気で困る事態が発生したのだ。
各国からのドラゴン退治の指令である。
特に、財宝を貯める傾向のある竜種の討伐はあからさまだった。
財宝の提出は義務。下手すると素材まで提出。
しかも報奨金は雀の涙。
そんなもの受ける通りもない。
イエロードラゴン討伐依頼の件以降、報奨金が絡む依頼は受けないようにしていた。
ドラゴンゾンビ討伐とかを勝手に追加で依頼されたりするリスクを理解したからだ。
そもそも私達には無理な依頼ばかりが来るのだ。ブレス攻撃を主体とする、フレイムドラゴンとブラックドラゴンは、特に依頼が殺到したが、断り続けた。
淡々と狩りやすいドラゴンを狙い、素材を売りさばく。
そんな旅を続けようと、次の討伐先に向かう途中、ミラーからの悲鳴のような相談が来た。
「助けて欲しい。私ではどうにもならない」と。
「大恩あるミラーさんの頼みです。戻りましょう」遠距離会話での相談だ。相当追い込まれているのは分かる。
「うむ。戻るのはどうする?」
「転移で行きましょう。私とオルグナの二人で」
「うむ」
他の人達にはその街で待ってもらうことにした。
二人でミラーさんのところに行くと、信じられない光景があった。
「み、ミラーさん……?」
「お、おまえ、ミラーか」
目の下に真っ黒なクマ。
明らかにやつれた身体。
「メイル、オルグナ、遠くから、ゴメンね」
「どうしたんですか?もちろん話しは遠距離会話で聞いていますが、それにしても」
ここまでやつれるのは異常だ。
「寝れていないのか……?」オルグナ。
考えられるとしたらそれだ。グリモアの眠り姫。冒険していたころから徹底的に寝ていた。
その睡眠量は異常だったが、それが故か健康で、魔力は莫大だった。
「…うん。困り事が多くてね」
「…とりあえず、手紙の通り、まずは屋敷に行きます」
その屋敷の内情は酷いものだった。
ミラーさんの手紙にもあったが、実情はもっと酷い。
完全な格差社会が出来上がっていた。
元々は、ミラーがいつも寝ているため、屋敷内への侵入を放置していた為集まった子供達。
文句を言いに来た親達に、なにも分からず金貨をばらまき黙らせたミラー。
それは「子供の買取行為」そのものだった。
そこまでは良い。
ミラーはその後旅に出た。
屋敷には有り余る金貨。
引き取られた子供達は、家政婦として雇われたレンさんの料理をたらふく食べられる。
そして、暴力にも怯える必要がない。
主人のミラーがいないのだ。
完全に自由。
そんな噂を聞いて、他の子供達も殺到した。
最初は同情的だったのだろう。
自分達も同じ境遇だったのだから。
しかし、正式に金貨により買取をされた自分達と、勝手に逃げ込んだ子供達の差により、屋敷は混乱した。
衛兵が親からの通報を受け屋敷に来る。
ミラーがいれば金貨ばらまきで済ませるが、ミラーはいないのだ。
子供達は連れ戻される。
それだけならばまだしも、衛兵達には、金貨による買取の子供達との差が分からない。
契約書もなにも無いのだ。
その結果、直接親が来ない子達は
「親が売った」と嘘をついた。
それがどういう事態を招いたか。
一つの嘘がばれると、すべての嘘を確かめなければならない。
即ち、金貨ばらまきで買取された子供達の親にも問い合わせがいったのだ。
親の中には「また金貨がもらえるかもしれない」と欲を出し
「売ったつもりはない」
と騒ぐ親もいた。
ちょうどその頃、ミラーは帰ってきて
「やかましい。眠らせろ」と
500枚の金貨を屋敷の前に置き騒動を収めた。
ミラーのやったことは、本来は契約書を並べるか、役人の立ち合いの下、1人1人、やりとりしないといけない話です。
ミラーはコミュニケーション能力があまりないのと、一日の2/3を寝ているせいで、そういうのがおろそかになっていました




