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いつか来世で約束を 01  作者: 朱本来未
絶命因果編
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第014話 精神侵食01

 荒野に散発的に炸裂音が響き渡る。悪路で不安定にがたつく車内で声を張り上げる。


「魔弾使いなさいよ。出し惜しんでたら私ら速攻あの世行きだよ」

「少し待ちなって、こんなとこで使っても貴重な魔弾が無駄になるだけだぞ。西に真っ直ぐ行ったとこに湖があったはず。とりあえずそっちに向かいな。はい、GO! GO!」


 天窓から半身を出しているロジィは天井をバンバンと叩いて指示を出してくる。願ったり叶ったりだと私はハンドルを切った。

 後方から迫る鎧蟲がいちゅうの群を警戒しながら方向転換を終えてすぐに魔導機関へと両脚から魔力を全力で注ぎ込む。魔導車は急加速し、身体が座席へと押し付けられる。


「おいおい、もっと安全運転してくれよな。危うく魔杖筒バレル落とすとこだったじゃねーか」

「この状況でのろくさ運転してられるわけないでしょ」

「わーかってるって。でも、もうちょっと手心をな」

「いいからさっさと鎧蟲どもの牽制してなさいよ」

「ハイハイ、やりますよっと」


 少し投げやりにロジィは応じながら鎧蟲の群へと魔砲まほうを放つ。ちらりとルームミラーで後方を伺うと握り拳大の弾丸は群の手前に着弾し、もうもうと土煙を上げる。目眩しとしては充分な成果だが、鎧蟲どもへの効果は期待出来なかった。


「見えたわよ、湖」

「OK! ギリギリのとこまで車寄せて、湖に車体の側面を向けて待機。あいつらが迫って来たら合図出すから、それに合わせて急発進。そんでもって勢い余ったあいつらは湖にドボンってわけよ」

「そう都合よく突っ込んでくれるといいけどね」

「いくに決まってる。あたしを誰だと思ってんだ」

「ロジィでしょ」

「冷め過ぎ。もっとあたしを盛り上げて」

「そんな状況?」

「こんな状況だからこそでしょ」

「はぁ……」

「なーにあきれてんのさ」

「ともかく来たわよ。なにするつもりか知らないけど、最後は任せるわよ」

「任せときなって」


 言われるままに指定位置に魔導車を移動させて一気に魔力を注ぎ込む準備をして待機する。呼吸を止め、その瞬間を待つ。


「GO!」


 掛け声に合わせ、魔導機関が唸りを上げるほどに大量の魔力を瞬間的に注ぎ込む。車体前方が一瞬わずかに浮き上がりながら急発進する。直後、さっきまで車体のあった場所を次々と鎧蟲が駆け抜けて、湖へと突っ込んで行った。

 ロジィがなにをする気なのかは知らないが、湖が浅くてちょっとした足止め程度の効果しかなさそうなのが不安だった。


「こいつを喰らいな、鎧蟲ども」


 有らん限りの声を張り上げ、ロジィは魔砲を放つ。それはさっきまでの弾丸とは違って中核に魔弾が使用されていた。

 放たれた魔弾は、外部を覆う魔力を収束させながら鎧蟲の群の中央へと着弾した。

 直後、魔弾に刻み込まれていた術式が発動すると一瞬の内に湖は凍結して鎧蟲どもをまとめて凍り付かせた。


「よく凍結術式の魔弾なんて持ってたわね」

「そんなもんないよ」

「は?」

「いやさ、持ってた魔弾で使えそうなのなくてさ。一発だけなにも術式刻印もされてないやつあったから即席でちょちょいってね」

「なに言ってん、あんた。刻印されてなかったのって、もしかしなくても虎の子の上級魔弾じゃないの。しかもなんなの即席で術式刻んだって、私はそんな博打みたいな作戦に付き合わされたの?」

「ほら、あたしって天才だろ。だからさ絶対成功すると思ったんだよね」

「確かに成功はしてるけどさ」

「それにほら中型5体に小型3体も捕獲できたんだし、稼ぎも上々でしょ」

「どうやって回収するつもりなの?」

「どうって、いつも通り普通に売っ払えそうな外殻剥ぎ取って核になってる魔導球引っこ抜くだけだろ。あんだけあれば上級魔弾一発くらいなら購入してもお釣り来るんじゃないか?」


 お気楽に言ってのけるロジィの顔をじっと凝視しながら凍り付いた鎧蟲の群をびしりと指差して苛立ち混じりの声を張り上げる。


「だから、どうやって上級魔弾で増幅強化された凍結術式が常時展開されてる湖の中に回収に行くのよ。近付いただけでこっちまで凍っちゃうっての」

「あー、確かに。そりゃ無理だわな」

「なーにが天才よ。あんたはアホよ、アホの王様よ。それで、あの術式の持続時間はどれくらいで設定されてるのよ」

「限界値で設定したから、あたしの使用した魔力量から換算すると……えーっと、半日くらい?」

「この、おバカ!」

「さっきから安い暴言のオンパレードだが疲れてんのか?」

「誰のせいよ、誰の。あんなもん放置して帰ったのがバレて、あれに誰か巻き込まれようもんなら賠償でいくら請求されるかわかったもんじゃないわよ」

「そりゃまずいな。どうするよ?」

「とりあえず湖の周辺ぐるっと廻って、誰も巻き込まれてないか確かめんのよ。それでなにもなければ、ばっくれるわよ」

「OK、OK、わかった」


 そんな軽い返答を受けて、私たちは湖の周囲をひとが歩くよりもちょっと早い程度の遅さでとろとろと魔導車を走らせた。でこぼことした悪路でがたごとと揺れる車内で私は雰囲気が悪くなるのも構わずむっつりしていたが、ロジィはどこ吹く風とばかりに口笛を吹いていた。


 湖を半周した辺りでちいさな人影が倒れているのが見えた。


「ちょっと、あれ」


 私が言い終わるよりも前にロジィは魔導車を降りて駆け出していた。それを追うようにして私も降車してロジィの元へと駆け寄る。


「あぁ、どうしよう。どうしたらいいんだ? なぁ、エル」


 ひどく動揺するロジィの足元には、ぐったりとした幼い男の子がひとり倒れていた。

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