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いつか来世で約束を 01  作者: 朱本来未
絶命因果編
37/63

第036話 死者延命11

 グウェンは相手が絶命したのを確認し、ずるりと血に塗れたナイフを引き抜くとキースの方へと向き直る。状況についていけなくなり、呆けていた彼もこれからなにをされようとしているか気付いたようで、慌てて逃げ出そうと部屋の入口へと足をもつれさせながら駆けドアに体当たりする。しかし、ドアは開かない。焦った彼は判断能力が欠如しているらしく、内開きの扉を押し開けようとドアノブをガチャガチャと鳴らしては体当たりするという恐慌状態に陥っている。そんな彼の背に情け容赦なくグウェンの凶刃が襲いかかり、命を奪い取った。


「グウェン、なにを」

「すまない。驚かせてしまったみたいだね」

「そうじゃなくて」

「彼らなら大丈夫だよ。きっと感謝してくれる」

「なにを言っているの。わからないよ」

「心配しなくてもすぐにわかるよ」


 答えながら彼はキースの亡骸をドアの前から引きずって部屋の隅へと移動させる。床にはびっちゃりと血だまりが今も広がり続け、彼はそれを気にすることなく踏み荒らす。


「今度はなにをする気なの」

「もうすぐ私たちの幸せが運ばれてくるからね。そのための準備をしているんだよ」

「なにが来るっていうの」

「私たちの永遠の未来を約束してくれる秘薬さ」


 理解不能なことを口走る彼の言動を理解するのは辞め、転生者の胴体トルソを破壊することを優先すべきだと頭を切り替える。手持ちの小瓶2本分しかない毒物だけで生命活動を停止させられるかは怪しい。心臓に直接投与出来れば可能性はあるかもしれないが、この部屋にある刃物はグウェンの持つものだけで奪い取ることは無理に等しい。


 次の機会を狙うべきだろうか?


 などと思索を巡らせているとドアが軽い調子でとんとんとノックされた。


「お返事がないので勝手に上がらせてもらいましたが、師匠せんせいとダンナ様はこちらでしょうか? 完成品の見本をお持ちしたのですが」

「あぁ、入ってくれ」

「すいません。両手がふさがっているのでドアを開けていただけると助かります」

「少々待ってくれ、今開けるよ」


 返答しながらグウェンはナイフを握り直し、それを後ろ手に隠すようにしながらドアノブに手をかける。そうしてそっと開けて、ドアの前に立っているであろうゲイルを招き入れようとした瞬間、彼は思い切り開かれたドアに跳ね飛ばされ、床に叩きつけられる。グウェンはナイフを持ち後ろ手に回していたことが災いし、彼の腕はあらぬ方向にねじ曲がり、ナイフの切っ先は彼の背中を少しばかり傷付けた。

 血に塗れた部屋に突入して来たゲイルは室内の惨状を目の当たりにして驚愕に目を見開いていたがソファに硬直して座り込む私の姿を認めると痛みに呻くグウェンを一瞥し、私の元に駆け寄り半ば強引に私を部屋から連れ出した。

 ゲイルに腕を引かれて無理に走らされるも左足の不具合が足を引っ張り、今にも転んでしまいそうになる。


「痛い」


 声を上げて訴えると彼はようやくそれに気付き、私を抱え上げる。


「お叱りは後で受けるんで今は我慢してください」


 とだけ言って屋敷の外へと駆け、門を潜っても足を止めることなく走り続けた。それから十数分後、私が連れて来られたのはぼろぼろで薄暗い掘っ建て小屋だった。


「必要そうなもの取って来るんでここで待っててください」

「どこに連れて行く気なの」

「考えてないっす。気付いたら身体が動いてたんで」

「助けられてこんなこと言うのもなんだけど、正気?」

「冷静さを演じられるくらいには」

「いや、かなり直情的だったわよ」

「今はそういうこと置いておいてくださいっす。とりあえず荷物取って来るんで」

「悪かったわね、変に引き止めちゃって。いってらっしゃい」


 送り出してすぐに彼は大荷物を背負って帰ってきた。


「お待たせしました」

「大丈夫なの? 不安なんだけど」

「匿ってもらえそうなひと知ってるんでどうにかなると思うっすよ」

「そのひとも骸操士ネクロマンサー?」

「違うっすよ」

「そう、ならいいけど」


 そうしてどことなく見覚えのある街並みを連れられて行き着いたのは人体売買をしていた男の家だった。私が生骸ゾンビとして目覚めて以来の再訪問だけれど人が住んでいるような気配はなく、しんと静まり返っている。ゲイルがノックしてみても応答はない。


「留守なんすかね。まだ昼過ぎっすし」

「勝手に入っちゃいましょ。緊急時だし」

「いいんすかね」

「他に宛あるの?」

「ないっすね」

「じゃ、入るよ」


 いつまでもぐだぐだとやっているゲイルを置いて、玄関に手をかけるとなんの抵抗もなく、すっと扉は開いた。


「無用心ね。鍵もかけてないなんて。こっちとしてはありがたいけど」

「なんか変じゃないっすか?」

「そういうひとなんでしょ」

「そう言われるとそんな気もして来るっすけどね」

「とにかく入るよ。玄関先にずっと突っ立ってる方が変でしょ」

「そうっすね」


 室内は以前見たときとほぼ変わっていなかったが、1日2日留守にした適度ではないくらいに埃っぽかった。グウェンが処理したと言っていたから彼はとっくに殺されている可能性は高い。なんにしてもここに数日滞在させてもらうことになりそうなので各部屋を見て回ることにする。探せば私のために誂えた服も残っているかもしれない。そう思って全ての部屋を見て回ると案の定着替えとして使えそうな服を何着も見つけることが出来た。

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