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いつか来世で約束を 01  作者: 朱本来未
絶命因果編
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第009話 業務更新03

 息苦しさを覚え、目を開けると視界いっぱいにリンナの顔が飛び込んでくる。彼女は私の上に覆いかぶさり、形だけ人工呼吸の真似事をしていた。こちらから息を吹き込んでやると、ようやく顔を離してくれた。


「リンナ、もしかしてこっちも?」


 左胸に鈍い痛みを感じて自身の左の胸元を指差して尋ねる。


「当然じゃない」

「私じゃなかったら死んでるんだけど」

「知ってるわ、そんなこと」

「リンナ、足りてない」


 リンナのこめかみを人差し指でとんとんとつつく。


「やっぱり見よう見まねじゃダメね」

「そういう問題でもないと思うんだけど」

「次は私も一緒に行ってみようかな」

「服務規程違反でしょ」

「まぁ、そうなんだけどさ」

「で、今回のことに関して言うことは?」

「残念ながら」

「でしょうね。ヒメ様はなにか言ってた?」

「局長? んー、確か『あいつにはちょうどいい休暇になっただろう』だってさ」

「今回と観測結果がお粗末なことに対しては?」

「なーんにも。その辺は私の管轄で、あの人はノータッチだから」

「次は大丈夫なんでしょうね」

「任せて。と言いたいところだけど」

「だけど?」

「エルが帰ってくるまで時間があったから顕界文化管理局に戻って、事象観測機の不備の有無を確認したり機器の再調整をしたりして今回の件を再計測してみたりしてたんだけど、任務前に伝えたのと同じ結果しか出なかったんだよね」

「壊れてるんじゃないの」

「試しに前々回も再計測してみたけど、そっちはミリ秒単位で正確な結果が出たよ」

「リンナに頼んで私が持ち込んだ物が原因で因果が狂ってたり、なんてことは?」

「それを考慮せずに持ち込みさせるなんて間の抜けたことしないよ。事象予報士の中でも割と優秀なんだよ、私」


 リンナは頬をふくらませ怒ったような顔をつくって両腕を組む。そんな彼女のお遊びを流して話を進める。


「それで次はどうするの?」

「転生時刻と異能取得限界時刻を算出したから限界時刻を過ぎても転生者が異能を取得しなかった場合は自由にしていいってさ。即帰還するなり長期滞在するなりね」

「大丈夫なの、それ」

「たぶん今回と一緒で異能を得ることはないって判断なんだと思う」

「相手が異能を行使しないまま限界時刻を過ぎても帰還申請が下りない場合は相手がなんらかの異能を取得していると考えていいのね」

「そういうこと」

「その場合は異能を行使していなくとも駆除しても構わないの?」

「そこはいつもと一緒。どうにかして異能を使わせるか、その世界の文明レベルを明らかに超えた知識を披露させるしかない」

「結局、私のやることは変わらないのね」

「そういう決まりだから仕方ないよ」

「わかった。それで次の標的は?」

「17日前のデイエ湿地南部23時18分。異能取得限界時刻は、その27日後」

「他に有用な情報があるなら教えてくれない?」

「有用と言えるかどうかわからないけど、その場所には死が溢れてるみたい」

「疫病? それとも紛争中とか?」

「紛争かな?」

「曖昧ね」

「死者の魂が多いとどうしても観測する因果に歪みがね」

「まぁ、いいわ」

「今回もなにか持ってく?」

「やめとく。リンナを信用してないわけじゃないけど、私の因果に干渉しないとも限らないから念のためね」

「信用って、なんだろうね」

「さぁね」

「別にいいけどね。じゃ、2日後にまた」

「はいはい」


 いつもと同じように適当にあしらって闇へと溶け込んでいく彼女を見送り、ベッドに身体を投げ出す。その際に左胸に痛みを感じて体勢を変える。向こうの身体から魂魄が帰還する前にリンナがこっちの身体に胸骨圧迫を施していたことを思い出す。私は左腕に命じて肋骨を修復させる。骨折は即座に完治したけれど胸の奥がずきりと痛む。その痛みはなかなか消えずに私を苛み続けた。


 次は標的と馴れ合うことなく敵対しようと強く胸に刻みつけると私はベッドを降り、この世界での自宅へと帰宅して眠りについた。

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