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いつか来世で約束を 01  作者: 朱本来未
絶命因果編
39/63

第038話 死者延命13

 意識を取り戻すといつもと違う感覚に頭の奥が鈍く痛みこめかみを押さえる。妙な頭痛に苛まれながら辺りを見回すと私はベッドに寝かされ、ゲイルは私の側で突っ伏すようにしてぐったりとしていた。そのままそっとしておこうとしたが、彼は私が目を覚ましたのに気付くと取り繕うように身体を起こした。


「どうにか魔力供給出来てたみたいっすね」

「なんか頭痛がひどいんだけど、いつもと違う魔力を供給されたのが原因だったりする?」

「すいません。たぶんそれ、俺の技量不足で全身に上手く魔力を行き渡らせられてなくて魔力循環不全になってるのかもしれないっす。そもそも、ねぇちゃんをまともに活動させられるだけの魔力量が足りてないのもあるかもしれないっすけど」

「対処法は?」

「今の俺にはなにも」

「じゃ、仕方ないか」

「魔力がある程度回復したら再度魔力供給しますんで、それまでは我慢していただけると助かります」

「はいはい。それで、これからどうすんの?」

「ダンナのところから業魔ごうまの胴体だけでも回収しないとまずい気がするんすよね」

業魔ごうまって、あの血塗れのやつ?」

「えぇ、あれから採取した血で生命霊液エリキシル精製してるんで」

「回収するにしてもあのまま部屋に置いてるとも思えないし、どっかに隠されてたりしたら面倒ね。いっそ屋敷に火でも放ってみる?」

「そんなことしたらダンナまで焼け死んじゃいかねないっすよ」

「そっち気にするんだ。あんたの師匠せんせいと同門の彼を殺した相手なのに」

「そりゃそうっすけど、いいんすか?」

「え、なに、私のこと気にしての判断なの? 私から提案してるのに私が気にしてると思う?」

「あー、いえ、それならいいっす」

「薄情かな?」

「そんなことはないと思うっすよ」

「残念。私はあの男に愛情なんて一欠片もないんだから、その解答は不正解」

「なのに結婚してるんすか?」

「お買い上げされちゃったからね。ま、そういうわけよ。だから、気に病まなくていいってのも変だけどさ。彼をあのまま放置したらどう考えたって危険でしょ」

「まぁ、俺もそのうち殺されかねないっすからね」

「はい、決まりね。それじゃ、その前にひとつ、完成品の生命霊液エリキシル出してくれない?」

「もうないっすよ」

「まさかとは思うけど、私に使ったの」

「俺の魔力だけじゃ、どうにも出来なかったので」

「そう。じゃ、代わりにこれをあげる」


 と懐から毒液の入った小瓶を取り出してゲイルに手渡す。彼は軽く振ったりなどして中身がなんであるかを判別しようとしていた。


「それに入ってるのは蛇の毒よ。血が止まらなくなったりするやつね」

「出血毒のことっすか。なんでそんなものを」

生命霊液エリキシルをダメにしてやろうかと思って」

「どう考えても嘘じゃないっすか。前もって準備するのも容易じゃないっすよ、これ」

「それは護身用としていつも持ち歩いてるやつだよ。なにがあるかわかんないからさ」

「監禁されたりとかしてるみたいですから納得出来なくもないっすけど、これをどうするんすか?」

生命霊液エリキシルをつくれなくしてやろうかと思って。業魔ごうまってやつの血が材料なんでしょ。屋敷燃やしてもあれが燃え残ってたときは、それでどうにか出来ない?」

「出来るかもしれないっすけど、なんでそんなこと」

「腹立つからよ。死んでまでお人形遊びに付き合わされてうんざりなの。だから根本からぶっ壊してやんのよ。あんたの研究全部無駄にしちゃうことになるけど、あんたなら働き口なんてすぐ見つかるでしょ」

「宛はなくはないっすけど」

「じゃ、心配はいらないよね。ほら、さっさと行くよ。彼に時間与えたら余計なことしそうだし。私も彼から離れた以上、魔力供給もままならないから遠からず動けなくなるでしょうから」

「申し訳ないっす」

「全部終わらせるつもりだから気に病まないの。あ、そうそう火を簡単に消えないようにするものとかあったら用意して貰えると助かるかも」

「照明用の油なら少しくらいあるっすけど」

「魔法で派手に燃やしたりは?」

「その手の対策してないとは思えないっすよ、あの屋敷」

「それもそうね。松明持って屋敷中に火を放ってやるしかないわね」

「本気でやるんすか」

「冗談で言ってると思う?」

「全く」

「無駄なこと言ってないで行くよ。と言いたいとこだけどまともに歩けそうもないから屋敷まで運んでくれないかな」

「俺が断ったらどうするつもりだったんすか」

「断らないよ、あんたは」

「嫌な信頼っすね」

「嬉しいでしょ?」

「否定はしないっす」


 とのやりとりの後、彼は私を背負って屋敷まで駆け、夜も深まった頃にようやく到着した屋敷はいつも以上に寂れた空気が漂い人気が全く感じられなかった。


「覚悟は?」

「念を押されなくとも問題ないっすよ」

「じゃ、私は屋敷の中に火を放ってくるからあんたは外ね」

「大丈夫なんすか」

「なんとかなるでしょ、見つかったときはあんたより私の方が生存確率は高いと思うよ。もう死んでるし」

「笑えないっすよ」

「つまんないやつね。とにかく頼んだわよ」

「了解っす」

「あー、そうそう。もしものときは庭の花の世話お願いね。あんたに貰った種さ、あと60日もすれば咲くと思うからさ。ちょっと長いかもしれないけど、よろしくね」


 それに対してゲイルは返事をせず黙す。そんな彼を初めて会ったときと同じように手招きする。彼は渋い顔をしていたが素直に従った。そんな彼の額を思いっきり指で弾く。


「痛いっすよ」

「そろそろ魔力は回復した?」

「まぁ、多少は」

「そ、じゃあ、最後に魔力供給を」


 と彼の襟元を引き寄せて強引に口付けた。


「ちょ、なにするんすか」

「なーに顔赤くしてんのよ。単なる魔力供給でしょうに」

「聞いたことないっすよ、こんなの。それに魔力なんて全然」

「はいはい、魔力は充分頂いたから松明に火を付けなさい」


 頬を赤く染めたゲイルは釈然としない様子がったが、指示に従って長めの薪に油を浸した衣類の切れ端をぐるぐると巻きつけてつくった松明に着火魔法で火を付けた。

 赤々と燃える松明を両手に持って私は屋敷の中へと入り、ゲイルは余分に用意した松明に火を付けて屋敷の周辺を歩きながら燃えやすそうな位置に仕掛けていった。


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