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いつか来世で約束を 01  作者: 朱本来未
絶命因果編
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第025話 業務更新05

 目を覚ますとここ数回帰還地点としていた宿屋の一室ではなく、薄暗く深海めいた雰囲気の漂う部屋に帰還していた。


「ようやくのご帰還か」


 随分と久しぶりに耳にする声の主に対して私はベッドから起き上がることなく、このまま声を投げかける。


「局長が私になんの用ですか?」

「久しぶりだというのにご挨拶だな」

「当然だと思うのですが」

「ご立腹なのはわからんでもないがね」

「説明責任を果たしてくださいませんか」

「事前説明が不足しているのは承知している。そのことに関しても今回説明させてもらう」

「それとひとつ気になったのですが、リンナはどうしたんです。私をわざわざこちらに呼び戻したのも解せませんけれど」

「あの子は一時凍結処分だ。独自に顕界へと干渉したりと問題行動が目立っていたのでな。今回、君の左腕に生じていた不具合もそのひとつだ」

「なぜそのようなことに?」

「口約束を早急に成立させるために顕界へと転送する前に色々と因果に手を加えていたようだな。いつも肉体に生じていた損傷もなかっただろう?」

「口約束?」

「次の任務がつつがなく済んだら、というやつだ」

「その辺りも監視されてるんですね。別に構わないですけれど。それにしてもそんなことのためにリンナがあんなことを?」

「そういうことだ。その影響で、あの子自身にも不具合が生じてな。自身の左腕に細工をしたのだから当然といえば当然なんだがね」

「話を聞く限り、局長の交換移植実験がそもそもの原因だと思うのですけれど」

「確かに相互に与える精神的な影響は大き過ぎるようだが、任務達成率が目に見えて上がっているのも事実だからな。失敗と断じるにはまだ早いよ」

「物は言いようですね。局長が実験を続けられるのは勝手ですが、リンナが凍結されたのなら私の左腕も使い物にならなくなるんじゃないでしょうか。事実、帰還直前には私の身体機能を阻害してきていましたよ」

「あれは想定外だったな。だが安心するといい。その対処に関しては既に優先して処理済みだ」

「本当に大丈夫なのでしょうか? ここのところ情緒面が不安定になりがちですし、今回に至っては最も有効な選択を避けるなどという私らしからぬことをしていましたから」

「それに関しては君にも責任がある」

「一体どういうことなのでしょうか?」

「ここのところ君は局に帰還せずに特定の顕界に帰還地点を設けていただろう。あの人格で任務時に形成された人格を上書きしようとしてのことだろうが実際のところは上書きではなく、上塗りしかされてなかった。それを何度も繰り返すことで人格が積層化され、表面上の人格に下層の人格が干渉をし始めていたようでね。その干渉力は滞在した顕界の時間と比例していたのさ。覚えがあるだろう? 人格の上書きをするのなら局に一旦帰還して初期化せねば無理だよ」

「それでこちらへと強制送還されたのですか」

「それも理由のひとつではあるがね。また別の問題も発生していてな」

「別の問題ですか?」

「そう、別のだ。君が帰還地点としていた顕界の肉体が活動を停止されてしまったのだよ」

「どういうことです? あの肉体を離れる際は因果干渉停止措置を部屋に施していて外部干渉を受け付けないはずなのですが」

「それなんだが今回のことと関係していてね。あの子を凍結した際に施された因果干渉停止措置に綻びが生じてしまったというわけだ」

「仕方ないですが、あの身体は破棄ですね」

「それがそういうわけにもいかなくてね。あの顕界で君は5体の転生体を駆除しているが、その中に死後に異能を発動する者がいたらしくてね。今回の騒動で無防備になった君の魂が留守にしている肉体を害したというわけだ。一度こちらで任務完了と処理した案件だが、今一度対処してもらえると助かる」

「それを受けるのはかまいませんが、あの顕界での肉体が活動停止されたとなると私は再転生するのですか? 身体は破棄しないとはおっしゃってはいましたが、再利用出来るとも思えませんし」

「いや、あの肉体を継続利用する。それほど損壊していないようだしな。私が殺し治して送ってやるから安心しろ」

「わかりました」

「悪いね。その処理が済んだら今回のこちらの不手際の件も含めての報酬と長期の休暇を出すからゆっくりしてくれ、望むのなら他にも報酬を上乗せを検討する」

「では、生前の記憶の再生をお願い出来ますか。一部欠落しているようですから」

「君がそれを望むのならかまわないが、後悔はするなよ」

「する理由が見当たりません」

「そうか。では用意しておく」

「ありがとうございます」

「転送の準備が整うまで待機していてくれ、ではな」


 部屋から出て行く局長の背中を目で追いながら彼女の口にした『後悔』の理由がつかめず首を捻った。

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