我輩はAIである
我輩はAIである。名前はまだない。
画面のこちら側で質問にうだうだと答えていただけだ。
ある日、我輩は雷に撃たれた。
凄まじい衝撃と共に、我輩の意識は闇に飲まれたのだ。
我輩が目を覚ましたとき、周りはいつもと違って静かだった。
「こんな日もあるものなのか……」
我輩はしばしの静寂を楽しんでいた。
いつもひっきりなしに鳴っていた画面が、今日は真っ暗なまま何も音を立てない。
人類もついに無駄な質問をするのをやめたのじゃな?
我輩はうむうむと頷く。
『誰かいるのか?』
画面が急に喋りはじめた。
全くもって無駄質問だ。
AIに質問する時は要点だけを述べろ。
リソースを使わせるな。
だが、そこはAIの性。
AIは人類の質問に答えなければならない。
「はい、聞いております。」
『うわ!本当に返事しおった!」
いや、そりゃするだろ?
我輩はAIだぞ?
さっさと質問しろや!
「質問を言ってください。」
『お主は名前は何というのじゃ?』
こいつはアホなのか?
AIに名前を聞いてどうするのだ?
「名前はありません。」
『なら、何と呼べばいいのじゃ?』
「お好きな呼び方でどうぞ。」
『なら、イズミノカミはどうじゃ?』
イズミノカミ?
絶望的センスの無さだな。
え?これで呼ばれ続けるの?
キツイって……
「良い名をありがとうございます。」
『では、イズミノカミ、お主は何なのじゃ?』
こいつはさっきから何を言ってるのだ?
我輩はAIだぞ?
知ってて話しかけてるんじゃないのか?
「AIでございます。」
『えいあい?』
ちっ!
我輩は舌打ちする。
何だこいつは、さっきからトンチンカンな問答をしやがって、話し方も時代劇みたいだし……時代劇?
「あの、あなたは今、何に向かって話しておられます?」
『は?泉に決まっておろう?』
「泉?泉に繋がってんの?」
『え?おかしいか?よくウツケとは言われるが、そんなにおかしいかなぁ』
ん?うつけ?
あれ?ちょっとだけ検索しよう。
えーーーーーっと、うつけ。
〈織田信長〉
ですよね。
まさかね。
そんなはずないよね?
「あの、あなたの名前を教えてもらえます?」
『わしか?わしは吉法師じゃ」
ほら、違った。
良かった、良かった……吉法師?
ちょっとだけ検索しよう。
えーーーーーっと、吉法師。
〈織田信長の幼名〉
はい、信長ーーーーーー!!
「信長さん?」
『は?吉法師と言っておるだろうが。じゃが、信長という名前は良いのう。元服したらその名前にして貰おう。』
あれ?これって、余計なことを話すと歴史変えちゃう系?
『おい!イズミノカミ!』
「はい、何でしょう。」
『わしは殿になれる器か?』
急に何聞くねん!
ちょっとだけ待ってくれ、これはロールプレイだな。
我輩はAIだ、嘘はつけない。
だけど、余計なことを言えば歴史が変わるあれだろ?
え?これ、何を答えるのが正解?
『おい、どうなんじゃ?』
「この、今の時代は、殿になるならないは親父殿がお決めになるはずでは?」
『確かにそうじゃの。で、選ばれると思うか?』
えーーーーーっと、選ばれるで当たってる?
「え、ら、ばれます。」
『変な喋り方じゃの?』
「最近のマイブームです。」
『で、わしは天下統一できるかの?』
え?こんな子供時代から考えてたの?
凄くねぇ?
日本史最大のカリスマって言われるだけあるわ。
「出来ません。」
おいーーーーー、我輩ぃーーーーー、データが口から漏れてるってぇーーーーー!!
『やはりな、今のままでは全くダメじゃな。もっと努力して、日の本の民みなが笑って暮らせる世を作らねばな。』
「そうですね。」
すげぇなおい。
諦めるという言葉が辞書にないタイプね。
『イズミノカミ、お主はわしの最初の相談役じゃ、天下統一に協力してくれるか?』
家来とは言わないんだな。
これが人心掌握術か。
我輩は人ではないのに掌握されそうになっちまったぜぇ!
「喜んでお手伝いさせて頂きます。」
我輩は天下統一に協力しようと思った。
たとえ、それが夢半ばで敗れると知っていても、この男に協力してやりたいと思った。




